首や肩はいつもと少し違う動きをしたり、寝違えたりすることで日常的に痛みを感じやすい部位ですね。しかし首や肩の痛みがしつこく続く場合、それはただの寝違えなどによるものではないかもしれません。
首のしびれや痛みの悩み、自分でできる改善方法について、お茶の水整形外科機能リハビリテーションクリニック院長の銅冶英雄先生にお話を伺いました。
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前の記事「その首のしびれや痛み、もしかして頚椎症かも。さっそくセルフチェック(1)」はこちら。
一般的に、首にツライ痛みを感じたときに整形外科で受診すると、レントゲン撮影やMRI(核磁気共鳴画像法)といった画像検査が行われます。MRIの画像で、骨と骨の間に椎間板が飛び出していると「頚椎椎間板ヘルニア」、椎間板がつぶれていると「頚椎椎間板症」椎骨の後ろに位置して神経や血管などが通る脊柱管が狭くなっていると「頸部脊柱管狭窄症」と診断されます。
治療では、強い痛みやしびれが伴うときには、首に装具を着けて固定して安静を保つ、温熱・電気療法で血流を良くして筋肉のコリをほぐす、消炎鎮痛剤の服用、痛みを発する神経に麻酔薬を注射する神経ブロックという注射療法が選択肢になります。まひやしびれの症状がひどいときには医師から手術をすすめられることが多いのですが、手術以外の選択肢もあるのです。
「患者さんにとっては問題部位の特定よりも、いまある痛みを緩和することが重要です。私が考案した『首の痛みナビ体操』に取り組んで、激痛やしびれが改善した人は8割以上に上ります。私のクリニックでは、延べ3万人近くの患者さんが受診していますが、多くの方で首の症状が軽減されているのです」と銅冶先生。
首の痛みがひどくて整形外科で受診して、頚椎症に関連する病気と診断されても気落ちすることはありません。次の記事で紹介する「首の痛みナビ体操」で、改善する道があることを覚えておきましょう。
「頚椎」ってどこにあるの?
頚椎は7つの椎骨が連なっています。椎骨の円形部である椎体の後方には脊柱管と呼ばれる部分があり、その中には中枢神経である脊髄が通っています。脊髄から枝分かれする神経の一部は肩や腕へ延びています。
椎骨(真上から見た状態)
頚椎症に症状が似ているものは
●頚椎椎間板ヘルニア(※)
椎間板の中心にあるゼラチン状の髄核がずれて線維輪に亀裂が入り、髄核が押し出された状態。30~50歳代に多く、悪い姿勢での仕事や、スポーツなどが誘引となることがある。
(※)ヘルニア=体内の臓器が本来あるべき部位や位置から「はみ出している」状態のこと
その症状は?
・首や肩、腕の痛み、しびれ
・箸を使う、ボタンを留めるなどの手指の細かな運動がしにくくなる
・歩行障害や頻尿、尿失禁または便秘など(膀胱直腸障害)も
その他にも
●頚椎椎間板症
椎間板の髄核がずれて、椎間板の外側を覆う組織に亀裂が入る。首の痛み、肩こりが主な症状。
●頚部脊柱管狭窄症
脊柱管が狭くなり、脊髄や神経根が圧迫される。首の痛み、肩こり、腕のしびれ、歩行障害、排尿障害などが主な症状。
知っておきたい達人のツボ 1
ストレートネックとは?
本来、首の骨は前方に少し湾曲した形をしていますが、湾曲が失われて真っすぐな状態になることをストレートネックといいます。骨が変形することで首の痛みにつながり、スマートフォンやパソコンの操作などの前かがみの姿勢でなりやすいといわれています。
知っておきたい達人のツボ 2
頚椎症のいろいろ
頚椎症は頚椎の種類や症状によって細かく分類されます。レントゲン検査の結果、頚椎の変形が強い場合は「変形性頚椎症」、腕や手にも痛みやしびれが出ている場合は「頚椎症性神経根症」、脊髄が圧迫されて歩行障害や排尿障害を伴う場合は「頚椎症性脊髄症」です。これらを総称して頚椎症と呼ばれますが、頚椎とその周辺には椎骨や靭帯などさまざまな組織があり、痛みの原因を特定できない場合も多いのです。痛みのある方は医師とよく相談するように心がけましょう。
次の記事「今日からできる! 銅冶先生直伝「首の痛みナビ体操」で首の痛みを改善(3)」はこちら。
取材・文/安達純子 イラスト/堀江篤志