定期誌『毎日が発見』の森永卓郎さんの人気連載「人生を楽しむ経済学」。今回は、「移動手段の『2413』」についてお聞きしました。
自転車で2回、転倒してしまった...
高齢期を迎えても、大都市に住んでいる限り移動手段の確保は、大きな問題になりません。
電車やバスが数分おきに運行されていて、タクシーも手を上げればすぐに停まってくれるからです。
ただ、田舎やトカイナカに住んでいると、そうはいきません。
電車は1時間にせいぜい数本で、バスの運行はもっと間隔が空きます。
買い物や医療機関への移動といった日常生活に自ら操る移動手段の確保が不可欠になるのです。
私が買い物や畑に出かけるのにいちばん多用しているのは、2輪の自転車です。
畑は歩いても数分のところにあるのですが、いろいろ運ぶものがあったり、時間を節約するために、自転車を利用しています。
ただ、私は高齢期に最初に乗れなくなるのは、自転車だろうなと予想しています。
私はまだ64歳ですが、畑の水撒きのために、20kgの水が入ったポリタンクを持ち上げて荷台に載せるのは、結構な重労働ですし、運転中にちょっとでもバランスを崩すと、転倒のリスクがあります。
お恥ずかしい話ですが、すでに2回ほど自転車を転倒させてしまいました。
倒れる自転車からすぐに飛び降りて、ケガはしなかったのですが、体の柔軟性が失われたり、筋力が衰えたら、自転車は難しくなると思います。
正直言って、あと5~6年したら、自転車で重い荷物を運ぶのをあきらめないといけないかもしれません。
自転車の次に多用しているのが、4輪の軽乗用車です。
エンジンの力で走るので、自転車よりも高齢まで乗り続けることができると思います。
実際、私の周囲の高齢者をみていても、80歳くらいまでは問題なく運転しています。
もちろん、大都市の都市高速のように、俊敏な判断と操作が求められるような道路での運転は難しくなると思いますが、郊外や地方の車が少ないところでは、大きな問題はないと思います。
ただ、乗用車はスピードが速く、一つ間違えば凶器にもなりかねないので、判断能力と運転能力が確保できていることが前提です。
実際に運転免許証の更新の際に70歳以上の場合は高齢者講習が必要になりますし、75歳以上は高齢者講習の前に認知機能検査を受ける必要があります。
この検査で、記憶力や判断力が「少し低くなっている」や「低くなっている」と判定された人は、通常よりも長い高齢者講習を受ける必要があり、「低くなっている」と判定された人は臨時適性検査または診断書提出命令が出されます。
ここで認知症と判断された場合は、運転免許の停止または取り消しの対象になります。
警察庁によると、2016年に運転免許証の更新の際に認知機能検査を受けた75歳以上の高齢者約166万人のうち5万1千人は認知機能が低下し、認知症の恐れがある第1分類と判定されたそうです。
比率で言うと3%程度ということになりますが、75歳以上になると運転が難しくなる人が出てくることは事実です。
「1輪」と「3輪」が大活躍
そこで私が最近活用するようになったのが、運搬用1輪車です。
建築現場で土や砂利などを運ぶために使われているのを見かけたことがあると思います。
一般的には「ネコ」と呼ばれているのですが、語源は諸説あって、よく分かりません。
私は畑に肥料を運んだり、刈り取った雑草を廃棄場所に持っていったり、家庭用ごみを集積場に持っていくのに使っています。
ネコの最大のメリットは、価格が安いことです。
プロ用の本格的なものは数万円するのですが、家庭用であれば、ホームセンターで、3千円程度で購入することができます。
それで実用上はまったく問題ありません。
バランスのとり方にちょっとしたコツが必要ですが、とても便利な道具です。
そして、私が最近、とても重宝しているのが、3輪自転車です。
私が使用しているのは、後輪が2輪のタイプなのですが、自転車のように転倒する心配がほとんどありません。
また、何よりうれしいのは、荷台の高さが低いので、重いものをそれほど持ち上げずに積み込むことができることです。
最近、畑に水の入ったポリタンクを運ぶときは、ほとんど3輪自転車を利用しています。
3輪自転車の最大のデメリットは、自転車と比べるとスピードが出ないことです。
自転車と比べて3割はスピードが落ちると思います。
しかし、スピードが遅いということは、それだけ安全ということですから、高齢期の移動手段としては、むしろ望ましいのかもしれません。
ただ、3輪自転車は自転車と運転の仕方が少し異なります。
カーブを曲がるときにはハンドルを切るというより、体を傾けて曲がらないといけないのです。
そのため、運転にはコツを覚える必要があります。
高齢期になって3輪自転車を購入して、結局使わない人が多いのは、コツを覚えていないからです。
だから高齢期に入る前に、慣れておいた方が良いでしょう。
電動アシストや原付バイクの3輪車もありますから、一生付き合える移動手段になるでしょう。
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