腰痛は「心配のない腰痛」と「けがや病気が原因の腰痛」に分けられます。医学博士である松平 浩(まつだいら・こう)先生に、医療機関を受診すべきか判断するチェック方法を教えていただきました。
心配のない腰痛が約85%を占める
「腰に痛みを感じて医療機関を受診した人のうち、『けがや病気が原因の腰痛』だと特定された人は、全体の約15%だといわれています」と松平先生は話します。
この約15%に含まれる腰の病気には、座骨神経痛を伴う「腰部脊柱管狭窄症」や「椎間板ヘルニア」などがあります。
残りの約85%の人は、病気とは関係のない「心配のない腰痛」だと考えられています。
「『心配のない腰痛』とは、痛みが続く慢性の腰痛や何度も繰り返して起こる腰痛などが含まれます。整形外科でX線やMRIなどの検査をしても異常が見つからず、原因を特定することが難しい場合があります」
腰に痛みがあり不安を感じている人は、松平先生が提案する下記のチェックリストを行ってみましょう。
該当する項目があるときは、整形外科や内科などの受診をおすすめします。
腰痛で受診した人の85%は「心配のない腰痛」
<心配のない腰痛(85%)>
・慢性的な腰痛
・体操で改善できる
<怪我や病気が原因の腰痛(15%)>
・けがや病気が原因の腰痛。もし、以下の症状が一つでもあるときは、医療機関を受診してください。
□ 朝、起き上がるときに背中や腰に痛みが出始めた
→骨粗鬆症の可能性
□ 転んだり尻もちをついた後に痛くなった
→骨折の可能性
□ お尻からひざ下まで痛みやしびれを感じる
→脊柱管狭窄症、椎間板ヘルニアの可能性
□ 尿が出にくく、性器周辺や肛門が熱くなる
→重症の脊柱管狭窄症、椎間板ヘルニアの可能性
□ 足に力が入らず、つま先やかかとで歩きにくい
→重症の脊柱管狭窄症、椎間板ヘルニア、脳や脊髄の病気の可能性
□ 寝ていても痛く、鎮痛剤を使っても改善されない
→がんの転移、背骨の感染症などの可能性
「心配のない腰痛」は、前かがみの姿勢から生じる
普段の生活で机に向かって本を読むときや、台所で食器洗いをするときなどは、前かがみの姿勢になりやすいです。
「心配のない腰痛」は、この前かがみの姿勢によって痛みが生じることがあります。
「前かがみの姿勢では、重心が前にかかります。椎間板の前方が椎骨に押されて、椎間板の中央にある『髄核』が後ろに移動します。そのため、腰に痛みやだるさを感じる場合があります」
と松平先生。
また、前かがみの姿勢をとることで、背中の筋肉が緊張して硬くなります。
これが原因で筋肉に疲労がたまり、腰痛として感じるようにもなります。
取材・文/松澤ゆかり