40代以上の3人に1人が経験するとされる「尿もれ」。デリケートな問題なので、誰にも相談できない人も少なくないようです。そこで、排尿トラブル治療の第一人者・山西友典医師が監修した『尿トレ:誰にも言えない尿のトラブル「スッキリ解消! 」ブック』(方丈社)から、同書をまとめた取材班が知った「尿トラブルの仕組み」と解消法となるトレーニング「尿トレ」のヒントを連載形式でお届けします。
鍛える筋肉は"ここ"と意識が大切!
男性と女性では排泄器官の構造が異なっていますが、排泄ケア専門看護師・西村かおるさん曰く、男女とも頻尿や尿もれ、腹圧性尿失禁などのセルフケアで鍛える最重要ポイントは、尿道括約筋など「骨盤底筋群」とのこと。
骨盤底筋群はいくつもの筋肉や靭帯、筋膜などで構成されていて、骨盤の底で膀胱や直腸、子宮など内臓を支えています。
とくに女性の場合、尿道が短く、もれやすい構造なので、骨盤底筋の筋力が果たしている役割は大!
腹圧性尿失禁や、骨盤臓器脱(膀胱や子宮、直腸などが膣の中に下がったり、体外に出てしまう病気。頻尿、尿もれのほか、残尿感や尿が出にくくなることも)で、筋力を高める訓練が効果的なセルフケア法とされます。図を見て鍛える筋肉を把握、意識しましょう。(T)
尿道括約筋を動かしてみよう
おしっこを途中で止める(切る)ようなつもりで力を入れたり、おならをがまんするつもりで力を入れると、キュッと締まる骨盤底筋群。尿道括約筋が動く感覚がつかみにくい人は、男性は陰のうの裏側の付け根、女性は膣と肛門の間に指を当てると確かめられます。入浴中、湯船の中で確認を!
自分の尿意の波を理解し、リズムをつくる
排尿のトラブルを「治療やセルフケアができるもの、あきらめなくていいこと」として啓発し、患者に希望を与えてきた西村かおるさん直伝の膀胱訓練。平たくいえば「計画的におしっこをがまんして、徐々に排尿間隔を延ばし、膀胱にためられる量を増やす」練習をするものです。
膀胱訓練は、膀胱が過敏になっていて、勝手に縮んでしまうために起こる尿もれ(切迫性尿失禁)や、十分な量の尿がためられなくなって起こる頻尿(蓄尿障害)の改善に役立つ訓練です。尿をため、生活上の困りごとを軽減するリズムをつくるための訓練なので、排尿日誌をつけることから始めます。
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排尿日誌で、自分の(現在の)最大膀胱容量を確かめ、排尿回数と排尿間隔を確認して尿トレに入りましょう!リズムができていく経過を排尿日誌で確かめながら訓練を続け、モチベーションを保つ一助に。
ちょっとずつでも成果が見られたら、人知れず骨盤底筋を締め、排尿間隔を気にしながら、尿意の強弱と天秤にかけ、リズムをつくった自分を褒めて!効果が実感できなくても、排尿間隔があまり延ばせなくても、3カ月は続けていきましょう。
なお、「トイレをがまんすると膀胱炎になってしまう」は誤解とのこと。膀胱炎になりやすくなるのは、水分をとらず、汗もかかずに長い時間(目安として5、6時間)トイレに行かない場合で、普段の生活では3、4時間に1度程度の間隔で排尿するのが理想的なリズムだそうです。
ただし、膀胱訓練は排尿トラブルのあるすべての人に適したトレーニングではないのでご注意を。少しずつ常に尿がもれてしまう溢流性尿失禁や、前立腺肥大の排尿困難による頻尿、ストレスなどが原因の心因性の頻尿(神経性頻尿)には適していません。
人より回数が多いかもしれないと気がかりなら、比較的、ゆっくり過ごせる休みの日などに排尿日誌をつけてみて、確認しましょう。平日の日中などに仕事や家事、活動の合間、行けるタイミングで用を足していて、回数が多くても、それを気に病むことはないそうです。
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