「なんか自分が損してる気がする...」そんな気持ちになったこと、ありませんか?それは、あなたが相手に「NO」を言えていないからかもしれません。「大切なのは、自分と他人の間の境界線を知って守ること」という鈴木裕介さんの著書『NOを言える人になる』(アスコム)から、すぐに実践できる対処法をご紹介します。
常に競争と評価にさらされているうちに、人の中には自然と「競争に勝たなければダメ」「トップでなければ価値がない」といった価値観が植えつけられてしまう。
競争に勝ち、高い評価が得られたときには、自尊心や承認欲求、名誉欲が満たされるが、世の中には必ず「上には上がいる」し、心身の状態だって、いいときばかりとは限らない。
どんな超一流選手だって、永遠に勝ち続けることはできないし、どんなに強く見える人でも、人生のどこかで必ず「弱者」になる。
そして、競争に負け、評価が下がってしまうと、「自分はダメな人間だ」「自分には価値がない」などと思ってしまう。
実際には、競争に負けようが他人からの評価が低かろうが、その人が存在することそのものの価値とはまったく関係がないのに、つい混同してしまうのだ。
こういう話をすると、「他人は好き勝手言うものだ」「他人の評価なんか気にせず、自分の評価は自分で下せばいい」と思う人がいるかもしれないけど、自分自身に対する評価の基準が高すぎたら、やはり同じことだ。
特に、周りの大人たちから「出来のいい」兄弟と比べられたり、不当に低く評価されたりしてきた人、あるいは常に完璧であること、優秀であることを求められてきた人は、ありのままの自分、頑張っていない自分を肯定することができず、常にギリギリまで自分を追いつめてしまうことが非常に多い。
自己肯定感というのは、「完璧でなくても優秀でなくても競争に負けても、自分はこれでいい」「自分は自分であって大丈夫」という感覚のことだ。
自己肯定感が持てない人は、とても優しかったり、頑張り屋だったり、賢かったり、仕事ができたり、優れたところがたくさんあって、周りからの評価も高いのに、「自分なんて」が口癖だったりする。
ほかの人からすると「もう十分じゃない?」「それ以上、何を求めるの?」と思ってしまうし、下手すると嫌味だと思われかねないんだけど、本人は至って真面目。
そして、自分で自分のことを「OK」と思うことができない分、「優秀である」「成績がよい」といった評価を得て、他人から「OK」と言ってもらうことで、「自分に価値がある」ことを証明しようとするため、勉強や仕事にものすごくのめり込みやすい。
それこそ、狂乱的なまでの努力をするのだ。
勝つことだけで得られる満足感は限界がある
ところが、そんな人は、どれほどいい学校や会社に入り、重要なポストに抜擢され、成果を上げても、「嬉しい」「認められた」と喜ぶより、「なんとかノルマを達成できてほっとした」と思ってしまう。
喜びよりも、安心。
それも、束の間の安心にすぎず、すぐに「次はうまくやれるだろうか」「もっと優秀な人が現れて、自分の存在価値がなくなるんじゃないだろうか」といった不安にさいなまれる。
競争の世界の中で、評価のプレッシャーに常にさらされている間は、いつまでたっても「これでいいや」と思えないのだ。
ちなみに、お金や名誉、肩書き、家や車などの所有物のように、他人との比較によって満足感が得られるものを「地位財」、自由や健康、愛情など、他人と比べなくても満足感が得られるものを「非地位財」という。
このうち、競争によって手に入れられるのは地位財だけであり、非地位財は、競争や評価とは無縁のところで得ることができるものだ。
そして、「豪邸を建てた」「高級車を買った」といった地位財による幸福感は、非地位財による幸福感と比べて長続きしないことが明らかになっている。
地位財と非地位財は車の両輪みたいなものであり、地位財によって手に入る短期的な幸せも、もちろん否定しない。
ただ、人を長期にわたって本当に幸せにしてくれるのは、非地位財によって手に入る満足感だ。
だから僕は、「競争の世界との関わりを一度見直し、自分にとって適切な距離で関わること」は、幸せに生きるための、かなり重要な要件だと思っている。
競争をどれだけ楽しめるかは人による。
「たとえ負け続けても、勝負ごとが楽しくて仕方がない」という人は、好きなだけ関わればいいだろう。
でも、あなたがそういうタイプでないならば、ときには競争を楽しんだり、他人からの評価に喜んだり悲しんだりすることはあっても、それらはあくまでも「人生のスパイス」程度だと考え、自分自身の価値を判断する基準にしないほうが賢明だと思う。
そのうえで、競争や評価とは無縁な人または世界とのつながりを大事にすること。
自分の中の「欠損している部分」をそのまま受け入れ、愛してくれる人と出会えたら最高だ。
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