自治体や職場などで、毎年受けている人も多い健康診断(健診)ですが、そういった検査で は、どの程度精密に病気を診断できるのでしょう? 医療法人社団・同友会理事長の髙谷典秀先生に、最新の健診事情を教えていただきました。
体の経年変化を確認。健康維持に活用を
地域や職場で受ける特定健診は、メタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)に着目して行われます。糖尿病や脳梗塞などの病気のリスクの有無を検査し、リスクが認められる人には生活習慣改善のための保健指導を実施することが目的です。
「健診で大切なのは、自分の体が前年と比べてどう変化しているかを知ることです。検査結果がたとえ"異常なし"でも、毎年少しずつ体重が増えている人は、この先も増加する可能性が高いでしょう。同時に、血圧や血糖値、中性脂肪の数値が徐々に上がっているようならば、近い将来、狭心症や脳梗塞などの生活習慣病にかかるリスクは否めません」とは、医療法人社団・同友会理事長の髙谷典秀先生。
特定健診では、今年度から問診の項目に「食事をかんで食べるときの状態」についての質問が追加され、咀嚼(そしゃく)の重要性が見直されています。また、医師の判断に基づいて実施する項目として、「血清クレアチニン検査」が追加されました。これは、腎機能の低下を調べるもので、慢性腎臓病(CKD、※)の早期発見の重要な手がかりになります。
※慢性腎臓病(CKD)とは、糖尿病や高血圧などによって引き起こされる腎臓の障害が慢性的に続いている状態のこと。重症化すると透析が必要になることも。現在、成人の8人に1人がかかっているとされ、新たな国民病といわれています。
自治体などでは、特定健診の他、追加で受けられる検査(下記参照)もあるので、お住まいの地域で実施している検査を確認してみましょう。健診は自分でできる健康管理の第一歩です。定期的に受けて、健康管理に役立てましょう。
○...必須項目 ◎...どちらか一方の実施でもよい項目 △...医師の判断に基づいて実施する項目
※受けられる検査の項目はお住まいの地域により異なります。
追加で受けられる検査及び費用は、お住まいの地域により異なります。
※費用の目安は、東京都板橋区、文京区、埼玉県さいたま市、 神奈川県横浜市、静岡県浜松市、福岡県福岡市の費用を参考に算出。
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取材・文/笑(寳田真由美)
髙谷典秀(たかや・のりひで)さん
医療法人 社団・同友会理事長、日本人間ドック健診協会理事、医学博士。年間50万件を超える健診を実施し、多くの企業 健保組合の産業医、保健指導 業務の支援を行う。