粉瘤(ふんりゅう)という病気をご存じでしょうか? またの名をアテロームやアテローマといい、誰にでも、全身のどこにでもできる可能性がある良性の腫瘍です。はじめは米粒大の小さな袋ですが、だんだん大きくなって、数cm以上の大きさになることもあります。押すと悪臭がします。さらに放っておいて炎症を起こすと腫れて痛くなってしまうこともあるので、やっかいな腫瘍です。
粉瘤とは何か、原因や予防法、治療法などを、はなふさ皮膚科の理事長で、粉瘤の手術経験が豊富な花房火月先生にお聞きしました。
粉瘤はどんどん大きくなってしまう
ふと気づいたら皮膚にぷくっと袋状の膨らみができていた、なんてことはありませんか? ニキビかなと思っていたけれど、押すとなんだかくさい......。もしかしたらそれは「粉瘤」かもしれません。
粉瘤は別名、アテロームやアテローマといい、皮内(皮膚の中)に皮膚とよく似た袋状の構造物ができ、その袋の中に垢や皮脂、脂質がたまってしまう良性の腫瘍です。垢などは袋の外に出られずにどんどんたまっていくため、少しずつ大きくなってしまいます。
気づいたタイミングによりますが、大きさは5mm程度から10数cmのものまでさまざま。はじめはとても小さくて、月単位で少しずつ大きくなっていきます。痛みもかゆみもないため、できる箇所によっては、「気づいたら大きくなってしまっていた」ということもあります。
「粉瘤の特徴は、おもに中央に黒点状の開口部ができることです。また、強く圧迫されると白い膿に似た内容物が出て、悪臭がします。においの種類や強さは人によって異なりますが、袋の中に角質と常在菌がたまっているせいなのか、何日も体を洗っていない状態のようなにおいです」(花房先生)
男女問わず、若い人から高齢の人まで誰でもできます。また全身のどこにでもできます。
発生の原因は不明です。どういう人ができやすいかも、いまのところわかっていません。そのため、残念ながら予防ができません。体質的に何度もできてしまう人もいます。
ただし、まれに外傷が原因で発生することがあります。耳の場合、ピアスをつけたりはずしたりを必要以上に繰り返すことによって、皮膚の表面にある細胞成分が下の層(真皮)に埋め込まれてできることがあります。
また手のひらや足の裏にできた場合は、ウイルス性イボが原因のことがあります。ウイルス性イボとは、ヒト乳頭腫ウイルス(ヒトパピローマウイルスともいいます)というウイルスの一種が皮膚に感染して発生する病気で、手のひらや足の裏を含む手足にできることが多いです。メカニズムはまだ不明ですが、このウイルス性イボができたあとに粉瘤ができることがあります。
そのため、以下の2点に気を付けることが予防につながります。
1.ピアスをつけたりはずしたりを必要以上に繰り返さない
2. ウイルス性イボに気を付ける
2つ目のウイルス性イボは人からの感染が原因のため、たとえば足に小さな傷があるとジムや温泉のマットなどから感染しやすくなってしまいます。そのため傷があるときは多くの人が使用するタオルやマットは極力使わないようにしたり、使ったあとは手や足をきれいに洗うようにしましょう。
粉瘤は、いつの間にか、誰にでも、全身のどこにでもできて、だんだん大きくなってしまうため、なかなか手ごわい腫瘍です。上記の2点だけで本質的な予防はできませんが、少し心がけてみてはいかがでしょうか。
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取材・文/桑沢香里(デコ)