近年、口腔機能の低下が全身の不調につながるとよく知られるようになってきました。こうした口腔機能の低下には、歯周病や虫歯などによるかむ力の低下・だ液の減少・舌の筋力の衰えなどがあげられます。ただ口と歯は、日々のセルフケアで健康に保てます。
今回は自分自身で毎日できる"口腔機能を健康に保つ方法"を、東京医科歯科大学講師で認定歯科衛生士(老年歯科)の小原由紀先生に伺いました。
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だ液を増やす体操で口内環境を正常に
だ液腺は、口腔内にあるだ液を分泌させる耳下腺、舌下腺、顎下腺の3カ所あります。
「だ液腺をマッサージ」でだ液腺をマッサージすると、だ液の分泌が促進されて口の中が潤うだけでなく、虫歯や歯周病の予防などの効果があります。
《だ液の働きはこんなにあります!》
・抗菌作用
・食べ物の消化を促す
・粘膜を保護
・口の中を洗い流して清潔にする
・口内を中性に近づける
だ液腺の分布
【だ液腺マッサージ】
・食事の前に
・各10回×3セット
●舌下腺マッサージ
あご先のとがった部分の内側。あごの下から舌を押し上げるように両手の親指でゆっくり押します。
●顎下腺マッサージ
あごの骨の内側の柔らかな部分が顎下腺。指を当て、耳の下からあごの先まで優しく押します。
●耳下腺マッサージ
耳たぶのやや前方、上の奥歯辺りのほおに人さし指を当て、指全体で優しく押します。
正しい舌の位置は、上の前歯の裏側に付いていること。もしも下の前歯に舌の先端が付いている場合は、舌の力が低下しています。「舌の体操」で舌の周りの筋肉を鍛えることで、だ液の分泌を促して口内環境を正常にします。
(1) 口を開き、舌を前に出します。
(2) 舌を右に動かします。
(3) 舌を左に動かします。
(4) 唇全体をなめ回すように、舌先で円を描きます。
「口と歯の健康チェック」以外にも、下記の項目で思い当たることがある人は、だ液の分泌量が低下している可能性があります。マッサージや舌の体操で、だ液の分泌を促しましょう。
・口の中が粘ついて話しにくい
・口内炎になりやすくなった
・口の中が痛い
・口角炎(唇の端が赤く腫れてただれる)ができやすい
・口腔カンジダ症(※)になりやすい
※口腔カンジダ症とは、口の中に常在するカビの一種、カンジダ菌による感染症。だ液量の減少、全身の抵抗力の低下、ステロイド剤や抗生物質の長期服用などが原因で起こります。
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取材・文/笑(寳田真由美) イラスト/はせがわめいた
小原由紀(おはら・ゆき)先生
東京医科歯科大学講師、認定歯科衛生士(老年歯科)。東京都健康長寿医療センター非常勤研究員、日本歯科衛生士会理事。