アラフィフ女性にとって、身近なテーマである「更年期」。でも、更年期に起こる心身の不調の症状や程度、改善法は本当に人それぞれですよね。そこで、薬剤師やジャーナリストの方に、漢方で更年期症状が快方に向かった方のケースをお聞きする「更年期『漢方』相談室」を連載形式でお届け。第4回は、漢方薬・生薬認定薬剤師の清水みゆきさんに「更年期の不眠」についてお聞きしました。
こんにちは、「あんしん漢方(オンラインAI漢方)」で薬剤師として働いている、 清水みゆきです。
最近、以前よりも寝付きにくくなった...とお悩みではありませんか?
それはもしかしたら更年期のせいかもしれません。
45~55歳の閉経前後の10年間は更年期と呼ばれており、この時期は、ホルモンバランスの影響で寝付きにくくなることがあります。
私の対応したお客様でも、45歳を過ぎ、生理が不順になってきた頃から、夜寝つきにくくなって日中にぼーっとすることが多くなったという悩みをお持ちの方がいらっしゃいました。
しかも、法事でご主人の実家に泊まりに行き、朝食の支度をしているとき、お義母様の脚にうっかり熱いお味噌汁をかけてしまい、元々悪かった嫁姑関係が更に悪化してしまったそうです。
そんなCさん(47歳)が漢方で不眠を改善できた事例を通して、更年期の不調の改善方法をお伝えいたします。
1.更年期に不眠を生じる原因
更年期は、女性ホルモンが一番激しく変動する時期です。
40歳後半から50歳代になると、女性の体は、女性ホルモンのひとつのエストロゲン(卵胞ホルモン)が急激に減少します。
このホルモンバランスの乱れにより自律神経が不安定な状態になるため、不眠を生じることがあります。
さらに、加齢による体の機能低下、忙しさや生活環境の変化によるストレスも更年期の不調を悪化させる原因となります。
東洋医学的には、気(生命エネルギー)や血(心身に栄養を与える血液)が不足したり、巡りが悪くなると、不眠を引き起こすと考えます。
気血が不足して疲れて起きる不眠、緊張やストレス、疲労が続いて気が滞り眠れない、血が不足して気の熱を冷ませず眠りが浅くなるなど、不眠の原因は様々で、ひとりひとりの症状や体質にあわせた漢方薬が使われます。
2.日中もボーっ。義母に熱い味噌汁を...
印象に残ったお客様、Cさん(47歳)のエピソードをご紹介いたします。
Cさんはご主人と高校生の娘1人の3人家族。
パッチワークが趣味で、家事やパートの仕事の合間にチクチク縫物をするのが毎日の楽しみという物静かでやさしそうな女性でした。
最初に症状をお伺いしたところ、もともと貧血気味だったそうですが、半年ほど前から、疲れがとれない、めまいや動悸がする、などと、これまでなかった不調が気になるようになってきたということでした。
特に、眠りが浅くて何度も目が覚めてしまい、ぐっすり眠れないことが辛かったそうです。
朝ごはんの準備をしないといけないので、朝は決まった時間におきるのですが、全く寝た気がせず、日中もぼーっとして趣味のパッチワークも進まないようになってきたと困っていらっしゃいました。
さらに、それだけでなく、ご主人の実家で真っ青になってしまう事件が起きてしまったということでした。
「法事で主人の実家に泊りに行くことがあったのですが、義母は、ひとり息子の主人が大好きなので、結婚した嫁の私のことをライバル視しており、いつも何かと言いがかりをつけてくるんです。それに対する緊張とストレスからか、夜はほとんど一睡もできず・・・気力を振り絞って何とか朝食の手伝いをしていたものの、やはり眠れなかったのでぼーっとしていたんでしょうね、義母の脚にうっかり熱いお味噌汁をかけてしまったのです。『あなた、私に火傷させようとわざとやったんでしょ! 』と義母からは散々怒鳴られて、大事な法事の日なのに最悪でした。法事の時も、親戚中に私の嫌味を言っていたようで...」
ご主人は「わざとじゃないんだから気にするな」となぐさめてくれたそうですが、もし、自分の体調がよくてちゃんと眠ることができたら、あんなことにはならなかったのではと、Cさんは思い悩むようになったそうです。
