最近、疲れやすい、かぜが治りにくいと感じること、増えてきてません? それ、年齢の問題だけでなく、あなたの「姿勢の悪さ」が原因かもしれません。そこで、医学とフィットネスの観点から、正しい姿勢によって健康をもたらす治療法を考案した鍼灸師・岩井光龍さんの著書『1分で姿勢がよくなる!』(あさ出版)から、「姿勢と健康の関係」を連載形式でお届けします。
よい姿勢とは?
まず、よい姿勢とは具体的にどんな姿勢かを確認しておきましょう。
まず頭は、首の生理的湾曲の上に無理なくのっかっています。首の反りを適度に保てば、視線は正面を向き、耳は肩の真上に位置し、顎は浮かない状態です。肩の力は抜き、肩甲骨を快適な程度に内側に寄せ、気持ち下げます。こうすることで、胸が開き、呼吸も楽にできます。腕は自然に垂らし、腿の脇あたりに来るのが自然な位置です。
腰の部分は、首の骨と同様に生理的湾曲を意識し、反りを保つことで、背筋がピンと伸びます。
足は平行に踏みますが、この時に一度踵を上げてゆっくりおろしてみましょう。そして重心を踵よりも少しつま先のほうに意識して置きます。踵の下に一枚コピー用紙を挟む感じです。つま先にやや重心を傾けることで、足の踏み出しがスムーズになり、転倒も少なくなります。
自然な形で立った姿勢では、体の重心は骨盤内の第2仙椎の少し前(へその下あたりの下丹田と呼ばれる部分)にあります。この重心を中心とて体に真っすぐの線が通った状態がよい姿勢です。
ここで、下丹田について少し説明しておきましょう。下丹田は、人体を身長サイズの球体に収めた時の、球体の中心に位置します。呼吸時には、下丹田を意識することで、呼吸が深まります。武術においては、下丹田を中心とする球体にそった動きが極意とされ、自然で無駄のない動きを生み出します。
やってみよう!「姿勢矯正エクササイズ」
では、実際に姿勢矯正エクササイズをやってみましょう。最初はややこしく感じるかもしれませんが、一連の動作を覚えてしまえば、簡単に数十秒でできてしまいます。
「姿勢矯正エクササイズ」
[POINT]
・③④で息を吐く時
腹⇒へこませる(腰椎を前に倒す)
顎⇒突き出す(腰椎を後ろに倒す)
・⑤⑥⑦で息を吸う時
腹⇒突き出す(腰椎を後ろに反らす)
顎⇒ひく(頸椎を前に倒す)
①~⑧をワンセットとして、3回程度繰り返す。
※③~⑦の動作では、腰椎と頸椎の動きを逆にすることで、腰の反りが意識されやすくなり、頸椎も調整される。
究極の脱力姿勢を味わう
このエクササイズには、二つの大事なポイントがあります。まず一つ目は、⑧で息を吐きながら脱力する瞬間です。⑦の段階では、首、肩、横隔膜などの筋肉が緊張していますが、⑧で一気にすべての力を抜きます。
力を抜くと言っても、姿勢は楽に保ったままです。上半身の脱力と同時に、後ろに反らせた頭を元のまっすぐな位置に戻すわけですが、この時、自分の頭をけん玉の先に刺さった玉のイメージでとらえてみてください。
玉がけん先に刺さると、穴に遊びがあるので少しぶれながらスポっと収まります。そんな感じで、頭蓋骨が頸椎(首の骨)の上にゆらゆらと落ち着くイメージです。この時、脊柱の生理的湾曲が保たれたよい姿勢の状態であれば、脱力した状態でもバランスよく頭蓋骨が頸椎(首の骨)にのっかります。
自分の姿勢を検証しながら、エクササイズを何度も繰り返していくうちに、脱力したよい姿勢、つまり骨だけで姿勢を維持するという感覚が身についてくるはずです。
より深い呼吸が身につく
もう一つのポイントは、④で息を吐き切る時と⑦で息を吸い切る時。一気に吐き切った後、数秒我慢してさらに残りの呼気を少しでも吐き続けます。同じように、一気に吸い切った後、数秒間少しでも多くの空気を吸うよう心がけてみてください。
こうすることで、肺の残気(肺に残っている気体)をしっかり換気(空気の入れ替え)することができ、呼吸筋を鍛えて肺活量も増えていきます。
姿勢矯正エクササイズを行うと、骨だけで体を支えるよい姿勢の感覚と、最大呼気量と最大吸気量が増えることによる深い呼吸が同時に身につきます。
姿勢と呼吸のエクササイズを同時に簡単に行えること。これが姿勢矯正エクササイズの大きなメリットですが、人間の健康にとって、姿勢と呼吸には切っても切り離せない重要な関係があるのです。
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