性欲減退でセックスレス、喧嘩で包丁が...女性50代前後、男性60代以降は、更年期障害の疑いも

人生で2度激変する性ホルモンバランス

改めて、みなさんは「ホルモン」と聞くとどんなイメージがありますか? 医療情報が豊富な昨今、さすがに「ホルモン焼」というイメージを持つ人はいないでしょう(笑)。「女性ホルモン」については、生理、妊娠、出産、閉経と、女性の人生に大きくかかわることは広く知られるようになっています(何故か「男性ホルモン」と「男性の人生」の相関性については放置され続けていますが......by熊ちゃん先生)。

そもそもホルモンとはヒトのさまざまな機能を司る化学物質。自分の意識とは関係なく、脳の視床下部(目の後ろから奧ぐらいのあたり)が分泌をコントロールしていて、たとえばすい臓から分泌されるホルモンである「インシュリン」は血糖値を調節し、胃から出る「ガストリン」は胃酸の分泌を促してくれます。その数は実に100以上にものぼります。

男女の性ホルモンと他のホルモンとの大きな違いは、その分泌量が大きく変わる時期が人生で2回あること。

1度目は、生殖にむけて性ホルモンが急増する「思春期」。個人によってばらつきがありますが、小学高学年から中学卒業ぐらいまでに、女子には初潮(はじめての月経)、男子には精通(はじめての射精)が訪れます。

2度目は、生殖と子育てを終えて、性ホルモンが急減していく「更年期」。こちらも個人差がありますが、女性は閉経を迎えるのが平均51歳とされており、その前後5年間を指します。最近では広く知られるようになった「男性更年期」は、やはりテストステロンが減少してくる50代以降にやってきますが、非常に個人差が大きいのが特徴です。

「思春期」も「更年期」も、「自分自身ではコントロールできない心と体の不調」に襲われやすいのが共通点です。

また、年齢に関係なく、強いストレスがかかると脳がエラーを起こし、本来なら卵巣や精巣に「性ホルモンを分泌せよ!」と指令を送るはずの指示系統が狂い、性ホルモン分泌が滞り(時に過剰に増えることも)、更年期と同じような心身の不調が起こる場合があります。これは「若年性更年期」とも呼ばれるものですので、若い方でも油断は禁物です。

前述したように、周囲の人の様子が「なんかおかしい?」と気になるときがありますよね。以前とは違って、感情の起伏が激しい。約束を守る人だったのに、体調不良でドタキャンが増えた。負のオーラがすごすぎて一緒にいるのが辛い。でも、それは本人のせいではなく、性ホルモンの乱れや欠乏のせいかもしれません。性ホルモンの乱気流に巻き込まれるのは、人間の生き物ゆえの宿命なのです。

症状が「辛い」と感じたら、一度病院へ足を運んで、性ホルモンを測っていただきたいです。血液検査の結果、原因が更年期障害かそうでないのか。元々そういった器質があるのか。はたまた違う病気なのか。おおよそは判明します。原因がわかれば、適切な対応や治療にとりかかることができます。更年期でない病気が疑われる場合は、他の科を紹介してもらえます。どんな病気も早期発見・早期治療にこしたことはありません。

とにかく、「年のせいだろう」「疲れているからだろう」「ストレスだろう」と受け流すのは得策ではありません。辛いのを我慢するのは、本人も周りにとっても時間がもったいないです!

 

関口由紀

『女性医療クリニックLUNAグループ』理事長。医学博士、経営学修士(MBA)、日本メンズヘルス医学会テストステロン治療認定医、日本泌尿器科学会専門医、日本排尿機能学会専門医、日本性機能学会専門医、日本東洋医学会専門医、横浜市立大学医学部客員教授、女性総合ヘルスケアサイト・フェムゾーンラボ社長、日本フェムテック協会代表理事。メディア出演多数。『「トイレが近い」人のお助けBOOK』(主婦の友社)、『女性のからだの不調の治し方』(徳間書店)、『セックスにさよならは言わないで:悩みをなくす膣ケアの手引き』(径書房)など著書多数。

※本記事は関口由紀著の書籍『性ホルモンで乗り越える男と女の更年期 知っておきたい驚異のテストステロンパワー』(産業編集センター)から一部抜粋・編集しました。
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