老後2000万円不足の問題を耳にして、すぐに貯蓄や投資を始めようとした人、ちょっと待って!何となく始めてしまうと、大きな失敗につながります。そこで、2万3000人の家計を再生したファイナンシャルプランナー・横山光昭さんの著書『となりの家(うち)のざんねんなお金の話』(あさ出版)から、実際にあったお金の失敗エピソードを連載形式でお届け。動き出す前に、まずはお金の正しい知識を学びましょう。
家計の重荷になっている「通信費」
ここ数年、家計相談の現場で気づくことがあります。それは、スマートフォンやインターネット回線、固定電話の費用といった「通信費」の家計に占める割合が大きく、家計を圧迫している家庭が多いことです。
そうした家庭に限って、家族全員が大手キャリアのスマホを使っており、大損しているケースが少なくありません。
●太田さん(38歳/男性)の場合......
「毎月の家計が赤字になって困っています。何が原因なのでしょうか」
太田さんは、奥さんと中学生の子ども2人の4人家族。毎月の家計が赤字で困っていると、奥さんを連れて家計相談にやって来ました。
さっそく、家計の状況を聞いてみると、スマホやインターネット回線の費用、つまり「通信費」が重くのしかかっていました。
それもそのはず。4人全員が大手キャリアのスマホを使っており、一家の通信費は1ヶ月になんと3万6000円もかかっていたのです。
私はそんな太田さん家族に、格安スマホへの乗り換えを提案しました。
しかし、太田さん本人はあまり乗り気でないよう。
どうしてでしょうか?
男性は見栄で生きている?
1人1台は当たり前、なかには2台持ちする人もいるほど普及したスマホ。昨今は、通信料金や機種代も安い〝格安スマホ〟も登場していますが、太田さんのように大手キャリアから切り替えられない人が少なくありません。
切り替えない理由としてよく聞くのが、「今は、機種変更する時間がない」というもの。家計相談に来る時間はあるのですから、そんなはずはないのですが......。
このような回答をしがちなのが、スーツをきちんと着て真面目そうで〝保守的〟なサラリーマンです。そんな人が決まっていうのが、「格安スマホに変えるのはいいと思うのですが......」なのです。
本当の理由は別にあります。例えば、
「大手以外のキャリアを使うと、ケチだと思われ恥ずかしい」
「格安スマホはつながりにくく、データ通信や音声通話の品質も悪いのではと不安」
「機種変更する際に発生する解約金がもったいない」
「大手キャリアに相談したら、拒否されそうだ」
などなど。どれも根拠のないものばかり。
家計をリストラする手段として格安スマホを紹介すると、女性、特に専業主婦の方は、素直に受け入れてくれます。すぐさま家電量販店などに行って相談するなど、具体的に行動に移す人も少なくありません。
そして、数ヶ月間使ってみて、使用感は大手キャリアと大して変わらないことや、解約金も2~3ヶ月もあれば元が取れてしまうこと、そして今までより家計のやりくりが楽になることなどを口にし、「もっと早くやっておけばよかった」といいます。
賢い人は情報収集して切り替えている
もちろん、誰もが変えればよいというわけではありません。
仕事で使う場合や、通話をたくさんするといった人は、今までのキャリアとの契約をそのままにしておいたほうがいいでしょう。
しかし、多くの場合、「元を取った」といえるまで使い込んではいないのが現状ですから、格安スマホに変えたほうがいい人は少なくないでしょう。
太田さん一家の場合、家族4人そろって格安スマホに切り替えると、スマホにかかっている費用は1万3000円まで下がり、2万3000円浮きます(スマホの利用料金は2019年1月時点の各キャリアの料金を参考にしています)。
これだけ浮けば、家計の赤字解消にも貢献するでしょうし、コツコツ貯めて遊びに行ったり、投資に回したりすることだってできるでしょう。
しかもです。この先30年間、格安スマホを使うと仮定し、節約できる金額を計算してみますと、なんとその合計は828万円にもなります。
浮いたお金を投資信託で積み立て、年利3%で運用できたとすると、運用益は30年で約512万円となり、約1340万円もの「資産」を作ることができます。この数字を見ても、読者の皆さんは大手キャリアのスマホを使い続けるでしょうか。確かに、格安スマホは無料通話分が十分ではないなどのデメリットはありますが、今や、多くの無料通話アプリがあり、それを使えば十分通話ができます。音質だって、決して悪くありません。
男性でも、家計相談の経験上、普段規則に縛られているサラリーマンより、自営だったり自由業などに就いていたりしている人のほうが、格安スマホに乗り換えてくれる傾向が強い気がします。自分の頭で考えて「得になる」と思えば、たとえ新しいことでも柔軟に受け入れることができるからでしょう。
ここまで格安スマホの話をしてきましたが、何もそれに限った話ではありません。家計を改善するためには、生活上の知恵やお得な情報を上手に取り込むという視点を持ち、実行に移すことが重要です。
スマホの話は、あくまでその代表例。家計がざんねんな人たちは、いつまでたっても習慣にしばられて抜け出せず、新しいことを受け入れられない人たちだといえます。
【ここがざんねん】つまらぬ見栄に起因する根拠のない言い訳をしていませんか?
本当に必要なら、そう考える理由を人に話して意見を聞いてみることも時には必要です。
習慣、資金計画、投資の3テーマで、絶対NGなお金の扱い方を実例から学べます。最終章にはプロが教える「お金を増やす」13のステップも