「のど」は、呼吸、飲み込み、発声という3つの重要な役割を果たしており、私たちが生きていく上で不可欠な器官です。同時に、外部から空気や食べ物を取り込む「のど」は、病原菌を遮る第一関門でもあります。「長生きしたければ、のどを鍛えましょう」と話す池袋大谷クリニックの大谷義夫先生に、「たん」の基礎知識を教えてもらいました。
本来は生理現象の一つ。特徴的なたんには要注意
たんは、のどに侵入した異物を粘液でからめ取り、体外に排出するためのものです。
ですから、本来は悪いものではありませんが、「特徴的なたんが出たり、特にのどにからんだりする場合は、特定の病気を疑うための一つの指針にすることがあります」と、大谷先生は言います。
たんと関係する病気は、せきの種類によってもおよそ見分けられます。
せきは主に2種類に分けられ、一つは「乾性咳嗽(かんせいがいそう)」。
「コンコン」という軽く乾いたせきで、たんはほとんど出ません。
せきぜんそくや逆流性食道炎などに見られます。
もう一つは「湿性咳嗽(しっせいがいそう)」といい、「ゴホンゴホン」という、たんがからんだ湿った重いせきです。
主に気管支ぜんそくや肺炎などに見られます。
ほかに、気管支の先端が広がる「気管支拡張症」、喫煙者の15~20%が発症する「COPD(慢性閉塞性肺疾患)」、副鼻腔炎と気管支拡張症など慢性気道炎症を合併する「副鼻腔気管支症候群」なども、たんがよく出ます。
また、逆流した胃液がのどを刺激してせき込む「逆流性食道炎」は、上がってきた胃液をたんだと思う人が多いですが、実際はたんではありません。
たんの状態や色だけでは病気を判断できませんが、せきが続く期間と併せ、下の図でたんの状態も確認するといいでしょう。
特に喀血は、気道内で血が固まって窒息する可能性もあるので、すぐ病院へ行ってください」(大谷先生)
【たんの種類と考えられる主な病気】
■膿性(のうせい)
状態...細菌と白血球、粘液が混ざる
色...黄色、緑色、さび色
主な病気...肺炎(ウイルスや細菌による肺胞の感染症)
びまん性汎細(はんさい)気管支炎(気管支の慢性炎症)
副鼻腔気管支症候群(副鼻腔炎と気管支拡張症など慢性気道炎症を合併)
気管支拡張症(気管支の先端が広がる)など
■粘液性
状態...粘り気がある
色...透明~白色
主な病気...非細菌性感染症(細菌以外の微生物によっておこる肺炎)
COPD(慢性閉塞性肺疾患。喫煙者の15~20%が発症)など
■泡沫(ほうまつ)性
状態...泡状
色...ピンク色
主な病気...気管支ぜんそく(空気の通り道となる気道が狭くなり、
「ヒューヒュー」「ゼーゼー」という音を伴って呼吸が苦しくなる)
肺胞上皮がん(肺がんの一種。たんが多いことが特徴) など
■漿液(しょうえき)性
状態...粘り気がなく透明
色...透明~白色
主な病気...肺がん(気管支や肺の細胞ががん化した悪性腫瘍)
肺マック症(マック菌を吸い込むことにより感染症)
気管支拡張症(気管支の先端が広がる)
肺結核症(結核菌による肺の感染症) など
■血痰(けったん)
状態...たんに血液が混ざる
色...茶色、暗赤色
主な病気...肺がん(気管支や肺の細胞ががん化した悪性腫瘍)
肺マック症(マック菌を吸い込むことにより感染症)
気管支拡張症(気管支の先端が広がる)
肺結核症(結核菌による肺の感染症) など
■喀血(かっけつ)
状態...せきと一緒に血液を吐く(肺、または気管支からの出血)
色...赤色
主な病気...肺がん(気管支や肺の細胞ががん化した悪性腫瘍)
肺マック症(マック菌を吸い込むことにより感染症)
気管支拡張症(気管支の先端が広がる)
肺結核症(結核菌による肺の感染症)
肺真菌症(カビによる肺の感染症)
肺胞出血(肺胞からの出血) など
構成・取材・文/岡田知子(BLOOM) イラスト/中川原 透