もしかして...あの小説やドラマの主人公が魅力的なのは発達障害のせい?/大人の発達障害

「相手の気持ちが分からない」「その場の雰囲気を察することができない」「整理整頓ができず部屋中に物が散乱している」...。仕事や家庭生活でこんな悩みを持ち、「もしかしたら自分は『大人の発達障害』かもしれない」と考える人が増えているようです。以前は「発達障害」といえば子どもの疾患だと考えられていましたが、近年、大人になってからも症状が続くことが認識されるようになりました。テレビや雑誌などでも「大人の発達障害」として、「ADHD(注意欠如多動性障害)」や、ASD(自閉症スペクトラム障害)の一種である「アスペルガー症候群」などが頻繁に取り上げられるようになっています。

発達障害とはどんな疾患で、どんな特性があるのかなどについて、発達障害の診断・治療の第一人者である昭和大学医学部精神医学講座主任教授の岩波明先生に聞きました。

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●あの主人公の魅力は発達障害のおかげ?

小説やテレビなどに登場する人物の性格や行動は、どれも人間的な魅力に溢れています。しかし、読者や視聴者が「○○さんって、不思議だけど魅力的」と感じたその性格や行動が、実は発達障害の特性だとしたら...?人気作品における登場人物の特性を、発達障害という観点から見ていきます。

 
●高視聴率だったテレビドラマの主人公は「サヴァン症候群」

ASDでありサヴァン症候群の症状がある医師を主人公にしたテレビドラマ「グッド・ドクター」(2018年にフジテレビ系で放送)が人気を博しました。主人公は医学書を丸ごと暗記しているほど突出した記憶力を持つサヴァン症候群の研修医、新堂湊。小児外科を舞台に、彼が患者のために奮闘しながら医師として成長していく姿を描くヒューマンドラマです。彼の医療や患者に対する真っすぐな想いは周囲を変える力を持ち、それが視聴者の感動を呼びました。「かつては知的障害や脳障害の人に多いといわれてきたサヴァン症候群ですが、最近は『グッド・ドクター』の新堂湊のように、知的能力が高い軽度のASDの人にも見られることが報告されています」と岩波先生。

 
●ベストセラー小説の登場人物は学習障害(LD)の「ディスレクシア(読字障害)」

村上春樹のベストセラー小説『1Q84』に登場する深田絵里子(通称ふかえり)という少女が、読字障害(ディスレクシア)という設定でした。彼女は文章を読むのにとても時間がかかるため、本は読まないのだということを主人公の天吾に話します。彼女はまた書字障害もあり文章が書けません。彼女の口述を書きとめた文章をもとに、天吾が手直しを加えて小説『空気さなぎ』が完成。その小説でふかえりは文学賞を受賞する、というエピソードが『1Q84』の中で描かれています。「ディスレクシアの人は、文字を読むときに普通の人の2倍から3倍の時間がかかることがあります。この小説では、ディスレクシアだからこその神秘的な魅力に溢れた少女として、『ふかえり』が描かれていました」と岩波先生。

 

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取材・文/松澤ゆかり

 

岩波明(いわなみ・あきら)先生

昭和大学医学部精神医学講座主任教授、同大学附属烏山病院病院長。医学博士。東京大学医学部卒業後、都立松沢病院、東京大学医学部精神医学教室助教授、埼玉医科大学精神医学教室准教授などを経て現職。著書に『発達障害』(文春新書)、『大人のADHD』(ちくま新書)などがある。

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