仕事で転勤や異動、自分や家族が病気を患うなど、人生の転機を迎える可能性が高い中年期。急な報せに焦るかもしれませんが、うまく乗り越えれば残りの人生を有意義に過ごすチャンスにもなります。そこで、『自分らしく生きる! 40代からはじめるキャリアのつくり方:「人生の転機」を乗り越えるために』(石川邦子/方丈社)から、女性が抱えるライフキャリアの悩みとその解決方法について、連載形式でお届けします。
ライフキャリアをどう考えるか
キャリア形成と家庭の両立に悩む方へ、特に女性に向けたメッセージが多くなりますが、どうか男性も「自分には関係がない」と読み飛ばさないでください。
なぜなら、パートナーがいらっしゃる方にとっては、相手のキャリア形成は、家族で協力して考える必要があります。
また、企業にお勤めの男性は、現在女性が置かれているキャリア形成における悩みを理解しておくことは大切です。
そして、これからの時代、出産や子育て、そして介護などは女性だけの役割ではなくなり、夫婦が協力していく必要性が増しています。
男性が育児・介護で休業することも、もっと増えてくるでしょう。
ライフプランとキャリアプランの両立、「ワーク・ライフ・バランス」を考えて働くことは、男女共通の課題です。
さて、多くの女性は、結婚や出産、転勤や昇進の際に、それによって起こる変化を考えます。
パートナーのキャリアへの影響や子どもの将来に与える影響が絡んでくるからです。
女性の相談者にありがちなのが、ご自身のこれまでの経験を過小評価しているケースです。
こうした方は、パートナーのキャリアや子どもの将来だけを優先しがちなのです。
もちろん家族の将来を考えることも必要ですが、それと同様に自分自身のキャリアをもっと大切にして欲しいと思います。
フェイスブックの最高執行責任者のシェリル・サンドバーグの著書『LEAN IN―女性、仕事、リーダーへの意欲』でも、女性リーダーがなかなか増えない最大の理由は、「女性が自分を過小評価してしまうことである」と書かれていました。
アメリカでさえ、そうなのです。
私も同じことを感じています。
近年は「女性活躍推進」をテーマにした講演のご依頼が増えましたが、そこで出会う女性が「自分にはたいした経験も実績もない」と考えていることがよくあります。
実際、改めてお聴きしたその女性たちの経験は、どれも素晴らしいものでした。
しかし、ご自分を過小評価しているために、いざ転機が訪れたとき、自分のことよりパートナーやお子さんを優先してしまいます。
そして、数年後に後悔することになってしまう......。
きちんと自分のキャリアも周囲の人のキャリアも考えて、そのうえで納得する選択をして欲しい。
自分のことも一緒に土台に乗せて、時間軸の中で将来を考えてみて欲しいと思います。
たとえば、このように考えてみてください。
「今はいったんパートナーの転勤についていくけれども、○年間くらいのはずだから、その間は派遣で○○の経験を積んで、戻ってきたときのキャリアにつなげていこう」
「今のプロジェクトが終わるまでは、夫に単身赴任してもらって、経験と実績を得てから後で赴任先に行こう」
「まずは産休を取って、育休期間をどれくらいにするかよく相談して、時短勤務等会社の制度と社外のサポートがどれくらい得られるかよく検討をして、最終的に決めよう」
というように、現在と将来の両方を考えてみてください。
今は育児で忙しくても、子どもは確実に育っていき、ご自分の手を離れていくときが訪れます。
目の前のことだけに捉われず、将来を考えて、そこから逆算して今をどう過ごすのかを決める視点を持つことが大切です。
そのためにも、できれば転機が訪れる前に、ご自身のキャリアを主体的に考える機会を持って、今までの経験を振り返って、誰かに経験を語り、肯定的に捉えなおす時間を持ってみてください。
準備をしておくことで、自分のことを後回しにしないで落ち着いて転機に向きあうことができ、良いターニングポイントにしていくことができます。
2006年に私が実施した「女性の就業意識に関する聞き取り調査」では、「入社後7年目までに成長の機会を経験した女性は、仕事の充実度が高まり、職業観に影響を与える」という結果が得られました。
成長の実感を持てていると、ライフイベントで選択をする場合に、自分のキャリアも含めて考えようとするのです。
20代で成長の機会を経験して、その経験を自信につなげ、自己評価を高め、自律的なキャリアを考えていって欲しいと思います。
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