風邪に効きそうな「抗生物質」は9割の風邪に効かない!? むしろ悪影響すらある「抗生物質」の真実

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『身体を壊す健康法』 (柳澤綾子/Gakken)第4回【全6回】

東大の研究員であり現役医師である柳澤綾子さんは、年間500本以上の論文を読む論文オタクでもあります。『身体を壊す健康法』は、そんな柳澤さんが、これまで当たり前とされてきた健康の常識を最新の研究結果をもとに一から見直し、正しい知識を優しく解説します。本書で健康の知識をアップデートしましょう。

※本記事は柳澤綾子著の書籍『身体を壊す健康法 年間500本以上読破の論文オタクの東大医学博士&現役医師が、世界中から有益な情報を見つけて解き明かす。』(Gakken)から一部抜粋・編集しました。


9割程度の風邪に抗生物質は効かない。むしろ悪影響のほうが多い

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免疫ができたはずなのに、何でまた風邪をひくのか

日本の医療制度は世界的に見てもよくできた制度で、日本国内にいればほとんど誰もが同一レベルの治療をほぼ同じ価格で受けることができるという、稀有なシステムです。

ただ逆に言えば、この制度のデメリットの1つでもあるのですが、過度な診察や必要のない治療が行なわれていたとしても、それほど高額なお金を自らのお財布から払っているという自覚に乏しいため、何となくお医者さんの言う通りに、そのままあまり深く考えずに受け入れてしまう、ということも割とよく起こっています。

ですから「病院へ行って、抗生物質出してもらわないと」と気軽に思う方も多いようです。私の周りでも風邪が流行る季節になると、こんなことをおっしゃる方が後を絶ちません。

例えばこれは極端な例ではありますが、全額完全に実費で、薬1粒1粒まで自分の財布からその場で支払いをするシステムであったとすれば、事情は一変するでしょう。きっともっと1粒1粒、「これ、何のためのものですか? 本当に必要ですか? 1日1回じゃダメなんですか?」と気にかけるようになるはず。

こんなことを一度は気にしてみて、薬との向き合い方を考えてみていただけると嬉しいです。

ではそもそも、風邪の原因って何でしょう。

風邪を引き起こすウイルスとしては主に、「パラインフルエンザウイルス」や「ライノウイルス」また「エコーウイルス」や「コクサッキーウイルス」などがあります。さらにこれらのウイルスがそれぞれいろいろな型を持っていて、全部を別々な物として数えると400種類以上ものウイルスが風邪の原因となりうるのです。

これほどたくさんの風邪ウイルスが存在するため、例えば「この間風邪にかかったばかりだから免疫ができているはずなのに、何でまた風邪ひくの......??」ということも珍しくありません。ウイルスが変われば、今持っている免疫が通用しなくなるということで、普通にあることなのです。

特に、集団生活を始めたばかりの子どもたちは、今まで風邪のウイルスにさらされていなかった所に、一緒に過ごす子ども同士がいろいろなウイルスを持ち寄ってしまうため、風邪ウイルスをもらい合い、風邪を繰り返してしまい、鼻水が出たり引っ込んだりが続いたまま一冬過ごす、なんてことも起きてきます。

 

柳澤綾子
医師、医学博士。東京大学大学院 医学系研究科 博士課程修了。大学院時代から公衆衛生学を専攻し、社会疫学、医療経済学およびデータサイエンスを学んできている。現在は、東京大学および国立国際医療研究センターにて研究を行いつつ、ママ女医の立場から健康格差解消のための啓蒙活動に尽力、講演、記事監修や執筆等を行っている。海外医療活動参加歴あり。パナマにて国際船医免許取得後、世界一周クルーズ船船医として世界中からの乗客のべ8000人以上を診察、世界27カ国の病院に紹介状を持って同行医師経験あり。

※本記事は柳澤綾子著の書籍『身体を壊す健康法 年間500本以上読破の論文オタクの東大医学博士&現役医師が、世界中から有益な情報を見つけて解き明かす。』(Gakken)から一部抜粋・編集しました。

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