いつかは必ず発生してしまう「相続」。家族の死という悲しみの後に、せめてその手続きだけでも円満に進めたいものです。そのためには、みんなが元気なうちから用意しておくことが重要。今回は弁護士の本田桂子先生に、残された家族が困らない相続をするための「共有すべき情報」についてお聞きしました。
前の記事「作成する人は増加傾向!知っておきたい「公正証書遺言」の作り方/相続入門(4)」はこちら。
これまでは、遺言書の大切さについて紹介しました。遺言書以外にも、家族のためにいますぐ行っておくべきことがあります。ここでは、家族に伝えたり、共有しておくべきことを見ていきます。
「ネット銀行に口座」がある場合は家族に忘れずに伝える
最近は、ネット銀行を利用する人も少なくありません。ネット銀行は預金通帳が発行されず、インターネット上での取り引きが中心なので、家族が口座の存在に気が付かないケースがあります。「預金通帳を発行していなくても、キャッシュカードを発行しているネット銀行は多いので、キャッシュカードの保管場所を家族に伝えておきます」と本田先生。
口座名義人が亡くなった際、キャッシュカードが見つかれば、家族がネット銀行のお客様センターに電話し、解約手続きの書類を郵送してもらうことができます。
「子どもの指紋」を親のスマートフォンの指紋認証に登録しておく
家族が亡くなったときに、スマートフォンに残された情報が早急に必要になることがあります。例えば、葬儀のことを伝えるために知人の連絡先を調べたり、遺影に使えそうな写真が保存されていないか探したりするからです。
スマートフォンのロック解除方法として、指紋認証がよく使われています。登録した指紋を読み取ることで、ロックを解除する機能です。複数の指紋を登録できます。本田先生は「親のスマートフォンに、子どもの指紋登録をさせてもらうと、万一のときにロック解除がすぐに行えます」と話します。
「ローンや借入金」のことも家族と情報を共有する
相続財産には「プラスの財産」と「マイナスの財産」があることは、前の記事でも触れました。「マイナスの財産」であるローンや借入金などがある場合は、いまのうちに家族と情報を共有しておくことが大事です。
なぜなら、亡くなってから相続放棄までには3カ月間しかないため、多額の債務の存在を知ったときには、放棄が間に合わなくなることがあるからです。「マイナスの話なので伝えづらいかもしれませんが、いまのうちに家族に話して、リストにまとめておけば、相続のときの家族の負担を減らせます」と本田先生。
次の記事「言い出しづらいけど...「財産を家族で話す」6つのタイミングとは/相続入門(6)」はこちら。
取材・文/松澤ゆかり イラスト/いなばゆみ