新しい時代・令和も元気に活躍されている90代の皆さん。
お生まれになったのは、大正や昭和一桁の時代です。
大正から昭和、平成、そして令和へと――。数多くの経験に基づいたお話は参考にしたいことばかり。今回は、93才で料理家の桧山タミさんに、いくつになっても日々はつらつと暮らすための考え方を伺いました。
『みらいおにぎり』の著者・桧山タミさんは、1926(大正15)年生まれ。
福岡で、50年以上も料理塾を開いています。幼少の頃はフランスで絵の勉強をしたいと思っていたタミさん。
戦争やご主人の死を乗り越えて、35歳の時に料理家の道を歩み始めました。
教える料理は、素材にこだわり、愛情と自然の恵みを大切にする心が息づいた、昔ながらの日本の家庭料理。
塾は、20代から70代までの幅広い層の生徒が通い、料理はもちろんのこと、人生をより良く生きるための知恵を授けています。
タミさんは、17歳の時に、福岡で料理教室を開いていた江上トミ先生に師事し、戦前、戦後を通じて学んでいました。
38歳の時(1964年)、江上先生のヨーロッパ・アフリカ視察旅行に同行し、4カ月にわたって世界各国の料理を食べ、学ぶという貴重な経験をしました。
世界を自分の足で回り、目で見たからこそ、日本の豊かさに気付き、その土地の食材が住む人の体を守っていることに思い当たりました。
タミさんは、言います。「おにぎりさえあれば心も体もホッとします。それは気持ちを込めて、
ギュッと握っているから。おにぎりはそんな思いが食べる人の未来につながるごはんなのです。
さあ、おいしくごはんを炊いて、おにぎりを握ってみましょう」と。
2019年の春、母校の小学校で、自分の経験、人生でよりどころにしていることなどを語るとともに、生徒からの質問を受ける授業をしました。
この授業を元に『みらいおにぎり』が綴られました。
この授業では、タミさんから子どもたちに、人生の指針となる数々の言葉が伝えられました。
「私の一生は、星のまたたきほど短い。だからクヨクヨする時間はもったいないと気付いたの」
「ありがとうは、、自分の心も相手の心も元気にします」
「ありがたいのは、それぞれの地域にそこに住む人たちを元気にする食べ物があるってこと」
「人生最後の日は、片づけをしたいです」
93歳のタミさんの言葉。どれも心に沁み入ります。