粉瘤だと思ったら違う病気だった!? 粉瘤によく似た病気/粉瘤

粉瘤(ふんりゅう)という病気をご存じでしょうか? またの名をアテロームやアテローマといい、誰にでも、全身のどこにでもできる可能性がある良性の腫瘍です。はじめは米粒大の小さな袋ですが、だんだん大きくなって、数cm以上の大きさになることもあります。押すと悪臭がします。さらに放っておいて炎症を起こすと腫れて痛くなってしまうこともあるので、やっかいな腫瘍です。

粉瘤とは何か、原因や予防法、治療法などを、はなふさ皮膚科の理事長で、粉瘤の手術経験が豊富な花房火月先生にお聞きしました。

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粉瘤や炎症性粉瘤にとくによく似た5つの病気

粉瘤と見た目や経過が似ている病気はたくさんあります。そのため、「粉瘤だと思って診察を受けたらほかの病気だった」ということがあります。

とくに似ている病気は、
・脂肪腫
・ガングリオン
・類皮嚢腫(デルモイドシスト)
・多発性脂腺嚢腫症(たはつせいしせんのうしゅしょう)
です。

 

●脂肪腫
皮下組織(皮膚の真皮層より下の組織)にできることの多い、やわらかい腫瘍です。皮膚の真皮層にできた場合に、粉瘤と似ていることがあります。痛みはなく、徐々に大きくなるなどの経過も粉瘤と似ています。粉瘤との違いは、開口部がない、悪臭がない、炎症を起こすことがない、より柔らかいことが多い、という点です。超音波検査を行なうと、多くの場合は区別できます。

●ガングリオン
指、手の甲、手首、足の指、足の甲、足関節などによくできる腫瘍です。真皮より下の脂肪層よりももっと深い層(関節包)にできるため、皮膚の表面とつながっていません。一見すると粉瘤と似ていますが、できる位置が特徴的なので医師が間違えることは少ないです。粉瘤とは異なり、くりっとしていてゴムのような硬い感じがあります。ぶつけたりしない限り、痛みはありません。

●類皮嚢腫(デルモイドシスト)
眉の外側にできることがもっとも多い良性腫瘍です。鼻や頭部、首にもできやすいです。幼少期や10代に発生しやすいです。見た目が粉瘤と似ています。痛みはありません。母親の子宮の中で体をがつくられているときに骨のあたりに皮膚の成分が間違って入り込んでしまったことが発症の原因です。炎症を起こすと痛みがでてしまいます。また手術の際に少しでも取り残したら、さらに炎症が起こって痛みがでてしまうため、きれいに取り切らなければなりません。

●多発性脂腺嚢腫症(たはつせいしせんのうしゅしょう)
首や胸、お腹、脇のあたりにクリーム状の液体がたまった袋状の病変が多発する病気です。痛みもかゆみもありません。見た目が粉瘤と似ていますが、多発性脂腺嚢腫症はポツポツと多発する特徴があるので、手術で取るのがおすすめです。

炎症性粉瘤にも似た病気がいくつかあります。とくに似ている病気は「化膿性汗腺炎」です。

●化膿性汗腺炎
脇の下や外陰部、肛門の周囲、乳房などにできる慢性的な炎症です。毛穴から発症し、皮膚や皮下組織(皮膚の真皮層より下の組織)に病変が広がっていきます。炎症性粉瘤に見た目と経過がとても似ているため、医師でも間違えることがあるくらいです。
女性は初潮から閉経前、男性は青年期以降にできることが多いです。タバコの吸いすぎ、摩擦、蒸れ、暴飲暴食、肥満、ホルモンの乱れなどが主な原因です。いま欧米諸国で患者数が増えている病気です。

 

炎症性粉瘤は、ニキビ跡のしこりやおできにも似ていますが、これらは抗生物質を内服したりしていずれ消えるのに対し、炎症性粉瘤は炎症が治まっても消えることはありません。

「このほかにも粉瘤に似た病気はたくさんあるため、自己判断は禁物です。これは粉瘤ではないかといって診察に来られた患者さんで、乳がんや脂肪肉腫だった人が数人いました。どんな病気かは自分では判断できないので、必ず病院に行って医師の診察を受けましょう」(花房先生)

 

次の記事「皮膚を切らずに粉瘤を抜き取る「くりぬき法」。対応できる病院は限られている/粉瘤(4)」はこちら。

取材・文/桑沢香里(デコ)

 

<教えてくれた人>
花房火月(はなふさ・ひづき)先生

医師。はなふさ皮膚科理事長。米国皮膚外科学会、日本皮膚科学会、日本小児皮膚科学会、日本美容皮膚科学会、日本抗加齢医学会に所属。2006年東京大学医学部卒業後、がん研有明病院、東京大学医学部附属病院、NTT東日本関東病院などを経て、2011年はなふさ皮膚科三鷹院を開設。その後、新座院、国分寺院、久我山院、志木院も開設する。皮膚科において低侵襲手術の独自性および術式を広めた実績が評価され、皮膚科医としては唯一、The Japan Times紙により「アジアの次世代を担うリーダー100人」(100Next-Era Leaders IN ASIA2015-2016)に選出される。著書に『だから差がつく! やっぱり美人は、かかりつけの美容皮膚科を持っていた』(雷鳥社)

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