腰痛は多くの日本人を悩ませている病気で、その有訴者率(自覚症状のある人の割合)は男性で1位、女性で2位を占め、年齢が高いほど有訴者率も上がります(平成25年国民生活基礎調査)。それほど腰痛は身近な悩みなのです。
ヨーロッパでは"魔女の一撃"と言われる「ぎっくり腰」。個人差はありますが、何かの拍子で腰に"グキッ"とした痛みが走り、直後は日常生活もままならないことも。
この痛み、どのように対処したらいいのでしょう。予防法はあるのでしょうか。そこで日本脊椎脊髄病学会認定脊椎脊髄外科名誉指導医でもある東京都立多摩総合医療センター院長の近藤泰児先生にお話を伺いました。
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長時間座り続けることも腰への負荷になります
二足歩行をする人間は、立っているだけ、歩いているだけでも腰に負荷がかかっています。
椅子に座った姿勢は、立った姿勢の1.4倍の圧力が椎間板(ついかんばん)に加わります。ぎっくり腰は腰への負荷の積み重ねにより発症する病気です。オフィスなどで長時間座っていなければならない場合はそれだけで腰に負担がかかってしまいます。そのため、できるだけ腰に負担がかからない椅子を選び、正しい姿勢で座ることが肝心です。
椅子は、体に合った背もたれ付きのものを使ってください。背もたれに体重を預けられる方が、腰への負担が軽減されるからです。かといって、体重を後ろにかけすぎてお尻が椅子からずり落ちてくるような体勢ではいけません。
以下を参考に、腰に優しい座り方を心掛けましょう。
◆椅子の正しい座り方
・頭が前に出すぎて前かがみにならないよう、あごを引いて座る。
・おなかを引っ込めて背筋を伸ばす。
・お尻は椅子に深く、腰を真っ直ぐに立てて座る。
・ひざの角度が90度になるように座り、足裏全体が床に接する高さにする。
・腕はひじ掛けで支える。
同じ姿勢を長時間続けるのは、腰にとって望ましくありません。ときどき立ち上がって伸びをするなどして椎間板(ついかんばん)を動かしましょう。
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取材・文/ほなみかおり
近藤泰児(こんどう・たいじ)先生
東京都立多摩総合医療センター院長、日本脊椎脊髄病学会認定脊椎脊髄外科名誉指導医、日本整形外科学会認定専門医・認定脊椎脊髄病医。1979年東京大学医学部卒業。都立駒込病院整形外科骨軟部腫瘍外科部長、東京都立府中病院(当時)副院長などを経て、2013年より現職。著書に『腰椎椎間板ヘルニア・腰部脊柱管狭窄症 正しい治療がわかる本』(法研)、『わかる!治す!防ぐ! いちばんやさしい腰痛の教科書』(アーク出版)など。