声帯が振動することで声を出すことができますが、加齢で声帯の粘膜や筋肉がやせてくると、声がかすれる、出しにくくなるなどの音声障害が起こります。
「調査では、65歳以上の13〜30%が音声障害をもち、4割近くが食べ物を飲みこみにくいなどの嚥下(えんげ)障害をもつことが分かっています。女性の場合は、閉経後の女性ホルモンの影響から、声は低く、ガラガラになる人が多いようです」と平野滋先生は話します。
声を出しにくくなることで活動性が低下し、コミュニケーションの減少、職を失う、全身の健康に影響が出るといったこともあります。
「最も怖いのは、嚥下障害です。喉頭※(のど)の機能が低下すると、誤嚥の可能性が高まります。そうならないためには声帯の維持が重要です」
声帯の維持には、4つのポイントがあると平野先生。
1つ目は、声帯が傷む原因を起こさないこと。
胃酸がのどまで上がってくる胃酸逆流症は声帯を傷める炎症の元となります。
薬を飲む、胃酸を増やすものを摂り過ぎないなどの工夫を。
2つ目はのどの保湿。
3つ目は、声を使うこと。
発声練習などで声帯に適度な負荷を与えることで、声帯が長持ちします。
4つ目は酸化ストレスから声帯を守ること。
抗酸化サプリメントの摂取が有効だといいます。
※喉頭は、いわゆる「のどぼとけ」のところにある器官で、左右一対の声帯があります。
取材・文/寳田真由美(オフィス・エム) イラスト/坂木浩子