腹痛や下痢、便秘...「過敏性腸症候群」を予防・改善するための生活習慣」【医師・鳥居先生が解説】

大人世代、70~80代は過敏性腸症候群にかかりやすく、過度のストレスによる腹痛や便秘を繰り返すこの病気は国内で1200万人の患者がいます。下痢や便秘の腸のトラブルなどのお腹の不調に関わる病気について、専門医の鳥居先生にお話を聞きました。

この記事は月刊誌『毎日が発見』2023年9月号に掲載の情報です。

【前回】国内で1200万人もの患者が! 下痢や便秘を引き起こす「過敏性腸症候群」【医師・鳥居先生が解説】

リラックスすることが大事。心の余裕を持ち、
 "75点"をよしとしましょう

大腸の粘膜に炎症を起こす潰瘍性大腸炎や、感染性胃腸炎など、おなかの不調に関わる病気は多くあります(下記参照)。

他の病気ではないことが確認できて初めて、過敏性腸症候群と診断されるのです。

診断されたら、生活習慣や腸内環境の改善の他、通常は薬物療法で治します。

便の水分調整ができる薬などを2~4週間も服用すれば、かなり快方に向かいます。

注意したいのは、自己判断で薬を飲まないことです。

「過敏性腸症候群の便秘は、一般的な便秘と間違われやすく、下剤を服用して下痢に苦しむこともよくあります。診断と治療のさじ加減が大切です」と、鳥居先生。

過敏性腸症候群は、日本神経消化器病学会に所属する医師が診断を得意としているそうです。

ストレスを抱えておなかの不調が続き、過敏性腸症候群の疑いがあるときには、消化器を専門とする医師がいる医療機関を受診しましょう。

「適切な治療によって過敏性腸症候群の症状を改善し、QOL(生活の質)を上げることができます」と、鳥居先生は話します。

<達人のツボ>
便秘を起こすその他の病気
過敏性腸症候群以外にも、便秘が見られる病気は多くあります。女性のがん死因第1位の大腸がんのほか、パーキンソン病など脳の病気や糖尿病、糖尿病での末梢神経障害、甲状腺機能低下症でも便秘が起こります。また、帯状疱疹のオピオイド系鎮痛薬や風邪薬が要因になることも。腹痛や血便などの症状が伴うときは、早めに消化器内科や胃腸科を受診しましょう。

生活習慣の見直しとリラックスが大切

慢性的な便秘や下痢に悩まされていると、「外出先でトイレに行きたくなったらどうしよう」「人前でおならが出たらどうしよう」などと思い、外出を控えるといったことがありがちです。

ですが、思うように外出ができないとQOLは下がります。

「過敏性腸症候群の患者さんはデリケートでストレスを感じやすい人が多く、病気の症状でもストレスをためやすい。薬の服用や食生活の見直しで症状を改善すると同時に、症状をあまり気にし過ぎないようにしましょう」と、鳥居先生は話します。

過敏性腸症候群では、腹痛や下痢など突然の症状に見舞われることがよくあります。

トイレに駆け込みたいのに電車に乗っていて行くことができず、脂汗を流すような苦痛を感じることもあるでしょう。

ですが、心配し過ぎたり、不安を抱え過ぎたりすることが新たなストレスとなり、過敏性腸症候群を悪化させてしまうのです。

「適切な薬の服用や生活習慣の改善と併せて、リラックスして日々を送ることがとても大切です。食生活の見直しも楽しみながら行ってください。何でも100点の完璧を追い求め過ぎず、少し心の余裕を持ち、『75点でよし』と思うようにしましょう」と、鳥居先生はアドバイスします。

予防・改善するための生活習慣

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ストレスをためない
「〇〇をしなければならない」と考えず、楽しいと思えることに毎日少し取り組みましょう。そうすることがストレス発散につながります。日常生活の中で楽しみを探しましょう。

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適度な運動をする
1日5分でも10分でも歩きましょう。厚生労働省が推奨する、いまより10分多く体を動かす「+10(プラステン)」の習慣を心がけることが大切です。おしゃべりしながら楽しく歩くのが理想です。

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おなかをマッサージする
腹部を「""の字」に軽く押すマッサージも効果的です。指でおなかの右下、右上、左上、左下、へその下と、順番に軽く押します。腹部膨満感や痛みの軽減にも役立ちます。

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食事は規則正しく取る
1日3回、決まった時間に食事を取るなど、規則正しい生活は自律神経を整え、腸の健康にも役立ちます。食事内容も偏ることなく、バランスよく食べることを心がけましょう。

過敏性腸症候群の治療法

生活習慣の改善
自分に合った生活リズムを取り戻すため、食事や運動、家事や仕事の時間、睡眠時間などを見直します。また、排便しやすい体勢や、考え方を変化させることも重要になります。運動は、ウォーキングがおすすめです。

腸内環境の改善
腸内環境を整えるため、乳酸菌の「ビオフェルミン」、酪酸菌の「ミヤBM錠」や「ビオスリー」が処方される他、水溶性食物繊維(わかめやオクラなど)を摂るといった食事内容の指導も行われます。十分な水分摂取も重要。

薬物療法
第一選択肢は、便通を整える「ポリカルボフィルカルシウム」(商品名「コロネル」「ポリフル」他)。また、腸の動きを正常に導く「トリメブチンマレイン酸塩」(商品名「セレキノン」)など、症状によりさまざまな種類があります。

構成/岡田知子(BLOOM) 取材・文/安達純子 イラスト/堀江篤史

 

鳥居内科クリニック 院長
鳥居 明(とりい・あきら)先生

医学博士。1980年、東京慈恵会医科大学医学部卒。神奈川県立厚木病院医長、東京慈恵会医科大学助教授を経て2006年より現職。東京医師会理事などを兼任。

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