「できる脳」を作るには「ムダなように見えること」の積み重ねが必要。 地道なステップが自分を変える/脳ストレッチ

気分が浮かない、やる気がでない、自信が持てない......こんな自分を変えたい!と思っているのに変えられないあなた。もし「目を動かすだけ」「手を動かすだけ」であなたの脳が「できる脳」へと覚醒することができたら嬉しいと思いませんか?

自分で「イヤだ」と思い込んでいるあなたの性格は、「脳を動かすこと」で変えられるかもしれません。脳科学の第一人者が教える、ラクに自分を好きになれる、そして今からできる簡単な脳覚醒法を伝授します!

※この記事は『イヤな自分を1日で変える脳ストレッチ』(加藤 俊徳/KADOKAWA)からの抜粋です。

pixta_22945519_S.jpg前の記事「急いで結果を求めないで。 長い目でみて「できる脳」を作りましょう/イヤな自分を変える脳ストレッチ(6)」はこちら。

 

ステップを踏むことで自分を変えていく

医者になったばかりのころ、私は小児科医として働いていました。その理由は、子どもの発達と脳の関係に興味があったからです。

ところが私には、小児科医として理想像がどういったものか見えていませんでした。

その後も小児科医として働き続けましたが、ある時を境に完全に先が見えなくなってしまったのです。

このときに気が付いたことは、「自分が興味を持って医者になったのは脳を知りたいからであり、もしかしたら、脳が成長するのは子どもの時期だけではないかもしれない」ということでした。

その事に気付いた私は、小児科医として働きながらも、研究の軸足を子どもの脳発達から、30歳代、40歳代の大人の脳の成長へ移していきました。

だからと言って、これまでの経験を否定するような事はせず、むしろ、それまでの新生児・未熟児医療や臨床の経験を大人の脳研究にも結び付けようと心がけました。

今までやってきたことをムダにせず「次のステップへつながる経験」だと捉えていく姿勢が大事です。

今やっていることが役に立たなくても、その時点ですぐに「ムダなこと」と決めつけるのではなく、いつか役に立つことがあるかもしれないと考えることが大切なのです。そのためには、どんなことでも将来のための経験だと考えるようにして、嫌がらずに挑戦してみることです。

 

「できる脳」は、「ムダ」を続けて完成する

私がこんなふうに考えるようになったのは、いくつかの体験を経た結果なのですが、それらの1つを紹介してみようと思います。

医者になったばかりのころの話です。ある病院の未熟児・新生児科に配属になった私は、5歳くらい年上のインストラクターから指導を受けるようになりました。このインストラクターの指導がとにかく厳しくて、何度も弱音を吐きそうになるくらいでした。

あるとき、私は、インストラクターから「おまえはまだ何も知らないから、そこに座ってずっと患者を見てろ」と言われます。

患者は生後直後の赤ん坊でした。私はベッドの横に腰かけ、赤ん坊の様子を見続けました。ところが相手は赤ん坊です。寝ている時間が非常に長く、特に変化が見られません。それでもインストラクターは、「ずっと見てろ」と私に言いました。

来る日も来る日も赤ん坊を見ているだけです。しかも、ほぼ24時間見ているだけで、家にもほとんど帰れません。こんな状況が3カ月くらい続きました。新米医師の私にとって、これは"地獄"のような試練でした。

インストラクターは、特に具体的なことを教えてくれるわけではありませんでしたが、「医者は患者を徹底的に見ろ」と、口癖のように言っていました。

私のほうは、大学を卒業したばかりの経験の浅い医者であり、何のために赤ん坊を長時間観察するのかあまり理解できていませんでした。

医学書をのぞくと、一応、「顔色を見ろ」「肌の色を見ろ」といったことが書かれていますが、1分単位では様子はほとんど変わりません。さすがに考えることにも限界があるので、すぐに退屈してあくびが出てきます。

こんな調子であまりにも暇なので、そのうちに観察の方法を変えて、どこかに異変がないか探すようになっていきました。ベッドの脇で観察するだけの日々が続く中、ある日、インストラクターが言っていることが正しいと証明される出来事が起こります。

いつものように目の前の赤ん坊を観察していると、それまでおとなしく寝入っていた赤ん坊の皮膚の色が変わり、呼吸が浅くなっていました。赤ん坊をずっと見続けていた私は、すぐにそれに気が付くことができました。心配になり、血液検査をしたところ、炎症反応がまだ正常値でしたが、即座に抗生物質の投与を開始しました。

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それから3時間経ち、もう一度、炎症反応を確認すると完全に敗血症の初期所見でした。そのときに初めて、私は赤ん坊の状態を把握できていたと確認しました。赤ん坊を観察し続けていたことは、決してムダではなかったのです。

実は、こうした変化を見逃してしまう医者もいて、処置が遅れてしまう場合もあります。ですが、私の場合はインストラクターの指示に従って赤ん坊をずっと観察していたため、すぐに変化に気が付くことができたのです。そのおかげで、大事には至らず、適切な処置を取ることができました。

当初は、四六時中、赤ん坊を見続ける意味を完全に理解していませんでしたが、その出来事を経験し、「患者を見る」ことの大切さを100%理解することになります。それと同時に、一見ムダなように見えることでも、後になってから役に立つこともあるのだと痛感しました。

何かをずっと続けることは、それだけで脳に刺激を与えます。また、今行っていることは、未来のために有効であると考えることができれば、ポジティブな気持ちを保つことにつながります。

やはり、何をやるにしても、「できない」と言ってすぐにあきらめるのではなく、少なくとも、100のうち20くらいのレベルに到達するように粘ってみてください。どうにか頑張ってそのレベルにまで達すれば、その先に見えてくるものが必ず違ってきます。


違ったものが見えてくる理由は、そこに至るまでにあなたの脳が成長していくからです。それを実感できれば、今度は40まで行ってみようと思えるはずです。こうした地道な前進を繰り返し、「できる」自分を作っていってください。

 

加藤 俊徳(かとう としのり)

新潟県生まれ。医学博士。加藤プラチナクリニック院長。昭和大学客員教授、株式会社「脳の学校」代表。14歳のときに「脳を鍛える方法」を知るために医学部への進学を決意する。

1991年、脳活動計測「fNIRS法」を発見。現在、世界700カ所以上で脳研究に使用され、新東名高速走行中の脳活動計測にも成功。1995年から2001年まで米国ミネソタ大学放射線科MRI研究センターでアルツハイマー病や脳画像の研究に従事。帰国後、慶應義塾大学、東京大学などで、脳の研究に従事。胎児から超高齢者まで1万人以上のMRI脳画像とともにその人の生き方を分析。2006年、株式会社「脳の学校」を創業。2013年、加藤プラチナクリニックを開設。ビジネス脳力診断、発達障害や認知症などの予防脳医療を実践。著書に『イヤな自分を1日で変える脳ストレッチ』(KADOKAWA)などがある。


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『イヤな自分を1日で変える脳ストレッチ』

(加藤 俊徳/KADOKAWA)

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この記事は『イヤな自分を1日で変える脳ストレッチ』からの抜粋です
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