50代で急増する「がん」。乳房、大腸、子宮...50代女医が伝えたい「私のがん対策」

自分の体が思うようにならない...、そんな違和感がありませんか? 女性は特に40代以降、更年期や閉経という新しいモードに入っていく過程で、なんらかのトラブルはつきものです。そこで、『マリ先生の健康教室 オトナ女子 あばれるカラダとのつきあい方』(常喜眞理/すばる舎)より、女性家庭医である著者が提案する、それぞれの年代で起こる女性の体の変化への「上手な対応策」を、連載形式でお届けします。

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「対策型」でよしとするか、「任意型」も取り入れるか

50代になるとがんを発症する人が目に見えて増えてきます。ぜひとも予防に励みたいところですが、どんなに理想的な生活習慣を送っていても、すべてのがんを防げるわけではありません。

そこで、がん検診による早期の発見が大切になってきます。

がんを早く見つけることで、体に負担の少ない治療で済むからです。

そのがん検診には、大きく分けると2つのタイプがあります。

【対策型検診】
まず市区町村で受けることができるがん検診は「対策型検診」と言います。検診による死亡率の減少効果が、科学的にはっきりと証明されている検診です。

費用もわずかなものなので、受けたことがない方はぜひ受けてください。

【任意型検診】
一方、私が個人的におすすめするのは、人間ドックなどで行われている「任意型検診」です。費用は自己負担になります。

ただし任意型検診には、死亡率減少効果がはっきりとは証明されていないものも含まれています(検診の効果を証明するというのは実に大変な作業で、結論が出るまでに数年から10年以上の時間と、莫大な費用を要します)。

また仮にがんと診断されても、その中には進行しないがんもあります。

要するに任意型検診では、本来心配すべきではない病変まで、見つける場合があるということです。
それでも私が任意型検診をおすすめする理由は、日々の診療の中にあります。

私は自分のクリニックでの診療以外に、大学病院の健診センターで、毎週約30人の方の人間ドック診察・診断を15年以上続けています。

そこで、任意型検診によってがんが早期発見されてよかった、助かったと思う事例に、何度も立ち会っているからです。
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そうした患者さんたちが危険ながんを早期発見し、元気に社会生活に復帰していく過程を間近で見てしまうと、つい声をかけたくなってしまうんです。
「まだ効果は証明されていないけれど、自分のために受けませんか」と。

私のがん対策

効果がはっきりと証明されていない以上、医師として一律に「任意型検診」を受けるべき、と言うことはできません。

そこでここでは、私自身が必要性を感じ、実際に受けているがん検診についてご紹介してみます。

前提として、女性が一生のあいだにかかる可能性の高いがんの上位5つは、乳房がん、大腸がん、胃がん、肺がん、子宮がんです。そのほかに肝臓がんや膵臓がん、卵巣のがんなども一般的です。

〈乳房〉マンモグラフィーだけでは安心できない場合も.........

乳房は1年に1回、マンモグラフィー(X線)、乳房超音波検査(エコー)、乳腺専門医による触診を受けています。

対策型検診でも、40歳以上の方にはマンモグラフィーと触診は推奨されていますが、超音波検査はいまのところ推奨されていませんので、この部分は自己判断での追加です。

乳腺の密度が高い「高濃度乳房」の方は、マンモグラフィーだけでは異常が見つけにくいと言われており、乳房超音波検査が注目されています。それぞれの検査で見えてくるものに違いがありますので、私は両方を受けるようにしています。

〈大腸〉一度は受けたい内視鏡検査

対策型検診や、任意型の半日人間ドックでも行われている大腸がん検診は、一般には便潜血検査によって行われます。

ただ2日間に渡る便潜血検査でも、早期がんの約3~4割は見つからない、とする報告があります。そうして見逃されたがんが進行がんになって、症状が出てくるのを待つよりはと、私はより精度の高い大腸内視鏡検査を定期的に受けるようにしています。

ただし、がん検診としての内視鏡検査は、公式には推奨度が低いことになっていますので、あくまで一個人の選択として読んでください。

そもそも便潜血検査というのは、専用の容器に便を少しつけて提出すると、便の中に血液が混ざっていないかどうかを調べてもらえるもの。通常はこの検査で異常が認められると、内視鏡でも調べてみよう、ということになります。

便潜血検査は死亡率を下げる効果も証明されていて、確かに価値のある検査です。

しかし仮に大腸がんができているとして、そこをちょうど通過した便に微量の血がつき、その血がついたところの便を検査に提出できた場合にのみ、異常判定されるにすぎません。まだ小さいがんであれば、出血しないこともあります。

なるべく小さいうちに、内視鏡で直接チェックして発見・切除したほうが確実です。

私の場合、大腸内視鏡検査は50歳になったら5年に1回は行おうと、かなり前から決めていました。実際に50歳のときに行った最初の検査で、1センチ弱の良性でしたが腫瘍性のポリープが見つかり、切除しています。もちろん症状があったわけではありません。

毎年受ける方もいらっしゃいますが、大腸がんは進行が遅く、ポリープががん細胞化するには5年以上かかることが多いと言われています。心配なら最初に2年続けて受けて、それで腫瘍性ポリープが見つからなければ、次からはあいだを空けて5年に1回でもいいのではないでしょうか。

検査自体は10分程度で終わりますが、腸をきれいにするための前処置や、肛門からカメラを入れることに抵抗がある、という人も結構います。しかし5年に1回なら、まあ我慢もできるかも、と感じるのでは?

