「大動脈解離」になると、血管はこのように変化していく

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一般的に高血圧などの生活習慣病を抱える人は、心臓の血管が詰まる心筋梗塞のリスクが高いといわれます。でも、高血圧の人が注意しなければいけない病気には、大動脈解離もあるのをご存じでしょうか。著名人の急逝で大動脈解離が原因と報じられることがありますが、突然死にもつながる怖い病気です。帝京大学医学部附属病院心臓血管外科診療科長の下川智樹先生にお話しを伺いました。

前の記事「発症から3日で半数が亡くなるといわれる「大動脈解離」とは?(1)」はこちら。

 

コブの破裂、臓器へ供給する血液の遮断が命に関わる

大動脈解離は、高血圧と動脈硬化に関係しています。暖かい部屋から急に寒い部屋に行ったりすると、血圧が急に上がることがありますね。血圧が上がると血管の壁に圧力がかかり、動脈硬化の進んだ血管はその圧力に耐えられず、血管内膜の一部が破れるといったことが起こるのです。そこへ流れ込んだ血流によって、本来の血液の通り道がふさがれて血液供給が阻まれるという事態を招きます。

「内膜から入り込んだ血液によって、外膜が膨らんでコブのようにもなります。このコブが、枝分かれしている別の細い血管を圧迫して血流を止める、あるいは、コブが破裂するようなことも起こります。一方で、大動脈解離と関係なく、コブの生じる大動脈瘤もあり、いずれも胸痛で発症するためこれらを総称して急性大動脈症候群と呼んでいます」と下川先生。

解離で血流の一部が圧迫されると、臓器へ血液を届けられなくなり命に関わります。救急搬送された場合には、緊急手術などの治療が必要です。
「大動脈症候群の状態や部位にもよりますが、人工血管に置き換える手術が必要になります。また、血管内からステントグラフトという筒状の医療機器を患部に置く治療法もあります」。

治療が功を奏せば元の生活に戻ることは可能です。でも、大動脈症候群にならないに越したことはないでしょう。

 


あなたは大丈夫?

大動脈の健康度チェック!

□近親者に大動脈瘤になった人がいる
□近親者に心臓病になった人がいる
□心臓病の治療を受けている
□糖尿病の治療を受けている
□高血圧である
□コレステロール値、中性脂肪値が高い
□声が出にくかったり、かすれてしまうことがある


大動脈に異常があった方は、上記のような症状に悩まされている方が多いことが分かっています。当てはまる項目がある方は十分な注意が必要です。

 

大動脈ってどこにあるの?
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心臓から出て胸部、腹部に至る体の前後の中心を走る最も太い血管。太さは胸部で直径約3cm、腹部でも約2cmもあります。

 
大動脈解離になると、血管はどのような状態になる?

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全身に血液を送る大動脈の血管壁は、内膜、中膜、外膜の三つの層から成り立っています。

 

 

「大動脈解離」になると、血管はこのように変化していく 1804p085_03.jpg血管の動脈硬化が進んでいると、血圧が上昇したときに内膜の一部が裂けることがあります。

 

 

「大動脈解離」になると、血管はこのように変化していく 1804p085_04.jpg内膜の裂けた部分から血液が流れ込み、血管壁に血液がたまることで血管壁が膨らんでいきます。

 

 

「大動脈解離」になると、血管はこのように変化していく 1804p085_05.jpg血管壁の膨らみは、血管内を圧迫して血流を悪くし、血管の外側ではコブのようになります。

 

 

「大動脈解離」になると、血管はこのように変化していく 1804p085_06.jpg大動脈や枝分かれする動脈への血流を遮断し、さらには、膨らんだ血管壁が破裂してしまうのです。

構成/高谷優一 取材・文/安達純子

次の記事「「大動脈解離」の原因は高血圧と動脈硬化。生活習慣の見直しを!(3)」はこちら。

「大動脈解離」になると、血管はこのように変化していく
<教えてくれた人>
下川智樹(しもかわ・ともき)先生

帝京大学医学部附属病院心臓血管外科診療科長、主任教授。佐賀医科大学卒。榊原記念病院心臓血管外科医長などを経て2009年より現職。心臓血管外科専門医・修練責任者でもあり、心臓大動脈手術を多数手がけ、最先端のロボット支援下手術も行う。

 
この記事は『毎日が発見』2018年4月号に掲載の情報です。

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