自粛生活により運動不足、また身体動作の制約を受けて体に不調を訴える人も少なくありません。そもそも人間の体は基本的な立ち方、座り方、歩き方があると言います。そこで動作解析の専門家・夏嶋隆さんの著書『疲れないカラダ大図鑑』(アスコム)から体の基本的な姿勢、疲れないカラダのノウハウをご紹介します。
【前回】疲れる座り方は痛みを誘発する可能性も。疲れない座り方、4つのポイント/疲れないカラダ大図鑑
【最初から読む】疲れない立ち方を身につけて体のストレスを減らせば日常から得をする/疲れないカラダ大図鑑
疲れない基本の歩き方
みなさん、ご自身の普段の歩き方を思い出してみてください。
かかとから着地していませんか?
それが人間の「正しい歩き方」だと思い込んでいませんか?
しかし、その歩き方は人体の構造に反しています。
だから、歩くだけで疲れてしまうのです。
みなさんの「歩き方の常識」が一変することと思います。
歩く際、ほとんどの人がかかとから着地し、足指のつけ根を折りながら力を入れて、足を前に振り出しています。
この動きをすると、足首の角度は、着地して足を振り出す直前、鋭角(90度以下)になっています。
足首が鋭角になるということは、一歩進むたびに、ふくらはぎの筋肉が緊張するということです。
ふくらはぎの緊張は血流を悪化させ、疲れや痛みの原因になります。
大股で歩く人は、かかとへの衝撃が強まり、足首もより鋭角になるため、疲労感はさらに増します。
つまり、「疲れない歩き方」の基本は、かかとから着地しない、大股で歩かないことです。
具体的には以下の方法で歩きます。
【基本の疲れない歩き方】
・骨盤幅(骨盤の横幅)で歩く
・前に踏み出す足は、そっと引き上げて、体の少し前に落とす
・かかとからではなく、足裏全体で着地する(その際、足の指で地面をつかむように)
・同時に、後ろに残った足をスッと引き上げる(その際、足首を伸ばす)
・つねに着地している足に体の重心があるようにする(耳、肩、骨盤、着地した足を一直線にする)
骨盤幅の測り方についてお伝えします。
まず、両足のかかとをつけた状態で、両足のつま先をできるかぎり逆ハの字に開きます。
つま先を開いた位置に固定して、両足が平行になるようにかかとを開きます。
その横幅が骨盤幅です。
普段の歩行よりも左右の足が横に離れているように感じるかと思いますが、脚の骨をまっすぐ動かすには、骨盤幅がもっとも理にかなった横幅なのです。
◆疲れない歩き方のポイント
この歩き方のポイントは、「かかとから着地しない」「足の指で地面をつかむ」ことです。
こうすることで、足首の角度が鋭角になるのを防げます。
人類は太古よりこのように歩いていました。
かかとから着地するようになったのは、現在のようなソールの厚い靴ができ、道路が整備されて足裏全体で着地しなくても歩ける環境に変化したからです。
長い歴史の中で、人類はずっと岩場や道ならぬ道を歩いていました。
そういった厳しい環境を「かかとから着地して歩く」ことなどできるはずもありません。
足裏全体でしっかり地面をキャッチしなければバランスをとれないからです。
つまり、人の体は、骨格的に「かかとから着地して歩くようにできていない」のです。
現代人が「かかとから着地して歩くと疲れる」理由はここにあります。
この歩き方を実践すると、歩幅がいつもより狭くなります。
そのため、スピードが出ないように感じられるかもしれません。
しかしこの歩幅こそ、もともと人間に合った歩幅だといえるのです。
スピードを上げたいときは、歩幅を伸ばすのではなく、一歩一歩のピッチを上げるようにしましょう。
【Point】
基本の疲れない歩き方は、かかとではなく足の裏全体で着地することが大切。この歩き方こそ、人類の体に合った本来の歩き方である。
疲れにくく洗練されたヒールでの歩き方
「疲れない基本の歩き方」は、スニーカーや革靴などを履いているときに適した歩き方です。
ヒールの高いパンプスを履いているときに骨盤幅で歩く場合は、内側や外側に足首が倒れやすく安定しないのでオススメできません。
見た目にも美しくないでしょう。
そこで、ヒールを履いているときは、以下の方法で体の負担を減らします。
【ヒールでの歩き方】
・1本の線の上を歩いていくイメージで
・骨盤を上下に動かして脚を引き上げる(脚の筋肉をなるべく使わない)
・親指を体の中心に置くように足をつける(その際、耳、肩、骨盤、足が一直線になるように)
・背骨を左右にくねくね曲げて、頭の位置が変わらないように
ファッションショーのモデルさんはこの歩き方をしています。
「骨盤を動かす」「背骨をクネクネ曲げる」ことに慣れていない人は練習が必要ですが、この歩行法を習得すると、疲れにくいばかりか、見た目にも美しく洗練された印象になります。
ヒールを日常使いしている人はぜひ覚えましょう。
【Point】
ヒールで歩く場合は、1本の線の上を歩くようなイメージで、背骨をくねくねと曲げながら歩く。
【次回】少し重い物を運ぶと疲れる。実は、荷物の持ち方・運び方にはコツがある/疲れないカラダ大図鑑
間違った体の使い方をすると不調が出やすい。基本的な動作、疲れない体を作る方法など全11章に渡り公開