では、ズボラ筋に対処せず、このまま腰痛を放置すると、どうなるでしょうか。
背骨のS字カーブはますます崩れていき、背骨の負担が増加。
神経を圧迫して、しだいにマヒしたような状態に移行します。
さらに、背骨( 椎骨)と背骨の間にあり、クッションのような役割をしている椎間板が、本来あるべき場所から飛び出すこともあります。
いわゆる「椎間板ヘルニア」です。
椎間板ヘルニアを発症すると、飛び出した椎間板が、神経を直接圧迫するので、激しい痛みに悩まされることになります。
椎間板ヘルニアを、さらに放置すると、どうなるでしょうか。
特に高齢者に多いのですが、椎間板に異常な圧力がかかり続けることで、椎間板が削れて減っていき、「脊柱管狭窄症」を起こします。
脊柱管とは、背骨の後ろ側にある、神経の通り道のことです。
ここが狭くなる(狭窄する)と、やはり神経が圧迫されるため、非常に強い痛みやしびれに襲われます。
また、脊柱管狭窄症の代表的な症状は、「間欠性跛行」です。
歩いているうちに、腰から下にうずくような痛みやしびれ、脱力感に襲われ、歩いていられなくなります。
しばらく休憩をとると回復するので、また歩きだすことができますが、しばらく歩くと再び痛みで歩けなくなる、というのをくり返すのです。
激しい痛みとしびれ、そのうえ満足に歩けなくなるなんて、とても怖いですね。
脅すわけではありませんが、それだけでは終わりません。
背骨が左右にゆがむ「脊柱側彎症」が起こる可能性もあります。
脊柱側彎症は、腰や背中の痛みだけでなく、見た目にも影響します。
背骨がゆがむことで、肩や腰、肋骨の位置が左右非対称になるからです。
肋骨の位置が正常でないと、呼吸にも影響が現れます。
深い呼吸ができなくなり、睡眠の質も悪化します。
また、強い痛みはなくても、なんだか頭がスッキリしない、回復力の低下などの原因不明の不調が現れるケースもあるのです。
そして、椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症の成れの果てが、「膀胱・直腸障害」です。
神経が完全につぶれている状態で、膀胱や腸が機能しなくなります。
こうなってしまうと、もう絶望的です。
排便・排尿ができなくなり、あるいは垂れ流しになり、死に直結します。
この場合の治療方法は、手術しかありません。
椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症、脊柱側彎症でも、場合によっては、手術という治療方法が選択されることもあります。
しかし、せっかく手術に耐えて症状が緩和されたとしても、たいていは再発してしまうのです。
なぜなら、そうなってしまった「原因」が取り除かれていないからです。
抜け出せない負のスパイラル
そもそもの元凶であるズボラ筋や、動作のクセが取り除かれていないため、同じ症状をくり返してしまう!
原因とは、ズボラ筋であり、姿勢の悪化につながる動作のクセのこと。
手術が大成功して一時的に症状が消えたとしても、その人が日常生活に戻れば、また同じような体の使い方に戻ってしまいます。
そして、過去をなぞるように、同じ腰痛を発症するのです。
それは、腰痛に限った話ではありません。
股関節、ひざ、足首などの関節の痛みも、先天的な構造の欠陥などを除けば、やはりズボラ筋と、日常動作の悪いクセや悪い姿勢が原因です。
そこを対処しなければ、腰と同様に、変形性股関節症や変形性ひざ関節症などで手術を受けたとしても、やはり再発する可能性が高いのです。
では、どうすればいいのか?
まずは、1章でも説明したように、関節を支えるという大事な役割があるのに、サボりがちな筋肉であるズボラ筋を鍛えてください。
いきなり、体に染み込んだ動作のクセや、悪い姿勢を正そうとしても、絶対にうまくいきません。
ズボラ筋がしっかりと働くようになれば、関節の安定性や柔軟性も戻ります。
その状態こそが、体の使い方を見直す大チャンス!
動作の悪いクセ、悪い姿勢からスムーズに脱却できて、正しい体の使い方や、正しい姿勢を取り戻すことができるのです。
昨今は「人生100年時代」といわれています。
老後には2000万円も必要だと話題になり、お金の心配ばかりが注目されがちです。
しかし、どれだけお金を蓄えたとしても、体が健康でなければ意味がありません。
せっかくの貯金も医療費にどんどん溶けていくだけでなく、関節痛のせいで歩くことが困難になれば、外出するのもおっくうになることでしょう。
体を動かさないので、ズボラ筋がますますズボラになり、体の痛みが強くなる――という悪循環に陥ります。
そんな悲惨な老後にしないためにも、今から足踏み体操に励んで、お金だけでなく、健康も貯金しましょう。
では次項から、どのズボラ筋が、どの関節を支えているのか。
各関節の痛みなどに対して、どのズボラ筋を鍛えればいいのか。
そのほかに期待できる効果など、詳しく説明しましょう。