自分の体が思うようにならない...、そんな違和感がありませんか? 女性は特に40代以降、更年期や閉経という新しいモードに入っていく過程で、なんらかのトラブルはつきものです。そこで、『マリ先生の健康教室 オトナ女子 あばれるカラダとのつきあい方』(常喜眞理/すばる舎)より、女性家庭医である著者が提案する、それぞれの年代で起こる女性の体の変化への「上手な対応策」を、連載形式でお届けします。
脳の老化と環境の変化による「喪失感」が引き金に
ここではメンタルの問題、うつ病を取り上げたいと思います。
最近では若者のうつ病や自殺の問題がよく取り沙汰されますが、元来、うつ病は高齢者に多い病と言われていました。悪化すると自殺の原因にもなる怖い病気です。うつ病の症状は個人差もありますが、以下が代表的なものです。
・眠れない、眠りが浅い
・憂うつな気分に支配され、わけもなく悲しい、何の希望も持てない
・興味や喜びの感情を失い、何をしても楽しくない、何かをしたい気持ちもなくなる
・食欲がなくなる
・性的な関心や欲求が低下する
・人と会うのがうっとうしく、自分の世界に引きこもり、外との交流を断つ
心の病は原因を特定するのは難しいものですが、中高年からのうつ病に関しては、脳の老化やホルモンの減少や乱れ、環境の変化による「喪失感」がよく言われています。
まずひとつは脳の老化。
特に視床下部の働きの低下が、大きく影響していると考えられます。視床下部は体の内外の刺激を感じ取り、脳内で整理した上で、体の各器官にどう反応するかを指令します。
この働きが低下することで、外からの刺激に、以前のように素早く反応できなくなります。
"感じる力"の低下とも言えるかもしれません。
たとえば若者が爆笑しているお笑い番組が、どこが面白いのかわからないといったようなことです。
また性ホルモンや成長ホルモンの分泌量の減少、あるいはバランスの崩れも心の有様に影響を与えます。性ホルモンは「心の若さ・元気」の素でもあるので、楽しさを感じにくくなりがちです。
若い頃はくだらないことでも笑えたのに、なかなか笑えなくなったりします。
そして疲労を回復してくれる成長ホルモンの低下により、体が疲れやすくなり、このことも心から活力を奪っていきます。
もうひとつの環境の変化ですが、中高年とは生活サイクルが大きく変わる時期でもあります。
退職することで、それまでの人間関係、交友関係が一変することもあるでしょう。仕事ひと筋だった方は、急に周りから人がいなくなったように感じるかもしれません。
専業主婦であれば子どもたちが巣立つと、自分を頼る人がいなくなったことに寂しさを感じることもあります。そして歳を重ねると、親や友人など、身の回りの大切な人が次々と亡くなっていきます。
これに加えて、体全体のおとろえがはっきり表れる時期でもあります。以前は当たり前にできた動作や運動ができなくなり、少なからずショックを受けることがあります。
こうしたさまざまな「喪失感」が、将来の希望や自分の存在価値に疑問を抱かせ、中高年のうつ病の引き金になるとも言われています。真面目で責任感の強い人ほど、なりやすい傾向があります。
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