ふくらはぎの「こぶ」が血栓形成を促す!? つらさを感じたら改善・治療を

ふくらはぎの「こぶ」が血栓形成を促す!? つらさを感じたら改善・治療を pixta_18841626_S.jpg70歳以上の人のおよそ75%もの人に生じる「ふくらはぎの不調」。中でも血管の老化現象の一つである下肢静脈瘤(かしじょうみゃくりゅう)は、見た目の症状だけでなく慢性的な機能低下につながることも。

ふくらはぎを元気に保つ方法について、北青山Dクリニック院長の阿保義久先生にお話を伺いました。

前の記事「むくみは不健康のサイン。生活習慣を見直してふくらはぎから健康に/下肢静脈瘤(2)」はこちら。

 

「表面的に目立った静脈瘤がなくても、足のむくみやだるさを訴える人がいる一方、コブのような静脈瘤ができていても、外見以外は無症状という人もいます。そこには、静脈全体の慢性的な機能低下による、慢性静脈機能不全症と呼ばれる病態が潜んでいるからです」

慢性静脈機能不全症は、静脈の還流機能が著しく低下した状態のことをいい、血管のコブのような見た目の症状がなくても、下肢のむくみ、腫れ、痛み、さらには湿疹や潰瘍を起こしやすくなります。下肢静脈瘤は、慢性静脈機能不全症の一つの症状といえるのです。

「下肢静脈瘤は治療で改善が可能ですが、慢性静脈機能不全症には、私たち医師ができることは限られます。患者さんご自身が、生活習慣の見直しに取り組むことが重要といえます」

下肢静脈瘤の、見た目の症状の他、むくみ、足のだるさなどでつらいと感じたときには、血管外科といった専門の医療機関を受診することが何よりです。でも、静脈全体の機能低下を改善するには、生活習慣の見直しが必要です。下肢静脈瘤は、命に関わる病気ではありませんが、深部静脈内の血栓形成を促すことがあり、軽視できません。深部静脈血栓症が原因となるエコノミークラス症候群(肺塞栓症)は命に関わります。

 
「むくみ」より怖い「下肢静脈瘤」とは?

静脈の逆流防止弁が壊れて血流が滞る下肢静脈瘤は、血管がボコボコと浮き出るなど見た目にも気になります。どの静脈に静脈瘤が発生するかによって、以下のように分類されます。

●大伏在静脈瘤
足の付け根や太ももの裏側、ひざから足首の外側などに症状が現れます。頻度が高い。
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●小伏在静脈瘤
ふくらはぎや足首の後ろ、ひざの後ろにミミズが這ったように静脈瘤が生じます。

●側枝静脈瘤
ひざから下の部分に生じ、血管が盛り上がる範囲が比較的狭く、細長い症状が特徴です。

●陰部静脈瘤
太ももの裏側を斜めに走って広がる女性特有の症状で、月経時などにひどくなります。

●網目状静脈瘤、クモの巣状静脈瘤
血管が青く網目のように浮き出たり、クモの巣状に浮き上がって見えるのが特徴です。
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下肢静脈瘤の最新治療

【硬化療法】
静脈瘤のある血管に硬化剤という薬剤を注射で注入することで血管を塞ぐ治療法です。1回5~10分で済みます。固まった血管は、萎縮・退化し、半年ほどで体組織に吸収されて自然に消えます。

【手術】
・高位結紮術(こういけっさつじゅつ)
局所麻酔で皮膚を切開し、深部静脈と表在静脈の合流点近くの血管を5cmほど切除して縛り、静脈瘤のある血管を切り離す治療法。日帰り治療が可能で、硬化療法と組み合わせて行うこともあります。

・ストリッピング手術
足の付け根とひざ近くの2カ所を切開し、弁の壊れた静脈を引き抜く治療法です。最も太いコブを形成する大伏在静脈瘤に対する根治的治療で、日帰り手術も行われるようになっています。

・血管内焼灼術(けっかんないしょうしじゅつ)
レーザーやラジオ波(高周波)で、静脈瘤のある血管を内側から焼いて塞ぐ治療法です。体に負担が少なく効果も高く、2014年に保険適用され、現在では治療の主流になっています。


その他
・北青山Dクリニックの最新血管閉塞術
最高波長2000ナノメーターのレーザーによる血管閉塞術は、身体的な負担が最小限で回復が早いという特長があります。保険適用外ですが、重症や複雑な静脈瘤も治せる最新の治療法です。

 

次の記事「呼吸ポンプは血流改善のポイント。「ひじあげ呼吸」で深く大きな呼吸を/下肢静脈瘤(4)」はこちら。

取材・文/安達純子

 

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阿保義久(あぼ・よしひさ)先生

北青山Dクリニック院長。東京大学医学部卒。東京大学医学部腫瘍外科・血管外科などを経て2000年から現職。下肢静脈瘤の日帰り手術のパイオニア。

この記事は『毎日が発見』2018年8月号に掲載の情報です。

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