ご存じですか?糖尿病を引き起こす「霜降り筋肉」と「脂肪肝」

冬になると外出が減りがちです。暖房の効いたお家で糖質の多い、お正月のお楽しみのおもちやみかんを食べて、運動しない生活では、体に脂肪がつき糖尿病の原因に。糖尿病の原因である「霜降り筋肉」「脂肪肝」に気を付けて、糖尿病を予防・改善しましょう。長年、糖尿病の治療を行っている栗原クリニック東京・日本橋の栗原毅先生に、「霜降り筋肉」や「脂肪肝」と糖尿病の関わりについて聞きました。

ご存じですか?糖尿病を引き起こす「霜降り筋肉」と「脂肪肝」 pixta_60103853_S.jpg

臓器や筋肉につく「異所性脂肪」とは

食事を食べ過ぎると体に脂肪がたまってしまいます。これを中性脂肪といいます。しかし、脂肪の多い食事を摂ったせいで、体に中性脂肪がたまるわけではありません。中性脂肪がたまってしまうのは、炭水化物や果物などの「糖質」を摂り過ぎることが、主な原因だといえます。

糖質は体内で中性脂肪を作る材料になります。「中性脂肪はエネルギー源として体に欠かせません。しかし、糖質の摂り過ぎによって過剰に作られた中性脂肪は、エネルギーとして消費し切れずに体内にたまります」と栗原先生。

体にたまる中性脂肪には、3種類あります。体内で増えすぎた中性脂肪はまず、「皮下脂肪」として蓄えられます。蓄え切れずに余った中性脂肪は「内臓脂肪」になり、それでもまだ残っているときには、「異所性(いしょせい)脂肪」として蓄えられます。

異所性脂肪とは「体のたまるべきではない場所にたまった脂肪」のことをいいます。異所性脂肪がついた臓器や筋肉は、本来の機能が低下してしまいます。

「霜降り筋肉」が血糖値を上昇させる

体の中で異所性脂肪がたまりやすい場所の一つは「筋肉」です。特に、骨格を動かす筋肉「骨格筋」にたまりやすいです。全身の骨格筋の7割が、太ももなどの下半身にあります。

「骨格筋に異所性脂肪がたまると、霜降り肉のように筋肉の間に脂肪がついた『脂肪筋』になります。私はこれを『霜降り筋肉』と私は呼んでいます」と栗原先生。

筋肉には、血液中のブドウ糖を取り込んで、蓄える働きがあります。しかし、筋肉が「霜降り筋肉」の状態になると、その機能が低下します。筋肉が血液中のブドウ糖を十分に取り込めなくなるため、血糖値が上がってしまうのです。

中性脂肪には3種類ある

・皮下脂肪

食べ過ぎや運動不足などで、皮膚のすぐ下にたまった脂肪。全身につきますが、特に女性の下腹部、太もも、お尻など下半身につきやすいです。指でつまめます。

・内蔵脂肪

内臓の周りや、小腸を包む腸間膜につく脂肪。男性や閉経後の女性につきやすいです。増え過ぎるとおなかが出てきますが、指でつまめません。

・中性脂肪

肝臓やすい臓などの臓器や筋肉に直接付く脂肪で「第3の脂肪」とも呼ばれます。外見からは分からず、やせている人でも異所細胞がついていることがあります。

異所性脂肪が血糖値を上げる原因に

・健康な筋肉の場合

ご存じですか?糖尿病を引き起こす「霜降り筋肉」と「脂肪肝」 2001p038_02.jpg血液中のブドウ糖が減ると、インスリンの働きで筋肉に取り込まれる。そのため血糖値の上昇が抑えられる。

・異所性脂肪がついた筋肉の場合

ご存じですか?糖尿病を引き起こす「霜降り筋肉」と「脂肪肝」 2001p038_01.jpg異所性脂肪がついているとインスリンの働きが低下する。血液中のブドウ糖を筋肉に取り込めず血糖値が上昇する。

肝臓に脂肪がたまる脂肪肝が糖尿病の原因に

異所性脂肪は「肝臓」にもたまります。これが脂肪肝の原因になります。糖質の摂り過ぎが脂肪肝を引き起こすのです。脂肪肝になるのは太っている人だけではありません。やせていても異所性脂肪が多い人は、脂肪肝になっている場合があります。肝臓に異所性脂肪がたまっていても、外見からはわからないのです。

女性の場合、加齢とともに女性ホルモンが減ると、皮下脂肪よりも異所性脂肪がたまりやすい傾向があります。これも脂肪肝の原因になります。脂肪肝をそのままにすると、脂質異常症や高血圧、NASH(非アルコール性脂肪肝炎)などになることがあります。

「長年、肝臓の治療と研究をしてきて、脂肪肝が糖尿病を引き起こす原因になることがわかりました」と栗原先生。どういうことかというと、肝臓には血液中のブドウ糖を取り込んで、蓄える役割がありますが、脂肪肝になるとその機能が低下します。肝臓に蓄えきれなかった糖が血液中に放出されて、血糖値を上げるのです。

取材・文/松澤ゆかり  イラスト/コウゼンアヤコ

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<教えてくれた人>

栗原毅(くりはら・たけし) 先生

医学博士、栗原クリニック東京・日本橋院長。東京女子医科大学教授、慶應義塾大学教授などを経て現職。著書は『名医が教える「本当に正しい糖尿病の治し方」』(エクスナレッジ)など多数。

この記事は『毎日が発見』2020年1月号に掲載の情報です。

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