仕事で転勤や異動、自分や家族が病気を患うなど、人生の転機を迎える可能性が高い中年期。急な報せに焦るかもしれませんが、うまく乗り越えれば残りの人生を有意義に過ごすチャンスにもなります。そこで、『自分らしく生きる! 40代からはじめるキャリアのつくり方:「人生の転機」を乗り越えるために』(石川邦子/方丈社)から、女性が抱えるライフキャリアの悩みとその解決方法について、連載形式でお届けします。
自分と向き合う期間 ニュートラル・ゾーン
転機が訪れたとき、その変化をそのまま受容して流れに身を任せる人と、その変化に立ち向かって主体的に乗り越えようとする人がいます。
もしあなたが主体的に乗り越えたい、自分で人生をコントロールできるように変わりたい、成長を実感できるように変わりたいと思うなら、それがどのような変化であっても、きちんと向き合い、自分がどのように変わりたいのかを考えることがとても大切です。
このとき、冷静に自分と向き合えるようになるまでには少し時間が必要です。
この時間を持つことがとても大事なのです。この自分と向き合う期間をアメリカの心理学者・ブリッジスのトランジション理論では、「ニュートラル・ゾーン(中立圏)」と言います。
この時期はひとりで思い悩むのではなく、キャリアコンサルタントに相談するか、周囲の信頼できる人に話を聴いてもらうことをお勧めします。
人に話すことで、「客観的な出来事(事実)」と、それに対して「どう感じたのか(感情)」を整理して、自分が「今後どうしたいのか(欲求)」に気づいていくことができるでしょう。
キャリアコンサルタントに相談してみたいけれど、どこで探せばよいのかご存知ない方も多いと思います。厚生労働省が運営する「キャリコンサーチ」というインターネット上のシステムを使えば、地域別に登録されているキャリアコンサルタントを検索して、依頼することができます。
また、「キャリアコンサルティング技能士検索サイト」でも探すことができます。ぜひご覧になってください。
私の転機における自己決定プロセス
私の場合、変化を受け入れるしかないと腹を括り、自分を試す機会と捉えることにしました。このように捉えることができると、「転機」もクライシスではなくチャンスになります。
前職で役員になったときに上司からもらった「あなたは、若いうちから肩書きを持って仕事をしてきたけど、将来会社の肩書きがなくなったときにでも、周囲の人に認められ信頼される人間になりなさい」というアドバイスが常に心にありました。
このまま会社に守られ続けていたら、肩書きをなくしたときに何もない自分しか残らない。「以前○○会社で役員をしていました」という過去の肩書きではなく、「私はこういう人間です」と胸をはって言える何かを持ちたい、自分の力が外の世界でどれだけ通用するのか試してみたい、と考えたのです。
その思いが、カウンセリングの勉強や大学でのキャリアの勉強につながっていきました。ニュートラル・ゾーンの私に付き合い、根気よく話を聴いてくれた上司のおかげで、次のように心を定めていきました。
・客観的な出来事(事実)
↓
現場から離れた役割に変わる
・どう感じたのか(感情)
↓
現場から離れたら自分の存在価値はなくなる。やりたくない。
惨めな思いをしてまで会社にしがみつきたくない
・どうしたいのか(欲求)
↓
辞めて、自分を試したい。カウンセラーという仕事に挑戦したい
これが、この転機への私の自己決定でした。
いかにも潔く転機を受け入れ克服していったように見えますが、実際には不安や後悔に押しつぶされそうにもなりました。不安とは、わからないものに対して持つ感情なので、わからないことを少しでも減らしていく必要があります。
ですから、不安を払拭するために目標を決めて、計画を立てるために必要なことを色々調べていきました。学校を探したり、独立するための方法を模索したり、立ち止まるのではなく、少しずつでもわからないことを潰していったのです。
当時の私は、かなり自己否定的になっていましたが、カウンセリングの勉強をすることで、自分の経験を少しずつ肯定的に振り返ることができたように思います。そして、新たな存在価値を見つけるため、新たな道に踏み出す計画を立てていくことができました。
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