「サルコペニア肥満」という言葉を知っていますか? 40代以降では4人に1人がなり得るとも言われ、特にシニア世代では、通常の肥満やメタボリックシンドロームよりも気を付けたい症状です。日本ダイエットスペシャリスト協会の理事長を務める永田孝行先生に、今回はどのような人が「サルコペニア肥満」の疑いがあるのか、またどのように対策すればよいのかを教えてもらいました。
食事と運動の二本柱で改善しましょう
体脂脂肪率が高く、筋肉が少ない状態である「サルコペニア肥満」。症状が進むと歩行や運動が困難になり、寝たきりになることもあり、また、見た目が太っていなくてもなり得るので注意が必要です。
そこで、自分がサルコペニア肥満になる恐れがあるかどうか、まずは、体脂肪計で体脂肪率をチェックし、BMI値を算出してみましょう。
また、永田先生は姿勢をチェックすることもすすめています。
姿勢を保つには「抗重力筋」と呼ばれる背筋、腹筋、大腿筋などの筋肉が必要となります。サルコペニア肥満ではこれらの筋肉も衰えるため、姿勢を正しく保つことができず体が前かがみになったり、徐々に歩行時に足が前に出にくくなったりします。このような状態になる前に改善することが大切です。
サルコペニア肥満を防ぐには、体脂肪を減らし、筋肉量を増やすこと。そのためには食事の管理と運動の二つが欠かせません。「どちらも無理せず、できることから少しずつ始めましょう。毎日続けていくことが何よりも大切です」(永田先生)。
1.まず体脂肪計でチェックしてみてください
BMI値 20未満(一般的な「やせ形」)
+
体脂肪率 35%前後(脂肪過多)
↓
「サルコペニア肥満」の疑いあり!いますぐ改善が必要です。
※BMI値とは肥満の程度を表す指標。体重(kg)÷身長(m)÷身長(m)で算出します。数字が大きいほど肥満の程度が高く、日本肥満学会では22を「標準体重」としており、25以上を「肥満」としています。
※体脂肪率とは、体重に占める体脂肪の割合のこと。一般に健康的とされる目安は、男性は10~19%、女性は20~29%で、それを超えると、肥満といわれます。
2.対策は?
●BMI値 20未満の場合
「筋肉を増やしましょう」
<まとめて運動するのではなく、日常での活動量を増やす>
1週間や10日に1度まとめて運動するよりも、「NEAT(非運動性熱産生)」、つまり、家事や階段の上り下りなど運動ではない日常の活動によってエネルギー消費を増やします。そのほか、以下のようなことも続けると効果的です。
・毎日1回以上、かかとの上げ下げを20回行う。
・1日の歩数をできるかぎり多くする。
・1日2回、深呼吸を10回行う(最大に息を吸って2秒止めた後、精一杯息を
吐き切る)。
・握力を最大限に発揮する(力いっぱい握ったら手指を伸ばすことを10回)。
<少し早歩きを心がける>
自分と同じような年代の人が前を歩いていたら、その人を追い抜かすイメージで歩きます。早歩きができるということは、姿勢が正しく保たれ、脚の筋肉がきちんと機能している証しにもなります。
<テレビは"立見席"で。就寝以外ではなるべく横にならない>
食事以外は座らないなどして、家でも積極的に動いて「NEAT」を増やします。テレビは立ちながら見るのもおすすめ。
<良質なたんぱく質を摂る>
筋肉をつくるには、運動のほかにたんぱく質も必要。ご飯などの主食を減らして、肉や魚、豆類を摂って補います。
●体脂肪率 35%前後の場合
「脂肪を減らしましょう」
<食べる順番を変える>
繊維質が豊富な野菜や海藻→肉・魚など(たんぱく質)→ご飯、パン、麺類など炭水化物の順に食べると、太る原因となる血糖値が急上昇せず、太るホルモンといわれるインスリンの分泌も少なくなります。最後にご飯などの炭水化物を摂れば、おかずがもうないため、食べ過ぎも防ぐことができます。
<「三角食べ」でなく「懐石食べ」に>
ご飯を食べたらおかず、ご飯を食べたらみそ汁という、かつて推奨されていた「三角食べ」でなく、懐石料理や西洋料理のコースのように一皿ずつ順番に食べます。大きく3つに分け、最初に野菜や海藻の汁ものやサラダ、または、納豆や豆腐など植物性たんぱく質が豊富な食品、次に肉や魚など動物性たんぱく質の主菜、最後にご飯やパンなど主食の順に。
<ご飯は硬めに炊いてかむ回数を増やす>
日々食べるご飯は硬めに炊きましょう。かむ回数が増えることによって、満腹感を得やすくなります。
<寝る前に食べずに胃腸を空に>
寝る前に食べると、余分なエネルギーがたまって脂肪になりやすくなります。夕食後から朝起きるまでの7時間以上、腸管を空にすることで、ホルモン(モチリン)が腸管の中の老廃物をきれいにし、朝食を受け入れる準備をしてくれます。
取材・文/岡田知子(BLOOM)