首は、約5㎏という人間の頭を支える関節の中でも重要な部位。そんな重い頭を支える首には、大きな負担がかかり、筋肉の疲労やストレスなどによって痛みが生じやすくなります。また、関節からの痛み、骨と骨の間にあるクッションの役割である椎間板からくる痛みのほか、内臓などの深刻な病気が隠れている場合もあるので、手足にしびれがある、眠れないほどの激痛がある、痛みが長引く、高熱を伴うといったときは、要注意です。
さまざまな首の痛みの症状やメカニズム、原因と治療、首の痛みに効果的な運動の方法などを、自治医科大学整形外科教授の竹下克志先生にお聞きしました。
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全身運動を習慣化させる自分なりの方法を
首の痛み全般に対する対処法と予防には、首や肩の周囲の運動も重要ですが、全身運動によって血行や代謝を促進させることもさらに重要です。若年から中高年の体力に自信のある人は、運動量の多いジョギング、水泳、サイクリングなど、高齢者や体力に自信のない人、ひざなどに痛みのある人は、ウォーキング、水中ウォーキング、ヨガ、太極拳などがおすすめです。ヨガや太極拳の場合は、首に負担がかかる姿勢がないかあらかじめ確認しましょう。
「首の筋肉をつけるのは難しいですし、無理をするとかえって痛くなります。首や肩だけというより、プール、ウォーキング、ジョギングなど全身運動をして姿勢をよくすることが大事です」(竹下先生)
全身運動は無理をせず、自分のできる範囲で継続することが大事です。
「全身運動を習慣化させるためには、万歩計やスマホのアプリも有効ですが、黙々と一人でやるより、仲間と一緒に行うのが、最も強制力があり、楽しく続けられる方法ですよ」と竹下先生。
最近の研究ではウォーキングをする人は首の痛みの発生率が低いことがわかっています。
働き盛りの世代にとって、平日は運動する時間を持てない人も多いと思いますが、仕事を効率的に終わらせて、運動する時間を積極的に持つなど、もう一度ライフスタイル全般を見直してもよいかもしれません。
全身運動がもたらす効果はそのほかにもさまざまあります。「全身運動によって、痛みを軽減させる物質や快楽物質が出るともいわれています。また心肺機能を高めたり、血流をよくしたりと、生活習慣病を予防することもできます」(竹下先生)
人間が体を動かすときに使っている神経、筋肉、関節などの「運動器」は適度な運動がないとさまざまな変調を来すといわれています。また、運動をしていないと痛みの調節に支障を生じることもわかっています。
「全身運動によって筋肉からホルモンが分泌され、血管や肝臓、腎臓、脳、脂肪組織などさまざまな臓器に効果をもたらすこともわかってきています。生活習慣病予防のためにも若いうちからの運動習慣が重要になります」(竹下先生)
また、心理面への対策も大事です。何らかの原因で首の痛みが起きた場合、心理的な負担は痛みを何倍も強くしたり、慢性化になったりする原因にもなります。痛みの原因がどうしても知りたい、痛みを完璧になおしたいといった「潔癖症」の方もいますが、痛みと上手につきあっていくという発想も、ひとつの選択肢として残しておいてもよいかもしれません。
取材・文/古谷玲子(デコ)