「そんな時に何気なく見ていたテレビの健康番組で、更年期障害の中には不眠もあるということを知り、びっくりしました。そういえば、生理もきたりこなかったりと不規則になっていました。睡眠薬を飲むのはなんとなく怖いと抵抗があったのですが、その番組の中で、不眠の改善に漢方薬を使っている更年期の女性が紹介されていたので、私も試してみることにしました」
Cさんは漢方薬を飲み始めて2週間ほどで、夜に目が覚めることがあまりなくなってきたそうです。
義母のことを思い出すとなかなか眠れない日もあるものの、日中にぼーっとすることはなくなり、ぐっすり眠れるようになったせいか、疲れやすさや動悸も気にならなくなったということでした。
「漢方は体調を整えるために今も飲んでおり、半年ほど続けています。好きなパッチワークもまた楽しめるようになって嬉しいです。あの味噌汁事件以来、落ち込みがちな私を主人と娘も心配してくれていたので、元気になってほっとしているようです。つい最近帰省した時は普通に眠れて、手伝いも完璧にできました。相変わらず義母は嫌味を言ってきますが、主人や親戚の方たちは更年期の不眠のせいだったと理解してくれるので、気にしないようにしています。私もだいぶ強くなりました(笑)」
趣味を楽しめる余裕を取り戻すことができたCさんは、このようにお話をして下さって、最後にやさしい笑顔を見せてくれました。
3.更年期の不眠は漢方で根本的に改善
女性ホルモンの変化は目に見えないので気がつきにくいですが、40代に入り、以下のような症状が見られる場合は、更年期のせいかもしれません。
<これって更年期の不眠?チェックリスト>
- 夜中にほてりを感じ、暑くて何度も目が覚める
- 寝汗がひどくて眠れない
- 布団に入ると急に動悸がして眠れない
「私の不調ってもしかして更年期のせい?」「どうしたら治るの?」そんな方におすすめなのが、漢方です。
漢方薬は、一般的に西洋薬よりも副作用が少ないとされており、対症療法ではなく、体質自体の改善に働きかけ、不調を根本的に解決することを目的としています。同じ症状を繰り返したくない方に最適です。
また、健康的な食事やセルフケアを毎日続けるのは苦手という場合も、医薬品として効果が認められた漢方なら、症状に合ったものを毎日飲むだけなので、手間なく気軽に継続できます。
今回Cさんが服用した漢方は「加味帰脾湯(かみきひとう)」という、気持ちが落ち込み気味で寝つきが悪い、眠りが浅く夢をよくみる方によく使われる漢方でした。
精神を安定させる血が不足すると、なかなか眠れず、気の熱を冷ませず眠りが浅くなります。加味帰脾湯は、脾(胃腸)のはたらきを高めて血を補い不眠を改善します。
更年期の不眠の改善には、他にも以下の漢方が使われることがあります。
●酸棗仁湯(さんそうにんとう)
疲れているのに眠れない、何度も目が覚める方向けの漢方。
心身ともに疲れすぎると軽い興奮状態になって逆に眠りにくくなります。気や血を補いつつ、神経の高ぶりを鎮めて不眠を改善します。
●柴胡加竜骨牡蠣湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)
ドキドキ感があったり、小さな音が気になって眠れない方向けの漢方。
イライラや不安で眠れない時に、気を巡らせて体にこもった熱をさますことで不眠を改善します。
なぜ何種類もあるのかというと、同じ「不眠」という症状であっても、体質や体型などによって、有効な漢方が異なるためです。
体質に合っていない場合は、効果が出ないことや、副作用が出ることもあります。購入時にはできる限り漢方に精通した医師、薬剤師等にご相談ください。
コスパが良く、自分に合った漢方薬が知りたい...という方には、「あんしん漢方(オンラインAI漢方)」などの、スマホで気軽に頼めるサービスもおすすめです。
4.漢方で心と体のバランスを整えて、ぐっすり眠りましょう!
夜中にほてりを感じ何度も目が覚める、寝汗がひどくて眠れない、布団に入ると急に動悸がする...
その原因は、女性ホルモンの減少で起きる更年期障害のせいかもしれません。
漢方で心と体のバランスを整えて、ぐっすり眠って更年期も元気な笑顔で過ごしていきましょう!