国内で1200万人もの患者が! 下痢や便秘を引き起こす「過敏性腸症候群」【医師・鳥居先生が解説】

大人世代、70~80代は過敏性腸症候群にかかりやすく、過度のストレスによる腹痛や便秘を繰り返すこの病気は国内で1200万人の患者がいます。下痢や便秘の腸のトラブル、今回はこの病気について、専門医の鳥居先生にお話を聞きました。

この記事は月刊誌『毎日が発見』2023年9月号に掲載の情報です。

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どんな病気?

●大腸に関するさまざまな症状(下痢、便秘、腹痛など)が現れる病気。
●日本人の1200万人が悩んでいるといわれる(人口の10〜15% )。
●発症のピークは10〜20代だが、高齢になると再び増える。
●女性の患者は男性の1.5〜2倍。
●女性は便秘型または混合型、男性は下痢型が多い。
●主な原因はストレス。
●症状は慢性的に持続し、再発を繰り返す。

過度なストレスで腹痛や便秘を繰り返す

年を重ねると、老後の不安や子どもの独立による生活環境の変化、介護問題などで、知らぬ間にストレスを感じやすくなります。

そんなストレスが引き金となる病気の一つが、過敏性腸症候群です。

ストレスが腸の動きや反応に悪影響を及ぼし、腹痛や腹部の不快感、便秘や下痢などの便通異常を伴う病気で、国内ではおよそ1200万人の患者数が推計されています。

「腸と脳の関係は深く、これを『脳腸相関』と称します。脳がストレスを感じると、自律神経が乱れ、腸の動きが乱れて便秘や下痢、腹痛を起こします。また、脳の神経伝達物質に腸が過剰に反応すると、内臓知覚過敏によって腹痛や下痢などの症状を引き起こします」と、鳥居明先生は解説します(下図参照)。

例えば、旅行のとき。出発する朝は慌ただしく、慣れない乗り物や場所で緊張を感じると、便秘になりがちです。

旅行へ行くのは楽しいことですが、いつもの日常生活とは異なることがストレスとなり、便秘になることがあるのです。

「加齢に伴い、大腸の蠕動(ぜんどう)運動が鈍くなり、便秘になる人はいます。その中に過敏性腸症候群の患者さんも含まれていると考えられます。便秘に腹痛やおなかが張ったような不快感が伴っていると、過敏性腸症候群の疑いが強くなります」と、鳥居先生は指摘します。

ただし、おなかの不調で医療機関を受診しても、「異常は見られません」といわれてしまうことがあります。

過敏性腸症候群は、実は専門医でないと診断が難しい病気なのです。

過敏性腸症候群の起こるしくみ

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過敏性腸症候群の症状の種類

下痢型
軟便や水様の便が見られ、若年層や男性に比較的多い症状です。緊張すると腹痛や下痢が生じ、「怖くて電車に乗れない」という人も。

便秘型
硬い便、またはウサギのふんのようなコロコロとした形状の便が特徴。ストレスを感じると便秘がひどくなることがあります。

混合型
硬い便と軟便・水様の便を繰り返すほか、下痢をしたり便秘をしたり、便通が変動します。便秘型と合わせて高齢女性に多い症状です。

下記の1項目ないし2項目以上を伴う繰り返す腹痛が、最近の3カ月において、平均少なくとも週に1回以上ある
1. 排便と関連する
2. 排便の頻度の変化と関係する
3. 便の形状の変化と関係する
⇒「過敏性腸症候群」と診断

 

鳥居内科クリニック 院長
鳥居 明(とりい・あきら)先生

医学博士。1980年、東京慈恵会医科大学医学部卒。神奈川県立厚木病院医長、東京慈恵会医科大学助教授を経て2006年より現職。東京医師会理事などを兼任。

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