最近、健診や人間ドックの画像検査で「嚢胞」(のうほう)が見つかることが多くなっています。嚢胞ができる場所、大きさ、数はさまざま。嚢胞が見つかったら、どうしたらよいのでしょうか? 注意すべき嚢胞にはどういった種類があるのでしょうか? 東京医科大学の糸井隆夫先生に伺いました。
「嚢胞」は体液がたまった袋状のものをいいます。健康診断や人間ドックで行われる画像検査などで、偶然発見されるケースが多く、ほとんどが無症状です。数㎜程度の小さなものから10㎝を超えるものまであります。
嚢胞ができる場所はさまざまですが、腎臓や肝臓にできるものはほとんどが良性です。1年に1回程度、大きさや数などを検査するだけで、特に治療をする必要はありません。
しかし、膵臓にできる嚢胞の中には放置できない種類もあるので要注意です。健診で見つかったら、必ず膵臓専門の先生を受診してください。
■意外に知らない!? 膵臓の基礎知識
膵臓は胃腸などと違って、あまり身近な臓器と感じていない方が多いかもしれません。いったいどのような臓器なのでしょう?
(1)どこにある?
胃の裏側で、体の深いところ。胃・十二指腸・肝臓・胆?などに囲まれている。
(2)どんな形状?
長さ約15㎝。当人から見て右側が太く、左側が細い「おたまじゃくし」のような形。
(3)どんな働き?
・膵液(1日約500~800ml)を作り、十二指腸に送り出す。この膵液が食べ物を分解したり、胃液で酸性になった食べ物を中和したりする。
・インスリンなどのホルモンを分泌して、血液中の糖分を調整する。
そんな膵臓にできる嚢胞のなかで、特に、膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN)は、腫瘍性の膵嚢胞の中では最も頻度が高く、がん化する危険性がある病気です。膵臓では、食道→胃→十二指腸と送られてきた食べ物を分解・中和するために、膵液(すいえき)を分泌しています。
IPMNになると、膵液の通り道である膵管の内側の細胞が腫瘍化して多量の粘液を作り、膵液の流れを悪くします。それによって、膵管が太くなったり、袋が大きくなったりします。
多くは良性で、嚢胞の大きさや形は変化しませんが、一部のIPMNでは嚢胞自体ががん化したり、嚢胞とは違う部位に膵臓がんができたりします。
他にがん化の恐れのある膵臓の嚢胞は、粘液性嚢胞腫瘍(MCN)です。40~50代の女性に多いことが特徴です。
膵臓に嚢胞が見つかった場合は、がん化の兆候がないか、精密検査をしながら、慎重に経過観察をすることが重要です。
検査の方法は、嚢胞のできた場所や大きさによって違いますが、超音波内視鏡を使った検査が最も有効とされています。
胃カメラの先端に搭載された超音波の装置を口から入れて、胃や十二指腸を通して、膵臓をすぐ近くから観察できる検査です。
MRCP(MR胆管膵管撮影)やCTを使った検査を行うこともあります。
主膵管型IPMNやMCNはがん化する恐れがあるので、外科的に切除をすることが治療の第一選択肢となります。開腹手術のほか、体の負担が少ない腹腔鏡手術があります。
膵臓の手術は比較的大きな手術なので、年齢や持病などの背景を考慮する必要があります。
術後は再発防止のためにも、暴飲暴食や脂の多い食事は控えることが大切です。
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取材・文/古谷玲子(デコ)