仕事で転勤や異動、自分や家族が病気を患うなど、人生の転機を迎える可能性が高い中年期。急な報せに焦るかもしれませんが、うまく乗り越えれば残りの人生を有意義に過ごすチャンスにもなります。そこで、『自分らしく生きる! 40代からはじめるキャリアのつくり方:「人生の転機」を乗り越えるために』(石川邦子/方丈社)から、女性が抱えるライフキャリアの悩みとその解決方法について、連載形式でお届けします。
変化に対応できないとき
私にとって人生最大の転機となったのも、まさに中年期でした。
42歳の10月に、役員を務めていた会社の中で、役割に大きな変化が起こりました。当時、会社にも世代交代の波が押し寄せており、それまで現場のオペレーションを統括していた私に、そのラインから離れて事業統括に戻って欲しいという通達があったのです。
まったく予期しない出来事だったため、冷静に考えられませんでした。
私はもうこの会社に必要とされていない、今まで頑張ってきたことは何だったのか、自分の存在価値はなくなったのだと、否定的に受け止めてしまいました。
周囲は「今まで忙しかったのだから少しのんびりしたら」と言ってくれましたが、のんびりなんてまっぴらでした。15分刻みに入っていたスケジュール表が空欄だらけになりました。過重労働もつらいですが、仕事がない状態もつらいものです。1日ほとんど予定もないのに、夕方にどうでもいいような会議(自分がそう受け取っていただけでしたが)が入っているような毎日が続きました。夕方の会議のために立場上、朝早くから出勤しなければならず、夕方まで何をして時間をつぶせば良いかを考える、そんな毎日はとても耐えられなかったのです。
慢性的なキャリアストレスとして、ワーカーホリズムがあげられますが、まさしく仕事中毒の状態から、いきなり自由にできる時間を与えられても、どう使えばいいのかわからず、苦痛でしかありませんでした。
「こんな状態を続けるより何かはじめよう」という気持ちと「もう今さら遅い、そんなに若くない」という弱気の狭間で思い悩み、不安に押しつぶされそうになっていきました。
自分を振り返ることが選択肢を増やす
このときにキャリアカウンセリングを学んでいて、「中年期の課題」(自分の人生は本当にこれで良かったのかなどと思い悩みはじめる心理的な葛藤)を知っていたら、「自分の役割は、新たな役割に変わることだ」と、受け入れられたかもしれません。
そして、前向きに受け入れることによって、「組織の中で自分の新たな役割をどのように築いていくのか」を探す道も選択できたと思います。
転職や起業する以外に、組織の中で自分が次にやるべきことを見つけられていたら、「あんなに悩まなかったんじゃないかな?」、「違う選択肢もあったんじゃないかな?」とも思います。少なくとも、自分の居場所がなくなったような喪失感に苛まれることはなかったはずです。
退職してカウンセラーになる道に進んだ自分の選択が、良いとか悪いとかではありません。より広い視野で色々な選択肢の中から「自分がどの道を選ぶのか」を考える機会があったら、より多くの可能性を見つけられたのではないかと思います。
だからこそ40代になったら、仕事を含めた生活全般を一度見つめることをみなさまにはお勧めします。
若いうちは仕事中心でも、心も身体も何とかなるかもしれません。しかし、人はみな平等に老いていくのです。老いてなお輝くために、人生の折り返し地点で自分のために時間をつくってみてはいかがでしょう。
自分を振り返るために大切になるのは、次のようなことです。
1)過去と現状をじっくり見つめ直す
2)自己点検をして、抱える課題を整理する
3)課題を明確化したら、改善行動を起こす
4)新たな役割を受け入れる
5)前向きに人生の再設計をおこなう
不安定な時期である「転機」こそ、自分を見つめ直すための好機なのです。
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中年期にぶつかる仕事や人生におけるキャリアの悩みごとに解決法、対処法を5章にわたり解説