お酒の飲み過ぎや空腹時の薬にも注意! 「胃を健康に保つ」ための生活習慣と、不調の時どうする?

胃は丈夫な臓器ですが、不調を侮るのは禁物。ストレス、ピロリ菌、遺伝など、不調の原因は多種多様で、胃がんなどの病気が潜むこともあります。そこで今回は、東京医科大学 消化器内視鏡学 主任教授の河合 隆(かわい・たかし)先生に「『胃の健康』のための生活習慣」について教えていただきました。

【前回】"いつもの不調"と放置は厳禁! 「胃の不調」セルフチェックと知っておきたい3つのキーワード

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症状と原因はいろいろ

自己判断は禁物

一方、胃内視鏡検査を受けても「異常なし」といわれることがあります。

それでも胃が痛い。

そのような原因として多いのが、「機能性ディスペプシア」という病気です。

ギリシャ語を語源とした名称で、萎縮性胃炎や胃潰瘍(胃の粘膜がただれ、胃壁が傷ついた状態)などの病態が内視鏡検査では見られないのに、胃の不調を引き起こします。

一見、胃の粘膜は正常でも、少しの刺激で胃の不快な症状に結びつく、胃酸の分泌が粘膜を刺激するなど、胃の機能低下がさまざまな症状を引き起こすのです。

「夜眠れなくて吐き気がするといった方も、患者さんではよく見られます。

ストレスそのものが胃酸過多の状態を引き起こしますが、不眠も自律神経の働きを乱し、胃の動きに悪影響を及ぼすのです。

かかりつけの医師に相談して、場合によっては睡眠導入剤などを活用して、ぐっすり眠ることが大切です」と河合先生。

ストレス発散などでお酒を飲み過ぎることも、胃にはよくありません。

毎日2~3合(日本酒換算)飲む人は、胃の粘膜に炎症を起こしていることが多いそうです。

ピロリ菌による萎縮性胃炎があって、飲酒による粘膜炎症が続くと、胃がんのリスクを高めるので注意しましょう。

「お酒を飲んで顔が赤くなりやすい人は、アルコールの代謝物・毒素のアセトアルデヒドが分解されず、炎症を引き起こしやすいのです。そういった方が飲み続けると、食道がんのリスクが上がります。胃へも悪影響を及ぼすと考えられるので、飲み過ぎはやめましょう」

さらに、もう一つ注意したいのが、ひざや腰などが痛むときに服用する非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)。

胃潰瘍の原因になるため、医療機関の処方では胃薬も一緒に出されることが多いのですが、ドラッグストアで自ら薬を購入するときには気を付けなければなりません。

「胃の粘膜が弱いと、非ステロイド性抗炎症薬を服用後、24時間で胃潰瘍が生じることがあります。ドラッグストアで購入するときには、薬剤師に相談しましょう」と河合先生はアドバイスします。

一般的によく「ストレスで胃が痛い」といわれますが、胃の不調の原因は多彩です。

だからこそ自己判断は禁物といえます。

まずは、医療機関で原因を突き止めましょう。

「一度は胃内視鏡検査を受けていただきたいと思います。近年、"痛くない検査"として鼻から細い管を入れる経鼻内視鏡検査が普及しています」(河合先生)。

きちんと胃の状態を把握して健康な胃を保ちましょう!

《OTC医薬品とは?》

ドラッグストアなどで購入が可能な市販薬のことで、カウンター越し(Over The Counter)に販売されます。

薬剤師との対面販売が不可欠な「要指導医薬品」や「一般用医薬品」など、成分によって分類と販売方法が異なります。

胃の調子が悪いときに使用される市販薬

お酒の飲み過ぎや空腹時の薬にも注意! 「胃を健康に保つ」ための生活習慣と、不調の時どうする? 2106_P088_01.jpgその他に、不安が胃の働きに悪影響を与える場合は抗不安薬などが処方されます。また、漢方薬も使用されています。第1類医薬品は薬剤師による対面販売が義務化され、第2類医薬品は店頭でも購入可能です。

「胃の調子」を健康に保つ生活習慣

【食事】胃に優しい食事を
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よくかんでゆっくり食べる。辛いもの、脂っこい料理は避ける。暴飲暴食はやめ、腹八分目に。

【運動】適度な運動を

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ウォーキングや軽いジョギングなど有酸素運動を習慣化する。スクワットなど軽い筋トレも行う。

【睡眠】夜はしっかり寝て、昼間に活動!

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夜更かしは×。早寝早起きを心がけ、日中の身体活動を上げることを意識する。

【その他】空腹時の薬には気を付けて!

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薬の種類によっては胃の粘膜を傷つけるため「食前」「食後」「食間」といった服用方法は守るようにする。

「胃の調子が悪い」と思ったら

医師の理解を得る
【まずは症状を記録】
いつ頃からどんな症状か、どんなときに痛くなるのか、自分にとっていちばんつらい症状は何か、をきちんと医師に伝え、理解してもらうことが大切。

検査するなら
【おすすめは胃内視鏡検査】
胃の状態をきちんと調べるには、胃内視鏡検査を受けることが重要。苦痛が少ないように鼻から入れる経鼻内視鏡検査も普及しているので、50歳を過ぎたら一度は内視鏡検査を。

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取材・文/安達純子 イラスト/堀江篤史

 

<教えてくれた人>
東京医科大学 消化器内視鏡学 主任教授
河合 隆(かわい・たかし)先生
東京医科大学病院内視鏡センター部長・健診予防医学センター長兼任。1984年東京医科大学卒。医学博士。日本消化器内視鏡学会理事など数多くの学会役職を兼務している。

この記事は『毎日が発見』2021年6月号に掲載の情報です。
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