大切な人が亡くなったとき、悲しみと慌ただしさの中で多くの人は「何から手をつけていいかわからない」状態になるといいます。そこで、各分野の専門家が手続きやノウハウをわかりやすく解説した「まるわかり! もしもの時の手続き・相続 完全ガイド」(クロスメディア・パブリッシング)より、今から知っておきたい手続きや相続のノウハウを、連載形式でご紹介します。
未成年や認知症の相続人がいるとき
未成年や認知症の方などが相続人になる場合には、代理人や後見人を選ぶ必要があります。
相続に対する十分な判断力を持っていない、未成年者や認知症の方が相続人になった場合、遺産分割協議をはじめとしたさまざまな相続の手続きは代理人が行う必要があります。
●未成年者が相続人の場合
未成年者が相続人の場合、原則は、未成年者の法定代理人である親権者が代理人となって協議に参加します。
ただし、親権者が相続人となっている場合には、親権者と未成年者の相続人は利益が相反することとなるため、親権者の代わりに「特別代理人」を選任します。
そして選任された特別代理人が未成年者の相続人の代わりに遺産分割協議に参加することとなります。
特別代理人には資格は必要ありません。
通常は未成年者との関係や、利害関係の有無などを考慮して選びます。
特別代理人選任の申し立てができるのは、親権者、利害関係のある親族などで、一般的には未成年の子どもの叔父や叔母といった相続権のない親族、または弁護士や司法書士などが選任されます。
特別代理人は、どのような遺産分割協議をしてもいいということではなく、未成年の法定相続分以上の利益が確保される範囲内で、家庭裁判所の承認のもと遺産分割協議を行うことができます。
●認知症などで判断力を欠いた相続人の場合
相続人の中で認知症などになり、判断力を欠いた相続人がいる場合には成年後見人を選任する必要があります。家庭裁判所へ申し立てを行い、裁判所に成年後見人を選任してもらいます。
通常、申し立てには、誰が最も成年後見人にふさわしいのか、候補を書く欄があります。
身内を記載することが多いですが、相続の場合は財産が絡んでくることもあり、場合によっては身内が成年後見人になることを認められないというケースもあります。
そういった場合には利害関係のない弁護士・司法書士・社会福祉士などの第三者の成年後見人が選出されます。人選が適切かどうかの判断は裁判所が行います。
特別代理人や成年後見人などが行う遺産分割協議では、その未成年者や判断力を欠いた相続人に対して法定相続分以下の遺産の分割を行った場合、一般的に裁判所はその遺産分割を認めない傾向があります。
仮に、故人が遺言書をのこし、成年後見人のついた相続人に遺産は相続させないと意志を表明していたとしても、成年後見人は遺留分の請求は最低限行います。
もし、故人の意志を反映させるのであれば、成年後見人などがついた相続人に対して、一定の配慮をした遺言をのこさなければなりません。
成年後見人になった場合、自分の都合で勝手に後見人を辞任することが難しいため、選任には注意が必要です。
成年後見人を辞任するためには、家庭裁判所から正当な理由があると許可を受ける必要があります。
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