発症から3日で半数が亡くなるといわれる「大動脈解離」とは?

発症から3日で半数が亡くなるといわれる「大動脈解離」とは? pixta_32289996_S.jpgこれまで感じたことのない激痛を伴ったら要注意

一般的に高血圧などの生活習慣病を抱える人は、心臓の血管が詰まる心筋梗塞のリスクが高いといわれます。心筋梗塞は、心臓に血液を供給する細い血管が詰まって血流が遮断されることで、心臓を動かす筋肉(心筋)が壊死(えし)して心臓が止まるもので命に関わります。でも、高血圧の人が注意しなければいけない病気には、大動脈解離もあるのをご存じでしょうか。著名人の急逝で大動脈解離が原因と報じられることがありますが、突然死にもつながる怖い病気です。

「大動脈は心臓から血液を送る重要な血管です。大動脈の壁は内膜(ないまく)、中膜(ちゅうまく)、外膜(がいまく)の3層構造で、内膜の一部分が裂けて血液が一気に血管壁内に流れ込むのが大動脈解離の特徴です。胸痛、腰痛、背中の痛みなど、これまで感じたことのないような激痛を伴い、大動脈の血流が止まる、あるいは、大動脈の破裂により、発症から3日間で半数の方は亡くなるといわれ、極めて危険な状態です」と下川智樹先生。

胸などに我慢できないほどの痛みを感じたときには、救急車を呼ぶのが何よりです。ただし、大動脈の裂け方が少しの場合は、一時的に激しい痛みを感じても治まってしまうことがあるそうです。痛みが治まっても、大動脈解離の状態は続き、血流が止まる、あるいは、破裂する危険は残りますので、早めに医療機関を受診しましょう。

 

●ご存じですか?「大動脈解離」のこと

「大動脈解離」ってどういうこと?
血管のいちばん内側にある内膜に亀裂が入り、そこから血液が一気に流れ込み、次の中膜が裂けてはがれる。

 

「大動脈解離」の発症年齢は?
70歳代が最も多い
ついで80歳代、60歳代。40歳代までは少ないが50歳代になると増加。


「大動脈解離」の自覚症状はあるの?
範囲が広がってくると激痛
ごく小さい範囲で血管がはがれるときは無症状のことも
大動脈のどの部位が裂けるかによって、痛みが発生する箇所が異なり、痛みの部位も移動していく。


ちなみに、太くて重要な血管・大動脈をむしばむ主な二つの疾患は?

・大動脈解離
血管内壁の一部に亀裂が入り剥離を起こしてしまう状態。大量の出血や、血液の内膜が剥がれて他の動脈をふさぐことで局部的な貧血状態になる。

・大動脈瘤
血管の直径が1.5~2倍くらいになり、コブができる。大動脈のどの部位にもでき、できた場所によって「胸部」「胸腹部」「腹部」と区別される。コブが破裂する、その前兆として他の臓器が圧迫されて違和感や痛みの原因となる。


この二つは必ずしも別々に起こるのではなく、非常に密接な関連があります。

構成/高谷優一 取材・文/安達純子

次の記事「「大動脈解離」になると、血管はこのように変化していく(2)」はこちら。

発症から3日で半数が亡くなるといわれる「大動脈解離」とは?
<教えてくれた人>
下川智樹(しもかわ・ともき)先生

帝京大学医学部附属病院心臓血管外科診療科長、主任教授。佐賀医科大学卒。榊原記念病院心臓血管外科医長などを経て2009年より現職。心臓血管外科専門医・修練責任者でもあり、心臓大動脈手術を多数手がけ、最先端のロボット支援下手術も行う。

 
この記事は『毎日が発見』2018年4月号に掲載の情報です。

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