日本人は首や肩がこりやすいといわれています。お辞儀文化が根付く日本では、前かがみの動作が多いからです。また近年、スマートホンなどの情報機器が登場し、うつむく時間が増えたことも、首こり、肩こりの原因となっています。さかいクリニックグループ代表、酒井慎太郎先生に肩こりについて詳しく伺いました。
前の記事「前かがみ、うつむき姿勢が原因の「ストレートネック」が様々な病気を引き起こす!(1)」はこちら。
慢性的なこりや痛みは1日5分の体操で改善
こりをほぐしたりストレートネックを改善するには、1日5分ほどの体操が効果的です。
「勘違いしやすいのですが、首や肩周辺の筋肉を触ったときに固く感じるのは、こりのせいだけではありません。薄い筋肉の下にある骨の固い感触が伝わってきていることも理由です」と酒井先生。
それなのに首や肩がこっていると誤解して、筋肉を必要以上に強くマッサージする人がいます。筋肉を傷める原因になるうえに、こりの解消にはならないので控えたほうがいいでしょう。
筋肉の緊張をほぐすには、「いないないばあ体操」「首のテニスボール体操」が効果的。ストレートネックの改善には「あご押し体操」が有効です。ほかに、姿勢をよくする「胸張り体操」もおすすめ。これらの体操を上手に取り入れると、こりの軽減につながります。
●いないないばあ体操(1日の回数:何回でも)
背中、肩のこりからくるだるさを解消できる体操。肩、背中の筋肉を伸ばしてほぐします。
1 手のひらを正面にむけて、両腕をまっすぐ頭上に伸ばします。高く上げたままその状態で5秒間保ちます。
2 次に両腕を背中の方に引き寄せ、ゆっくりと下げていきます。このとき胸は大きく開きながら行います。
3 両腕を胸の前まで持ってきて、ひじと手のひらをぴったり合わせます。両ひじをくっつけて5秒間保ちます。
4 両腕の高さはそのままで、左右にゆっくり開き、胸を張ります。両腕を後ろに引いて、この状態で5秒間保ちます。
≪ポイント≫
肩甲骨の動きを意識して僧帽筋や菱形筋を伸ばすように行う。
●首のテニスボール体操(1日の回数:1~3回)
頭と首の境目にある関節を刺激することで、神経や筋肉をやわらげる効果があります。
1 硬式テニスボールを2つ用意します。ガムテープで動かないようにしっかり固定します。
2 ボールを当てる位置を探します。位置は「後頭骨」と「第一頸椎」の境目あたりに置きます。
3 畳やフローリングなどの硬い床にあおむけに寝てボールは2の位置に。力を抜いて1~3分間じっとします。
≪ポイント≫
首はデリケートなところなので、多くても1回3分、1日3回までと決める。
●あご押し体操(1日の回数:何回でも)
ストレートネックは頸椎が前方に直線になるので、後方に押し戻してS字を回復させます。
1 いすに座り背筋はまっすぐ伸ばします。頭だけ前方に突き出し、片方の手の親指と人差し指をあごに添えます。
2 あごに添えた2本の指で、首を後ろにスライドさせるように押します。1.2を1セットとして2~3回くり返します。
≪ポイント≫
うまく押せないときは、立って壁に背中をつけると行いやすい。
◆たすきを使った方法もあります
2mのたすきを使って、「たすきがけ」で前傾姿勢のストレートネックを矯正します。
ひもの中心をあごに当て背中で交差させたら、ひもの両端を持って胸の前で強く引っ張り結びます。これで1日30分間過ごします。
●胸張り体操(1日の回数:何回でも)
胸を張り、背筋をまっすぐ伸ばすことで、前かがみの曲がった背骨を正せます。
1 いすに座り、背筋を伸ばしながら後ろで両手を組み伸ばします。
2 両手を上げながら胸を張り、上半身をゆっくり反らします。
≪ポイント≫
机の上に手を載せてもOK。肩甲骨を中央に引き寄せるイメージで。
「枕」と「入浴法」で方に良い生活習慣を
睡眠時に高さのある枕を使うと、頭と首が前に押し出されて、首に負担がかかります。あおむけのときは枕を使わないで寝るのが理想です。横向きのときは頭が少し傾いて首が曲がるので、低い枕を使います。
また入浴時は、39度のぬるめの湯に10分間、口の下まで浸かる全身浴にしましょう。
取材・文/松澤ゆかり
酒井慎太郎(さかい・しんたろう)先生
さかいクリニックグループ代表。千葉ロッテマリーンズオフィシャルメディカルアドバイザー。柔道整復師。腰痛専門病院などを経て現職。ラジオ、テレビ多数出演。著書に『首・肩の頸椎症は自分で治せる!』(Gakken)など50冊。