最近、疲れやすい、かぜが治りにくいと感じること、増えてきてません? それ、年齢の問題だけでなく、あなたの「姿勢の悪さ」が原因かもしれません。そこで、医学とフィットネスの観点から、正しい姿勢によって健康をもたらす治療法を考案した鍼灸師・岩井光龍さんの著書『1分で姿勢がよくなる!』(あさ出版)から、「姿勢と健康の関係」を連載形式でお届けします。
頚椎のゆがみは、脳幹の機能低下をもたらす
人の頭の重さは約5キログラム。首はこれだけの重さを支えているわけですが、首を前傾させるほどその負担は増していき、45度傾けると4倍程度の負荷がかかると言われています。
あなたがスマートフォンをのぞき込みながら、駅の階段を下りている姿を想像してみてください。この時あなたの首には20㎏以上もの負担がかかっています。
こんな姿勢を続けていれば、筋肉は硬直して血流も悪くなり、首や肩がこってもおかしくないと思いませんか?
血流が滞れば、脳にも影響が出てきます。酸素不足、栄養不足でミトコンドリア(細胞の発電所と呼ばれる器官)でのエネルギー生産能力も低下し、脳の働きが悪くなります。
頸椎の一番上(第1頸椎)あたりで脊髄は、脳幹とつながっています。脳幹は大脳の付け根にあたる部分で生命活動に直結した機能を担っています。その役割は、心臓の拍動、血液循環、ホルモン分泌、体温や呼吸などの生理機能をコントロールすること。まさに生命活動の中枢です。脳幹の機能停止は死を意味します。
プロレスファンの方なら、「延髄斬り」という技をご存知でしょう。これはアントニオ猪木さんが考案した技で、首の後ろ側に衝撃を与えることで、相手の隙をつくことが狙いです。脳幹の付け根にある延髄は急所ですから、ここを攻撃されると一時的に呼吸器や循環器などの機能が阻害され、脳震盪を起こしたり、手足に力が入らなくなります。
プロレス技なら一瞬気を失うくらいですみますが、交通事故などで頸椎損傷を起こした場合は致命傷となりかねません。
上部の頸椎は、それほど大事な部分を守っているわけですから、ここがゆがむと体全体の機能が低下してしまいます。脳幹は、自律神経系、内分泌(ホルモン)系、免疫系、脊髄筋骨系の相互作用によるホメオスタシス(生体の恒常性)の中枢です。脳幹の機能低下は、体中に弊害をもたらします。脳幹の衰えが、脊柱にゆがみをもたらす
頸椎のゆがみは脳幹の機能低下を招きますが、その逆現象も起こります。つまり、脳幹が衰えることで頸椎や脊柱がゆがんでくるのです。
これはどういうことかというと、脳幹の振動リズムが狂うことで頸椎バランスが崩れ、その連鎖が脊柱全体に及んでいくということ。とても微小ですが、脳幹は常に振動しています。脳幹が活性化してうまく機能していれば、その振動は一定のリズムを刻みますが、機能が衰えるとその振動リズムが崩れてしまうのです。
[頸椎のゆがみ]→[脳幹の機能低下]→[脊柱のゆがみ]→[・・・]
このような悪循環が続くと、健康が損なわれる一方です。そんな状況から脱するために、第1頸椎と第2頸椎のバランスを施術で整えると、脳幹が活性化して背中全体のゆがみも解消されていきます。それでも、普段の姿勢が悪いままだとまた元に戻ってしまうでしょう。だから、よい姿勢を習慣にすることは、とても大切なのです。
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