書籍を音声で楽しめる「audiobook.jp」を運営するオトバンクは6月、関西福祉科学大学などとの共同研究について発表。オーディオブックを聴きながらの運動が認知症予防に役立つことが分かったと報告しました。そこで今回は、関西福祉科学大学 保健医療学部 リハビリテーション学科 教授の重森健太(しげもり・けんた)先生に「音と運動で認知症予防」についてお聞きしました。
今回の研究は、65歳以上の要支援の人を対象に「運動のみ」「計算課題をしながらの運動」「オーディオブック(書籍の朗読)を聴きながらの運動」の3グループで実施。
いずれもややきつい程度の運動をした上で、老化や認知機能低下の影響を受けやすい前頭葉の脳血流の活性化度合いを調べたもの。
その結果、オーディオブックと計算課題を活用したデュアルタスクに、同等の脳血流反応が認められました。
デュアルタスクとはデュアル=「二重の」、タスク=「課題」の意味で、二つのことを同時に行う「ながら動作」のこと。
「近年の認知症予防トレーニングは、運動と計算やしりとりなどの認知課題をかけ合わせたデュアルタスクの要素を取り入れるのが主流です。しかし、認知課題の場合、慣れが生じることで効果が薄くなるという問題が。一方、オーディオブックを聴きながらの運動は、興味のある作品を選ぶことで聴き流しになりにくいのが利点。普段行っている軽い運動に加えるだけで認知症の予防になります」と、重森健太先生。
オーディオブックを聴きながらの運動は自宅でもできて暑い夏にも無理せず取り組めます。
脳と体の健康維持に活用してみてはいかが?
デュアルタスクとは
「AをしながらBをする」のように二つの要素に注意を向けることが求められる課題
例えば...
1.しりとりを使ったデュアルタスク
足踏みをしながらしりとりをする
2.計算を使ったデュアルタスク
歩きながら引き算を繰り返す
⇒認知機能の改善や脳の血流の活性化に役立ちますが、慣れてしまうと脳の活性化が見られなくなり、効果が出ません。
3.オーディオブックを使ったデュアルタスクの場合
オーディオブックは、ナレーターや声優が本を朗読する「聴く本」。興味のある作品を聴きながら運動することで、「計算」を使ったデュアルタスクと同程度に脳血流が活性化します。また、長期間使用した場合も、慣れによる飽きを感じにくく、長く効果を期待できます。
スマートフォンなどでオーディオブックのアプリをダウンロードして使用。CD版(市販品や図書館でのレンタルなど)を利用してもOK 。
●踏み台昇降をしながら
●スクワットをしながら
●ウォーキングをしながら
【効果を上げるには】
・興味のもてるテーマの作品を選ぶ
・集中力が高まる速さに、再生速度を調整する
・周りの人に聴いた内容を話す
・思い出しながらノートにまとめる
取材・文/寳田真由美(オフィス・エム) イラスト/坂木浩子