背骨は、首から腰まで24個の骨がつながってできていて、それぞれの骨の積み重なっている円筒形の部分を「椎体(ついたい)」といいます。圧迫骨折とは、この椎体が潰れてしまう骨折です。高齢の女性に多く、尻もちをつく、重い物を持つなどの大きな負荷、そして骨粗鬆症が主な原因です。背骨は体を支え、脊髄を保護する重要な役割を果たしています。この背骨が潰れてしまうと、強い痛みや日常生活への支障が出るほか、身長が縮んだり、背中が丸まったりして、見た目の老化にもつながります。
今回は圧迫骨折の症状や治療法、圧迫骨折の原因となる骨粗鬆症について、伊奈病院整形外科部長の石橋英明先生にお話を伺いました。
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前の記事「片脚立ち、かかと上げでバランス力を鍛えて転倒を防止/圧迫骨折」はこちら。
歩行や立ち座りに必要な
下肢の力を強化!
下肢全体を簡単、かつ効果的に鍛えるためには、スクワットがおすすめです。
「スクワットは、誰でも安全に行えて、下肢全体の筋力を高める効果が高い運動です。ひざを伸ばす大腿四頭筋(だいたいしとうきん:太ももの前側の筋肉)、大殿筋(だいでんきん:おしりの筋肉)、ハムストリング(太ももの後ろ側の筋肉)、前脛骨筋(ぜんけいこつきん:すねの前側の筋肉)のすべてを強化できます」と、石橋先生。ここで、スクワットで鍛えられる筋肉の役割を確認してみましょう。
●大腿四頭筋(だいたいしとうきん)
太ももの前側にある4つの筋肉の総称。主な働きはひざを伸ばすことで、同時にひざの関節の安定性に欠かせません。この筋肉が衰えると、ひざがぐらつきやすくなり、痛みや軟骨の減りにつながります。立ち上がるときにひざが痛む人は、この部分を鍛えることで痛みを軽減できます。
●大殿筋(だいでんきん)
骨盤の後ろの面から、大腿骨の後ろ側までをつなぐ大変大きな筋肉です。股関節を伸ばす働きで、歩く、走る、ジャンプをするなど、脚を大きく動かすときに作用します。「立ち上がる力が弱くなった気がする」「大股で歩くことができない」という人は、この筋肉を強化することで改善できます。
●中殿筋(ちゅうでんきん)
骨盤の後ろ側の面から大腿骨の股関節に近い外側の部分をつなぎます。股を開いたり、歩くときに骨盤を水平に保ったりします。転倒しやすい人や、股関節に痛みがある人は、この部分を鍛えると改善します。
●ハムストリング
太ももの裏側の筋肉で、大腿四頭筋とともに、歩いたり、走ったりするときに作用します。ひざを曲げる、股関節を伸ばすといった働きがあります。運動不足の人はハムストリングが硬くなりがちです。ひざを伸ばしたまま床に前屈して手が届かないという人は、この部位の柔軟性が少なくなっています。普段からよく伸ばすように意識しましょう。
●前脛骨筋(ぜんけいこつきん)
すねの前側にある筋肉で、つま先を上げる際に使われます。この筋肉が弱くなり、柔軟性がなくなってしまうと、つま先を持ち上げることが困難になり、歩いたり、走ったりするときにつまずきやすくなります。
以上の筋肉がすべてスクワットで強化できます。正しいスクワットに挑戦してみましょう。
「正しいスクワット」
(1)~(4)を約10秒かけて行います。
1セット5~15回、1日2~3セットを目標に行いましょう。
(1) 脚は肩幅より少し広め、つま先を30度くらい外向きに開いて姿勢よく立ちます。
(2) 上体を前傾しながら腰を後ろに引き、同時にひざを曲げていきます。ひざがつま先より前に出ないようにします。
(3) ひざが90度ほど曲がるくらいまでしゃがみます。難しい場合は無理をせず、浅い角度でも十分です。両手を前に出すとバランスをとりやすくなります。
(4) ゆっくりと立ち上がります。
※ひざの痛みを感じたときは、スクワットのフォームを確認してください。ひざがつま先よりも前に出ていると、ひざに痛みが出やすくなります。正しいフォームでも痛みが出る場合は、ひざを曲げる角度を少なくします。
正しいスクワットを行うことで、下肢全体の筋肉が鍛えられます。
「下肢の筋肉は歩行をはじめ、階段の上り下り、椅子や畳からの立ち座りなど、日々の生活に欠かせません。また、将来的に、自立した生活を続けるためにも大変重要です。自分のペースでスクワットをすることで、下肢を鍛えて転びにくい体を維持しましょう。スクワットに加えて、かかと上げを行えば、ふくらはぎの筋肉も鍛えられてさらに効果的です」(石橋先生)。
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スクワットは、痛みがなければ毎日続けましょう。難しい場合でも、最低週2回は行います。体調が悪い日は休むなど、自分の体調や体力に合わせて続けることが肝心です。
取材・文/笑(寳田真由美)