肩や首のコリ、目疲れや肌あれ・・・年齢を重ねるごとに増えていく体の不調。これらを解消するのに外せないのが、毎日入る「お風呂」でしょう。医学的にお風呂を研究する医師・早坂信哉さんは「入浴方法を少し変えれば、さらなる健康効果が期待できる」と言います。そこで、早坂さんの著書『最高の入浴法~お風呂研究20年、3万人を調査した医師が考案』(大和書房)から、「疲労回復できる入浴法」のエッセンスを連載形式でお届け。今夜からお風呂の時間が劇的に変わります。
イラスト/二階堂ちはる
「冷え性」に効く入浴法
熱いお湯ではなく、ぬるめのお湯!
● 温めようとして、やたらと熱いお湯に入るのは避けましょう。
● 冷えの対策には、40~41℃程度のお湯に10分ほど浸かること。
冷えに悩む人には「ぬるいお湯に入りましょう」とアドバイスをしています。
すると、たいていの人からは、けげんそうな顔をされます。
「冷え性には、熱いお湯のほうがいいのでは?」ということでしょう。
しかし、これにはきちんと医学的な理由があります。
そもそも「冷え」とはいったい何でしょうか?
冷えに悩む人は多く、特に女性では約半数の人が冷え性であるといった報告もあります。
これは日本人に特有の症状とも言われており、驚くことに、海外では冷えという概念がありません。
そのため現代西洋医学をベースにしている医学部の教育では冷えを習う授業はほとんどなく、おそらく漢方薬の授業の中ですこし触れるくらいでしょう。
女性に冷えを訴える方が多いのは、男性と比べて筋肉量が少ないからだと言われています。
筋肉は血流をよくし、熱をつくるはたらきがあるためです(とはいえ、私が大学の講義で学生たちに質問したところ、男子学生でも冷えの症状を感じている人はいましたので、男女共通の悩みとも言えます)。
現在、冷えは一般的に「体に自覚的な冷えの苦痛があるもの」「体幹と末梢の温度差が大きい」「いったん冷えると体温の回復が遅い」などとされています。
特に手足の末端が冷えると感じる方も多いようで、症状の緩和にお風呂は必需品となっています。
熱いお湯に入ってはいけない
冷えの対策には体の温めが大切、と考えてやたら熱めのお風呂に入る人もいるでしょう。
しかしこれは誤りです。
確かに、42℃以上のちょっと熱めの湯に浸かりますと、体温も一時的には上がり、手足の皮膚の温度も上がります。
しかし、熱い湯で急に体温を上げても、体の温まりは持続しません。
なぜなら、人の体は急な体温上昇があると、汗をたくさんかいて急速に体温を下げようとはたらくからです。
結果として、体温は急速に下がっていくので、冷えの症状は改善しません。
ですので、冷えの対策には、40~41℃程度のお湯に浸かることをおすすめしています。
実際、私が出演したあるテレビ番組の実証実験で、41℃のお湯に浸かった後と、42℃のお湯に浸かった後の皮膚の温度変化をサーモグラフィーという機器で時間を追って測定しました。
入浴直後は42℃の方が体温も高いのですが、1時間後には41℃の方が体の温まりが保たれていたのです。
通常は40~41℃で入浴時間は10分で充分ですが、足りない場合はちょっと長めに浸かってもいいでしょう。
ふつうに考えれば「冷えは熱いお湯で改善する」と思ってしまいがち。
しかし、それが効果的でないこともあるのです。
※お湯の温度は、1℃の違いで体に与える効果が変わります。自宅の浴槽に温度調節機能がない場合は、お風呂用の「湯温計」のご利用をおすすめします。ホームセンターや、デパートのベビー用品コーナーなどで販売されています。
※掲載されている入浴法は、様々な医学的研究の結果から、その効果が一般的に期待されるものです。ただし、個人の体質や疾患の性質により、その効果には個人差があります。症状が緩和しない場合、主治医に相談してください。
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