性欲減退でセックスレス、喧嘩で包丁が...女性50代前後、男性60代以降は、更年期障害の疑いも

うつ病と決めつけないことも大事!

私が心配しているのは、心身の不調を「うつ病」だと思い込んで、精神科や心療内科へ駆け込んでしまうこと。もしも性ホルモンの低下が原因の更年期症状のうつだったら、そこで抗うつ剤を処方され、服用をはじめると、いっそう性ホルモンが下がって、うつ症状が悪化してしまいます。

「心療内科や精神科でもらった薬を飲んでいるけれど、いっこうによくならない」という患者さんに対して、男性の場合は、「ホルモン値を測って、低下しているならテストステロン補充を検討すべき」と熊ちゃん先生は訴え続けてきました。

ようやく最近、テストステロン低下の意義を理解し、測定して低ければ補充治療をしてくれる精神科医も現れはじめましたが、まだまだ少数派です。「産婦人科医も内科医もテストステロンについてまったく知らない!」と熊ちゃん先生はぼやいておりました(熊ちゃん先生はテストステロン値が高いため、人一倍攻撃性が強いのです(苦笑)。

私は女性専門の泌尿器科医なので、まずは閉経前後の女性のエストロゲン値とFSH(卵巣刺激ホルモン)を確認します。エストロゲンが下がっていて、FSHが上がっていればサプリメントや漢方や女性ホルモン補充を検討してもらいます。それで自律神経失調症状やメンタルが安定してくる方がほとんどです。それでもよくならない方や、女性ホルモン補充ができない方(乳がんサバイバーなど)、さらに、高齢女性のフレイルなどの症状には、テストステロン補充療法がひとつの有効な治療方法の選択肢になります。

ここでひとつ留意しておくべきこともあります。男性・女性ホルモンを測ってみてあまり低下していない場合には、ちょっと専門的ですが、各性ホルモン受容体(ホルモンを受け取るキャッチャーのような存在。うまく受け取れないとホルモンは働きません)に問題がある場合があります。

例えば女性の場合は、大豆や山芋などいわゆる精のつくといわれる食材を沢山食べることで、更年期を乗り切れる人もいれば、漢方やサプリメントでなんとかなる人もいます。しかし、しっかり女性ホルモン補充をしなければ、効果がでない人もいるわけです。男子の場合は、早くからEDになってしまう人もいれば、いくつになっても精力絶倫の人もいます。人間には個体差があるということです。十把一絡げにできないのが、生き物である人間の複雑さなのです! いずれにしてもしっかとした検査と診察で、症状の原因を見極めていくことが必要です。

 

関口由紀

『女性医療クリニックLUNAグループ』理事長。医学博士、経営学修士(MBA)、日本メンズヘルス医学会テストステロン治療認定医、日本泌尿器科学会専門医、日本排尿機能学会専門医、日本性機能学会専門医、日本東洋医学会専門医、横浜市立大学医学部客員教授、女性総合ヘルスケアサイト・フェムゾーンラボ社長、日本フェムテック協会代表理事。メディア出演多数。『「トイレが近い」人のお助けBOOK』(主婦の友社)、『女性のからだの不調の治し方』(徳間書店)、『セックスにさよならは言わないで:悩みをなくす膣ケアの手引き』(径書房)など著書多数。

※本記事は関口由紀著の書籍『性ホルモンで乗り越える男と女の更年期 知っておきたい驚異のテストステロンパワー』(産業編集センター)から一部抜粋・編集しました。
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