発酵食品は毎日食べ続けることで免疫細胞に刺激を与え、腸内環境を改善することができるようになります。腸管には全身の6~7割もの免疫細胞が集まっていて、腸内環境が良くなると免疫力がアップします。
そのまま食べることができる発酵食品には、漬物や塩辛など、塩分量が多いものもあります。摂り過ぎには注意しましょう。大切なことは、毎日の食事にバランス良く発酵食品を取り入れ、私たちの体に合った食生活を心がけること。料理研究家で管理栄養士の村上祥子さんにおすすめの発酵食品を教えてもらいました。
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【乳製品】
チーズ
牛乳の固形分を乳酸菌で発酵させます。発酵する間に栄養分が消化吸収されやすい形に変化します。乳酸菌の働きで悪玉菌を減らし、便通を整えます。
バター
日本で市販されているバターは非発酵バターが主流ですが、欧米では牛乳から分離したクリームを乳酸発酵させて作る発酵バターが一般的です。
サワークリーム
生クリームを乳酸菌で発酵させて作りますが、熟成はさせません。乳酸菌による独特の風味を持っています。
ヨーグルト
日本人に不足しがちなカルシウムが乳酸菌の発酵によってできた乳酸と結合して乳酸カルシウムとなり、吸収しやすくなっています。
【大豆】
納豆
糸引き納豆は、わらに生息していた納豆菌によって発酵作用が起こります。現在は培養した納豆菌で大量生産されています。納豆菌は腸内で悪玉菌の繁殖を防ぐ働きがあり、その威力はある種の病原性大腸菌を淘汰するほどであるといわれています。
大徳寺納豆や浜納豆などの塩辛納豆は、麹菌を繁殖させて大豆麹を作り、乳酸菌によって酸味とうま味が醸し出され、保存性を良くした食品です。
テンペ
インドネシア特有の大豆発酵食品。ゆでた大豆を糸状菌で発酵させて作り、栄養価は日本の納豆に匹敵します。
【肉類】
生ハム
豚肉を塩漬けして燻煙し、ボイルしない生ハムは、乾燥させる間に発酵させます。ヨーロッパの伝統食品です。
サラミソーセージ
ドライソーセージ(水分35%以下)の一種。塩漬けして粗くひいた肉や調味料を腸詰めし、低温、高湿で長期乾燥させ、自然に熟成させます。熟成の間に乳酸菌の働きで発酵します。
【魚類】
いかの塩辛
いかに麹を加えて塩漬けにしたもの。高塩分の中でも働くたんぱく質分解酵素(プロテアーゼ)でアミノ酸に分解し、うま味を熟成した発酵食品です。
かつお節
かつおを節におろしてゆで上げ、焙乾(ばいかん)、成形、天日干しし、青カビの一種を付けて発酵させます。たんぱく質が発酵により分解し、イノシン酸が生成されます。
なれずし
酢を使わず、塩をした魚介類にご飯などをまぶし、冷暗所に保存して酵母菌や乳酸菌で発酵させます。腐れずし、熟(う) れずし、飯(いい)ずしなどとも呼ばれます。
くさや
魚をくさや汁に漬け、天日で干すことを繰り返し、硬く干し上げます。くさや汁は魚を漬けた塩水が発酵したもので、微生物によるたんぱく質分解酵素が存在しています。
※この他、へしこやアンチョビなども魚の発酵食品です。
【野菜類】
漬物
日本の漬物は、微生物の発酵作用を利用した発酵漬物と利用しない無発酵漬物に大別されます。発酵漬物の代表、ぬかには炭水化物やミネラル、ビタミン類が豊富で、これらを栄養にして乳酸菌や酵母が繁殖し、ぬかに含まれるミネラル等とともに漬物に移り、生の野菜にはない栄養分が加わります。
ピクルス
野菜を塩で漬け、寝かせておくうちに乳酸菌の働きで発酵し、独特の風味と酸味が得られます。
キムチ
乳酸菌の量と種類が突出して豊富です。乳酸菌には整腸作用があり、大腸内の有害物質を排泄します。
メンマ
台湾産麻竹(まちく)の先端部を刻んでゆでて乳酸発酵後、天日乾燥させます。必要に応じ、水でもどします。保存のため塩漬けで市販されます。
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取材・文/石井美佐 イラスト/山元かえ
村上祥子(むらかみ・さちこ)さん
料理研究家・管理栄養士。1942年、福岡生まれ。公立大学法人福岡女子大学国際文理学部・食・健康学科客員教授。同大学内の「村上祥子料理研究資料文庫」では50万点の資料が一般公開されている。発酵食にも詳しく、手軽にできる甘酒や酢を使った保存食は人気。著書多数。