大腸がんの罹患率が低い理由は...⁉ 長寿の町・京丹後市の「腸のチカラ」

京都府北部の丹後半島に位置する京丹後市は、100歳以上の人口の割合が、全国平均の約3倍にのぼる長寿地域。なぜこれほどまでに長寿の人が多いのか、その理由を解明する取り組みが行われています。京丹後市に住む高齢者の長寿の秘訣を探る疫学調査「京丹後長寿コホート研究」で、腸内フローラの研究を担当している京都府立医科大学消化器内科学教室准教授の内藤裕二先生にお話を伺いました。

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大腸がんは京都市内の半分!その理由は酪酸の力?

京丹後市の人々の腸がいかに健康かーそれを裏付けるのが、大腸がんの罹患率です。

京都市内と比べると、京丹後市での大腸がんの罹患率は、実に半分にとどまっています。

これほどの差が生まれるのはなぜなのでしょう?

内藤先生は京丹後市の高齢者の腸内フローラがどのような特徴を持っているのかを知るために、京都市内の高齢者の腸内フローラとの比較調査を行いました。

そこで明らかになったのは、京丹後市の高齢者の腸内フローラには、「酪酸菌」という細菌が有意に多いことです。

酪酸菌とは、ビフィズス菌や乳酸菌などと並ぶ有用菌の一種。

酪酸菌が作り出す酪酸には、腸内フローラを改善させる働きがあることが知られています。

さらに、酪酸は免疫系や神経系、内分泌系など全身の健康にも影響を与えることが報告されており、その優れた働きから〝長寿菌〟と呼ばれることもあります。

京丹後市の高齢者の腸内に酪酸菌が多い理由はいまも解析中とのことですが、「この地域に受け継がれてきた昔ながらの食生活が関係していることは間違いないでしょう」と内藤先生。

つまり京丹後市では、健康長寿と関わりの深い酪酸菌が多い腸内フローラが、親から子へ、子から孫へと、連綿と受け継がれてきたのです。

このことは、人生百年時代を生きる私たち日本人が健康で長生きするための、重要な示唆を与えてくれています。

内藤先生によれば、いまの日本人の腸内環境は危機に瀕していて、食生活の変化によって腸内環境が悪化し、大腸がんや潰瘍性大腸炎などの腸の病気が、年々増加しています。

気になるのは、健康長寿の町である京丹後市においても、若い世代の腸内環境が変化していること。

「腸内フローラをいい状態に保つには、多様な菌がバランスよく共存することが重要ですが、京丹後市に住む20代の人の腸内フローラは多様性が低下し、腸内環境が悪くなっています」と内藤先生。

京丹後市も最近では欧米化が進み、人々はいろいろな食べ物を口にするようになりました。

その便利さと引き換えに、腸の健康が損なわれつつあるのです。

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女性に多い大腸がん。予防は内視鏡検査で

日本における大腸がんの増加の背景にあるのは、こういった食生活の変化だけではありません。

実は日本のがん対策の遅れも、このような事態を引き起こしている一因だと、内藤先生は指摘します。

「実際にアメリカでは、大腸がんは右肩下がりに減少しており、いまでは人口が日本の倍以上であるにもかかわらず、大腸がんの死亡者数は日本より少なくなっています。違いは、早期発見ができているかどうか。アメリカでは大腸内視鏡検査を50歳で行うことが義務付けられていますが、日本では内視鏡検査そのものが広まっておらず、その差がこの数字に表れてしまっているのです」

逆にこのアメリカの状況は、大腸がんの早期発見に内視鏡検査がいかに有効か、ということを示しているともいえます。

「たった1回受けるだけでも、リスクは大きく減らせます。40~50代になったら、まずは一度、大腸内視鏡検査を受けることをおすすめします」(内藤先生)


早期発見には大腸内視鏡がおすすめ

大腸内視鏡は、肛門から内視鏡を入れて、腸の中を直接観察する検査。

ポリープや炎症疾患などを見つけ、診断する。大腸がんを早期の段階で見つけることが可能で、小さければ検査中に切除することもできる。
● 受けるタイミング/40歳以上は、1度は受ける。その後は、異常がなければ5~10年に1回。

●費用の目安/2〜3万円程度

【いますぐ受けた方がいい人】

・便秘と下痢を繰り返す
・便が細くなった
・残便感がある

取材・文/佐藤あゆ美 イラスト/赤池佳江子

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内藤裕二(ないとう・ゆうじ)先生

京都府立医科大学消化器内科学教室准教授。京都府立医科大学卒業。消化器専門医として診療にあたる一方、最新医学に精通し各地で講演も。京丹後市の長寿研究では腸内フローラについて調査。著書に『消化管(おなか)は泣いています』(ダイヤモンド社)など。

この記事は『毎日が発見』2020年1月号に掲載の情報です。

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