ホットドリンクに頼らない! 日中の活動量アップと湯たんぽで体温上昇を/冷え対策(3)

ホットドリンクに頼らない! 日中の活動量アップと湯たんぽで体温上昇を/冷え対策(3) pixta_13002492_S.jpg

寒い時期のお出かけでは、暖かい服装をしても手足が冷たく、「冷え」を感じることはありますね。温度の高い部屋にいても、「寒い」と感じる人がいます。毎冬、冷えに悩まされている人の中には、「体温が低いから仕方がない」と諦めている人も。でも、上がらない体温には理由があるのです。東京有明医療大学教授の川嶋 朗先生にお聞きしました。

前の記事「「体温が35度台」は健康的とはいえない!/冷え対策(2)」はこちら。

◇◇◇

冷えを解消するために、温かい飲み物や食べ物を摂ったり、暖かいセーターや靴下を身につけたりしますね。それでも「寒い」ということはあるでしょう。「体内でエネルギーを生み出す筋肉量が少ないと体温は上がりにくいのです。まずは、体を動かして筋肉量を増やすことを考えてください」と川嶋先生はアドバイスします。

寒くて体調不良のときには、外出することもままならず、家でジッとしていることが多くなりがちです。「ジムや体操教室へ通うのは無理」と思う場合には、日常生活の中で筋肉を鍛えることを考えましょう。人間の筋肉の中で、最も大きいといわれるのは太ももの大腿四頭筋(だいたいしとうきん)です。この筋肉を強化すると、エネルギー代謝を効率的に高めることができ、体温を上げて血流をスムーズにします。「太ももを鍛えるなんて難しそう」と思うかもしれませんが、実はとっても簡単なのです。

「歩くスピードを1.5倍に速めるだけで筋肉を鍛えることができます」と川嶋先生。
外出時に寒いと、足先も冷たくてチョコチョコと小股に歩きがちですね。意識して少し歩幅を大きくすると良いそうです。また、座るときには、両ひざをつけるようにすると骨盤が締まりますね。鼻で息を吸って、口から息を10秒かけてゆっくり吐いて、肛門をキュッと締めることを10回繰り返すと、筋肉を鍛えることに加え、リラックスできて乱れた自律神経の改善にも役立つそうです。室内でも、少し負荷をかける動作が役立つので、食べ方や入浴法と併せて行いましょう。

「日中の体温を上げるには、湯たんぽが役立ちます。冷えを感じる人は、季節を問わず、湯たんぽを活用すると良いですよ」

湯たんぽは、小さめのものを袋に入れて、太ももや下腹部、腰などに当てます。同じ箇所にずっと押し当てるのではなく、太もも、おなか、腰と、湯たんぽを移動させるのがコツです。いわば、「湯たんぽ回し温め法」です。この方法を行うがん患者の方は、免疫細胞のリンパ球を3倍以上にも増やせたそうです。

一方、冷え対策の入浴方法として半身浴を行う人もいますね。でも、これは冷え解消には、おすすめできないそうです。「全身浴と半身浴の違いは、体にかかる水圧です。血管は水圧で押しつぶされるので血流が良くなり、心臓への負荷が大きくなります。そのため、半身浴は心臓病を患う人にすすめられているものです。健康で冷え対策を行うときには、首まで入る全身浴の方が、血流は良くなります」と川嶋先生は指摘します。

風呂上がりに浴びる冷水も、冷えの人は急激に体を冷やすことになるので禁忌。誤った方法で冷えを悪化させないように注意しましょう。正しい冷え対策で体を温めれば、自然に不調は解消されるそうです。風邪などの病気を退けて、冬も楽しく過ごしましょう!
 

知っておきたい達人のツボ 1

アイソメトリック運動をしよう!
運動習慣のない人やひざなどに痛みを抱えている人が、ハードな筋トレをすると故障の原因になります。そこでおすすめなのがアイソメトリック運動。体を動かさない状態で筋肉を鍛える方法です。例えば、寝た状態でひざの下に薄い雑誌を丸めて置き、脚を伸ばすようにすると、自然に筋肉に負荷がかかります。いすに座った状態で片足を伸ばし、太ももを手で押すことでも、筋肉に力が入るので鍛えることができます。無理のない範囲で行いましょう。

 
知っておきたい達人のツボ 2

ヒートショックにご用心!
体温と外気の寒暖差は、血圧を急激に上昇させ、心拍を速めて心臓に負荷をかけ、心筋梗塞や脳卒中、失神などにつながります。このように寒暖差が体に悪影響を及ぼすことをヒートショックといいます。寒い季節には、室内外の温度差にも注意が必要といえます。

 

次の記事「今日からできる! 「冷えない体」になる生活習慣/冷え対策(4)」はこちら。

取材・文/安達純子 

ホットドリンクに頼らない! 日中の活動量アップと湯たんぽで体温上昇を/冷え対策(3)
<教えてくれた人>
川嶋 朗(かわしま・あきら)先生

東京有明医療大学教授、東洋医学研究所附属クリニック自然医療部門担当。医学博士。北海道大学医学部卒。米国ハーバード大医学部の総合病院、東京女子医科大学附属青山自然医療研究所クリニック所長などを歴任し、2014年から現職。日本予防医学会理事。

 
この記事は『毎日が発見』2018年2月号に掲載の情報です。

この記事に関連する「健康」のキーワード

PAGE TOP