自分の体が思うようにならない...、そんな違和感がありませんか? 女性は特に40代以降、更年期や閉経という新しいモードに入っていく過程で、なんらかのトラブルはつきものです。そこで、『マリ先生の健康教室 オトナ女子 あばれるカラダとのつきあい方』(常喜眞理/すばる舎)より、女性家庭医である著者が提案する、それぞれの年代で起こる女性の体の変化への「上手な対応策」を、連載形式でお届けします。
甲状腺もあばれだす!? 成人女性の10人に1人が発症しています
あれ、これが更年期かしら?と思ったら、実は違う病気の場合もあります。その最たるものが甲状腺の病気です。
首の前側中央、喉仏の下あたりにあるのが甲状腺。
ふだんは意識することのない臓器ですが、ここから分泌される甲状腺ホルモンは、体の発育や代謝機能に大きくかかわっています。
甲状腺の病気は女性に多く、たとえば甲状腺ホルモンの分泌が少なくなる病気として知られる「橋本病」は、女性の約10人に1人が発症すると言われています。
特に中年女性に多く見られ、実は意外に身近な病気なんです。
甲状腺ホルモンの分泌量に異常が起こると、次のような症状が表れます。
甲状腺のトラブル
●甲状腺ホルモンが多すぎる場合
・動悸がする
・手が震える
・疲れやすい
・暑がりになる、発汗が激しくなる
・イライラする、不眠
・体重減少
・下痢
●甲状腺ホルモンが少なすぎる場合
・ボーッとする、無気力
・むくみ
・声がかすれる
・寒がりになる
・便秘
症状を読んで、「更年期の症状に似てる?」と思いませんでしたか?
実際に症状の大半は、更年期による不定愁訴に近いものが多く、単純に「更年期だから仕方がない」と思っていたら、実は甲状腺の異常だった、という例が少なくありません。
甲状腺ホルモンは、更年期対策のページで説明した自律神経の交感神経のほうに働きかけます。つまり内臓の動きを活発にすることで、体のバランスをとろうとするのです。
ですから多すぎるとイライラしたり暑がりになったり。
逆に不足すると無気力になったり寒がりになったりします。甲状腺ホルモンは、ほどほどが大事というわけです。
甲状腺機能の異常は血液検査でわかりますので、更年期と決めつけず、気になったら医師の診察を受けることをおすすめします。
代表的な甲状腺の病気
【橋本病(慢性甲状腺炎)】
甲状腺が腫れたり、甲状腺ホルモンの分泌が低下したときに症状が出ることもありますが、比較的症状に気づきにくい病気です。
家族に同じ病気の方がいるとかかる確率が増えますが、たとえ家族にいなくても、私は更年期以降の女性の方には、年1回、甲状腺ホルモンのチェックをすることをおすすめしています。
甲状腺ホルモンが低下している場合には投薬治療が行われます。
機能低下を放置すると心臓を傷めたり、命にかかわったりすることもありますので、甘く見てはいけません。
【バセドウ病】
甲状腺が腫れたり、ホルモンが過剰に出て症状が出ます。若い女性に多いのですが、中年期以降でも生じることがあります。動悸、ふるえ、発汗、体重減少といった症状が現れます。
【亜急性甲状腺炎】
一時的に炎症が悪化し、発熱や喉のあたりに痛みが出るなど、もっとも体の変調を感じやすい甲状腺の病気で、かぜと間違えることもあります。甲状腺ホルモンが過剰に出て症状が出ます。薬を飲むことで完治しますが、ここから慢性である「橋本病」につながる場合もあるので注意が必要です。
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