〈胃〉ピロリ菌の検査・除菌もおすすめ

私の場合は胃がんの原因とされるピロリ菌がいませんでしたので、2年に1回、胃内視鏡検査を受けています。

胃のピロリ菌を除菌したとしても、胃炎がすでに進んでいた方は、年1回は内視鏡検査を受けたほうがいいでしょう。

もしまだピロリ菌の検査・除菌をしていない方がいれば、これに関してはぜひおすすめしたいと思います。胃がんの原因はピロリ菌だけではないですが、ピロリ菌の感染者が除菌をすると、随分と胃がん発症のリスクが減ることがわかっています。

〈肺〉2年に1回は胸部CT検査を

肺については、年1回の胸部X線検査とともに、2年に1回は胸部CT検査を受けることをおすすめしたいです。

胸部CT(コンピュータ断層撮影)検査とは、X線で撮影した体内の様子をコンピュータで解析し、胸部を断面図にして臓器の様子を見る検査法です。通常、X線検査で肺がんなどの疑いがあると診断された場合に、より詳しく調べるために行われます。

1回の撮影は15~30秒ほどで、検査にかかる時間は全部で10~15分程度。痛みや苦痛などもありません。ただし、X線を使いますので多少の被ばくリスクはあります。

一般的にはCT検査は推奨度が低いとされているのですが、個人的に胸部CT検査で発見された早期肺がんが、通常のX線検査でははっきりわからなかった、という経験を何度かしています。

頻度としては少ないのですが、実際にそんな例がありますので、やはり自分自身は検査を受けることを選択しています。

〈子宮〉内診や細胞診だけではわからないことも

子宮は年に1回、頸がん細胞診と経腟超音波検査を受けています。
頸がん細胞診では、子宮頸部(=子宮下部の入り口部分)をブラシでこすり、直接細胞を採取して、これを顕微鏡で観察します。

一方の経膣超音波検査は、卵巣の病気や子宮の中の様子をエコー(超音波)映像により確認するものです。エコーですから被ばくの心配もなく、体への負担も比較的少ない検査です。

対策型検診では、頸がん細胞診を2年に1回受診することをすすめていますが、40歳以上では頸がんだけでなく、その奥の卵巣がんや子宮体がんへの配慮も必要です。そのため、私は経腟超音波検診もあわせて受けることを選択しています。

なお経腟超音波検査だけでは子宮体がん検査として完璧ではありませんが、子宮内膜の厚さや構造に異常があれば、診察医からさらなる体がん検査の必要性を伝えてもらえます。

また子宮筋腫を抱えている方は、その大きさや筋腫の数を確認することもできるので、40代以上のオトナ女子なら"する価値のある検査"と言えるのではないでしょうか。

〈肝臓・膵臓〉脂肪肝の人は特に注意したい

このほか、肝臓がん対策として、腹部超音波も年1回は受けたいところです。これもエコーですから、痛みも被ばくも心配ない検査です。

肝臓がんと言えば、かつては肝炎ウイルスが関係する場合がほとんどでしたが、いまでは脂肪肝(炎)から生じるケースが増えています。

がんにつながることもあるので、脂肪肝を単なる飲みすぎ・食べすぎのツケと侮ってはいけません。そうと診断されたら、定期的に検診を受けることが大切です。

また、最近では膵臓がんが増えており、相談されることも多くなっていますが、こちらはまだ診断・治療が難しい病気です。

早期発見による治療の成績は改善してきていますので、今後のさらなる進歩を期待したいところ。現状でどの検査の精密度が高いかと言えば、MRCP(膵臓近辺のMRI検査)と腹部CTですから、心配な方はこれらを取り入れるといいでしょう。

検診結果に一喜一憂せず、ホームドクターと相談して対処しよう

対策型検診でよしとするのか、任意型検診を取り入れるのか、医療の受け方に正解はないと思います。

検査による死亡率の低下というエビデンス(証拠)も大切ですが、もっと大事なのは一人ひとりの生き方を踏まえた上で何を選択するかです。

これは医療に限りませんね。

親や近親者の体質、病歴などを参考にするのもよいでしょう。

最後に注意しておきたいのは、検診はあくまでスクリーニング検査だということ。

検診を担当している医療者は、疑わしきものがあればすべてを指摘する、という姿勢で検査を行っています。何よりも、病変を見逃してしまうことを避けたいからです。ですから、いたずらに検査結果に一喜一憂しないこと。

人間ドックを受けた方で、結果の帳票を成績表のように受け取る方が少なくありません。オールAにこだわったり、精密検査項目があると怒り出したり、不安でいっぱいになったり.........。

なかでも最悪なのは、検診を受けるだけで結果は放置という方。

お気持ちは理解できるのですが、検診の目的は危険な病気を早期発見し、それにより重大な病状へと進んでしまうことを予防するところにあります。このことを、どうぞ忘れないでください。

結果が出たら、よくても悪くてもホームドクターに相談し、今後の方針・対策を立てて、不安を自分で抱え込まないようにするのがおすすめです。

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イラスト/加藤陽子

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syoei002.jpg40代~70代まで、年代別に表れる症状の解説や、それに対する具体的な対応策を紹介。女性家庭医として著名な著者が、わかりやすく解説してくれる一冊です。

 

常喜眞理(じょうき・まり)

家庭医、医学博士1963年生まれ。常喜医院の院長としての診療とともに、慈恵医大新橋健診センターでは診療医長として、婦人科や乳腺外科の診察結果を総合的に最終診断する立場を担っている。テレビの健康番組にも多数出演。

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『マリ先生の健康教室 オトナ女子 あばれるカラダとのつきあい方』

(常喜眞理/株式会社すばる舎)

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※この記事は『マリ先生の健康教室 オトナ女子 あばれるカラダとのつきあい方』(常喜眞理/すばる舎)からの抜粋です。
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