認知症になっても財産管理ができる!「家族信託®」とは?/法律のプロと相続を考える

pixta_26348249_S.jpg

これまで、相続の現場で起きている様々な問題を、相続、遺言、家族信託支援を専門にする司法書士・青木郷が、実際に事務所で経験した事例も交えながら紹介してきました。

第10回目の記事はこちら→「亡き父の家業を長男が相続。しかし弟たちは現金を要求し...

どの問題も、法律問題というよりは、高齢化に伴う判断能力の減退という「日本社会の問題」だったり、コミュニケーション不足から起きる家族同士の摩擦という「家族の問題」だったりがほとんどです。

これまで繰り返し、最高の相続対策とは「家族との濃いコミュニケーション」と伝えてきました。そして最近、この家族との濃いコミュニケーションを取りつつ、これまでになかった新しい認知症・相続対策の手法が注目を浴びるようになってきました。
それが今回ご紹介する「家族信託®」です。

「家族信託®」は認知症対策・相続対策の双方を兼ねることができる

これまで認知症等で判断能力が低下してしまった場合、原則として自ら自宅等の不動産の管理や処分をすることはできなくなり、後見制度を利用せざるを得ませんでした。
後見制度を利用すると、判断能力があるときに、どんなにたくさんの希望を持っていたとしても、すべての判断は家庭裁判所から選任される後見人の判断にゆだねられることになります。そのため、すべての希望をかなえてもらえるかはわからなくなります。

また、後見人の仕事は判断能力が低下してしまった本人の財産を消極的に守ることです。そのため、財産を組み換えたい、相続対策をしたいという財産の積極的な活用や防衛を考えている場合、後見人が付いた時点であきらめざるを得ませんでした。
ところが「家族信託®」の仕組みを使うと、認知症等で判断能力が低下した後の財産管理、さらにこれまで後見制度では難しかった相続対策等ができるようになります。

pixta_36045840_S.jpg
そもそも「家族信託®」とは、どのようなものか

家族信託®とは、財産管理の手法の一つです。
信頼できる家族に自分が持っている財産を、特定の目的に沿って管理してもらうことを指します。この特定の目的とは、例えば、「自分の老後の生活確保、介護等に必要になる資金の給付等」自由に決めることなどが挙げられます。管理をお願いされた家族は、この目的に従う形で不動産や預貯金等の財産の管理処分できます。

家族信託®自体は、財産の管理をお願いする人が、しっかりしている間にしかできません。しかし、一度実行してしまえば、その後に管理をお願いした人が認知症等で判断能力が低下しても、事前に設定した目的の範囲内なら、管理を任された家族が自由に財産を管理・処分できるのです。

pixta_20706891_S.jpgさらに、家族信託®では、管理をお願いした人が亡くなった後に、財産をどのように引き継がせるかも決められます。これは、遺言書と同じような効力があります。遺言書は、書いた本人が後からいつでも書き直すことができますが、家族信託®は、原則として勝手に破棄したり変更したりすることはできません。
このように、家族信託®とは、元気なうちに「約束」をしておくことで、判断能力が低下した時の後見的な機能と、亡くなった後の遺言書のような機能を持たせることができる制度なのです。

家族信託を行うために必要なこと

家族信託®は、財産の管理を任せる人と、管理を任される人、ともに判断能力がしっかりしていることが大前提になります。
管理をお願いする人は、自身の判断能力が低下した時に、どんなふうに管理をしてもらいたいのか、亡くなった後に財産を誰に引き継いでもらいたいのか、どうしてその人に引き継がせたいのかを、家族にしっかり話しておく必要があります。

家族信託®を使った新しい問題解決

家族信託®の登場により、これまで解決が難しかった多くの社会問題に取り組めるようになってきました。
長年かわいがってきたペットが、飼い主が亡くなった後も幸せに暮らしていけるようにするための信託、空き家問題に取り組むための信託、障害を抱える子供を守るための信託など、
さまざまな問題解決のために家族信託®を活用できます。

次回はいま注目を集めつつある、「ペット信託®」についてのお話をします。

pixta_41127271_S.jpg

※「家族信託®」はプロサーチ株式会社、「ペット信託」は河合保弘氏の登録商標です。

プロフィール写真.jpg青木郷(あおき・ごう)

司法書士・行政書士・家族信託専門士・家族信託コーディネーター。開業当初より、相続、遺言、家族信託に特化した業務展開を行ってきており家族信託組成支援を含む相続・承継の支援を行った家族は300世帯を超える。複雑で難解な相続手続きを明快に整理したうえで支援、またそのご家族に合った相続・承継対策を一緒に作り上げている。遺言書作成や家族信託組成支援については、お客様の希望や想いを丁寧にヒアリングしたうえで、税理士、不動産コンサルタント等と連携して支援を行っている。共著に『ファイナンシャルプランナーのための相続⼊⾨』(近代セールス社)、執筆・監修に『わかさ11⽉号 保存版別冊付録【⽼い⽀度⼿帳】』(わかさ出版)がある。

この記事に関連する「ライフプラン」のキーワード

PAGE TOP